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週刊誌スクープ大賞

「全棟建て替え」「高額買い取り」は甘いワナ!? 下請けに責任をなすりつける三井不動産の悪巧

 今週の第1位は、やはりこれ。業界最大手の三井不動産レジデンシャルが販売した横浜の「パークシティLaLa横浜」のウエストコースト(西棟)が、基礎工事の施工不良のため傾いてしまった騒動は、決して他人事ではない。

 文春、新潮、現代からこの問題を考えてみたい。

 このマンションを購入した動機は、三井というブランドを信頼してというのが一番多いが、ご多分に漏れず施工主は三井住友建設、欠陥杭の打設を担当したのは下請けの旭化成建材と、責任を下に押し付ける構図は今回も同じだ。

 旭化成建材の前田富弘社長は、「なんらかの不良を隠すため、悪意を持って」現場責任者がやったことだと、一人の人間のせいにしようとし、三井不動産側は「ウチの社員ではない」と建材に罪を被せようとしている。

 だが、三井不動産の体質にこそ問題ありだと、文春で同社のOBがこう語っている。

「三井不動産はとにかく下請けを叩く。超一流のブランドを看板に、コストをどんどん削って二次・三次に至るまで下請けを締め上げます。(中略)お客さんは『三井だから良い素材と良い人材で作っている』と思っているかもしれないが、そういう思いにあぐらをかいて値段を吊り上げているだけです」

 新潮は、欠陥マンションを買ったために悲劇に襲われた人たちをインタビューしているが、語るも涙、聞くも涙である。

 05年に、耐震偽装が発覚した「グランドステージ住吉」(東京都江東区)の元住民・花岡剛史氏(53・仮名)は、当時区から退去勧告が出されたが、4,000~8,000万円の物件を買ってローンを組んでいる人が多いため、新しく買うなんてできはしない。だが、区と話し合って仮住まいの費用の一部を出してもらっただけで、どうしていいか皆目見当がつかなかった。

 施工側の「ヒューザー」は、あっけなく破産。そこで更地になった跡地にマンションを建てるために銀行と掛け合ってローンの支払いを待ってもらい、新たに融資を頼み込んだという。

 当座の資金にも困って、部屋の玄関やトイレを外して中古業者に売ったそうだ。2年後に新たなマンションが建ったが、かかった費用は元のマンション価格の5割程度。「4,000万円の部屋に住んでいた人なら2,000万円。5,000万円なら2,500万円を支払うことになった」(花岡氏)。だがローンが払えず、夜逃げした人やマンションができるとすぐに売り払った人もいるという。

 民間ではなく、国が建てた物件でもとんでもない目に遭ったケースがある。UR(都市再生機構)が分譲した、八王子の「ベルコリーヌ南大沢」がそれだ。

 このマンションの売り出し価格は5,000~7,000万円だというから、かなりの値段である。だが、「新築なのに雨漏りがひどくて、押し入れの布団は台風が来るたびに水浸し。あるときなどは、壁板を外してみると滝のように水が内壁を流れているじゃありませんか」(元住人の国本裕美さん・60=仮名)

 国本さんは建て直しか購入時の価格で買い戻しを求めたが、URはともに拒否。仕方なく、10年後に半値で引き取らせたそうだ。

 このようなケースは、枚挙にいとまがない。先の旭化成建材は杭工事をした全国3,040件の内訳を公表したが、具体的な物件名は示さなかったため、騒動は収まるどころか不安はさらに広がっている。

 文春では、欠陥マンションを買わないための「10の鉄則」を紹介しているが、マンション購入を考えている人は必読であろう。

 現代は取材時間があったためか、多方面にわたって分厚い取材をしている。

 まずは、現在マンションに住んでいる人間には関心事である、旭化成建材が造った「マンション一覧」から。

 旭化成建材が過去10年間に杭工事をした全国3040の内訳は明らかにされたが、そのうちマンション(集合住宅)だけで696件あるそうだ。そこで、現代が大手デベロッパーに「緊急アンケート」をした。旭化成建材が杭打ちを担当した物件が過去、現在を含めて「ゼロ」と回答したのは森ビルと森トラストの2社だけ。

 近鉄不動産、大和ハウス工業、三菱地所レジデンスが「現在販売中」のマンションを購入した人も、不安になる必要はないという。この3社の現在販売中のマンションも、旭化成建材が杭打ちに関わった物件は「ゼロ」であるという。

 住友不動産が過去10年に販売した約300の物件のうち、旭化成建材が関わったのは3件ある。住友不動産は当該マンションについてすでに管理組合理事会に連絡済みだというから、連絡が来ていないマンションの住民はセーフだろう。

 不安なのは回答しないと答えた大京、タカラレーベン、野村不動産である。何か都合の悪いことでもあるのだろうか?

 今回の三井不動産側の対応には問題ありとするのは、企業の危機管理に詳しい経営コンサルタントである。

「今回、三井不動産は住民側に『全棟建て替え』と『高額買い取り』を提示しました。これが非常にしたたかな戦略だと専らの評判なのです。一つ目のキモは、『全棟』。傾きが確認された西棟だけではなく、傾きが見られない森棟、中央棟、南棟を含めた全4棟すべてを建て替えるプランが提示されたことで、『4棟の全住民の5分の4』と『各棟の住民の3分の2』の合意が必要になりました。この全棟プランを『三井の誠意ある対応』と報じるメディアもありましたが、本当は合意のハードルが上げられただけなのです」

 この合意形成には数年を要するというのが、専門家たちの読みだという。合意形成に時間がかかるほどに、途中で嫌気がさしてマンションを離れる決断をする住民が出てくることは必至だ。

「そういう出ていきたい人たちには、『買い取り』に応じるのが2つ目のキモ。この仕組みだと、最終的にマンションに残るのは『建て替えしたい人』と、『建て替えはしたくないけど住み続けたい人』になるからです。この2グループは歩み寄りができないので、住民は分断される。結局、建て替えは合意できないから、西棟の修繕だけはやってくれと住民たちが音を上げる。そんなシナリオに落ち着く公算が高くなるのです。では、その修繕費は誰が出すのかというと、旭化成建材が支払うと明言している。となれば、三井不動産の出費は、出ていった住民への補償だけで済まされる。仮に100世帯が出て行けば、買い取り費用は30億円ほど。数百億円はかかるとされる建て替え費用に比べれば、ずいぶん少額です」(同)

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