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江戸時代の風俗と人情を描いた2作『駆込み女と駆出し男』『百日紅 Miss HOKUSAI』

1_sarusuberi_main.jpg(C)2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

 今週取り上げる最新映画は、江戸時代の風俗と人情を、豊かな季節感とともに描き出す2作品。実写とアニメという表現手法の違いこそあれど、時代を超える普遍的な価値と「思い」を現代に伝えようという気概が伝わる意欲作たちだ。


 『駆込み女と駆出し男』(5月16日公開)は、井上ひさしの時代小説『東慶寺花だより』を原案に、『わが母の記』(2012年)の原田眞人監督が初めて手がけた時代劇。鎌倉の東慶寺は江戸時代、幕府公認の駆け込み寺として、離縁を求める多くの女たちを受け入れた。駆け込みの前に聞き取り調査を行う御用宿・柏屋で、主の源兵衛とともに、駆出しの医者で戯作者にも憧れる信次郎(大泉洋)は、鉄練りのじょご(戸田恵梨香)や豪商の愛人お吟(満島ひかり)の再出発を助けることになる。

 芯の強さと向上心を秘めたじょご、繊細で愛情深いお吟、2人の対照的なヒロインを戸田と満島が熱演。大泉の軽妙なセリフ回しも作品世界にぴったりはまった。脇を固める樹木希林、堤真一、武田真治、山崎努らの演技も味わい深い。ロケ地となった姫路市の書写山円教寺は、原田監督が12年前に『ラスト サムライ』(03年)のロケで出会い、「いつかここで時代劇を」と誓った場所。歴史が刻まれた境内の建築や周囲の景観が映像に風格を添え、見応えある人情絵巻に仕上がった。

 『百日紅 Miss HOKUSAI』(5月9日公開)は、漫画家で江戸風俗研究家でもあった杉浦日向子が昭和後期に発表した代表作『百日紅』を、『カラフル』(10)の原恵一監督がアニメ映画化した作品。江戸の町に暮らす葛飾北斎の三女・お栄は、父親と同じ浮世絵師として、美人画などで才能を発揮していた。そんなお栄の視点から、北斎の創作をめぐる逸話や、オンボロ長屋での風変わりな共同生活、自身の絵師としての試練と不器用な恋が語られる。

 アニメーション制作は、原監督作では初となるProduction I.Gが担当。原作漫画と浮世絵の豊穣な世界を2Dアニメで再現しつつ、街並みや建物などにはパースペクティブを強調した3D描画を織り込んだ。穏やかな川面がにわかに荒れて、有名な北斎画『神奈川沖浪裏』の逆巻く波になるなど、アニメならではのダイナミックな表現が楽しい。主な登場人物の声は、杏、松重豊、濱田岳、高良健吾ら豪華俳優陣が担当している。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『駆込み女と駆出し男』作品情報
http://eiga.com/movie/80976/

『百日紅 Miss HOKUSAI』作品情報
http://eiga.com/movie/80339/

最終更新:2015/05/08 23:00
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