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歴史あり!? エロに情熱を燃やす愛すべきオトコたち『わが青春のマジックミラー号 AV界に革命を起こした男』

一冊の本、一枚のCDによって人生が大きく変わってしまうということがある。 僕の場合、浪人中に手にしたひとつのアダルトDVD(AV)がそれにあたる。

 何の気なしにふらりと立ち寄ったブックオフで僕が手にしたアダルトDVD(AV)は、当時、『やりにげコージー』(テレビ東京系)や『ああ探偵事務所』(テレビ朝日系)に出演するなど、もはやAV界“最強”の風格すら漂っていた、女優の夏目ナナがパッケージを飾っていて、夏目ナナの口からは、「10枚も入ってるなんてお得やで~」みたいな吹き出しが飛び出ていた。

 夏目ナナが「お得やで~」と言うからには、きっとお得なんだろうと、大学に落ちるのもうなずけるような超短絡思考回路でもって購入したDVDに、僕は打ちのめされた。

「女柔道家とレイプ魔による柔道対決」、「美人女優が豪勢なディナーを堪能している間に、ブスがカップラーメンを食わされる」、「全裸女性数人による引っ越し作業」など、“何のためにそんなことを……”的なパンチのありすぎる映像群がDVD10枚分にわたって展開されていた。

 どう考えても受験勉強に差し障りしかないシロモノだと判断した僕は、合格するまでそのDVDを隣のマンションのガレージの隅に封印しておくことに決めた。僕が大学生になるまで、ガレージの隅で眠っていたDVD。 そのDVDこそが、ソフト・オン・デマンドの10周年記念メモリアルBOXだった。

『わが青春のマジックミラー号 AV界に革命を起こした男』(イースト・プレス)は、言わずと知れた名シリーズ「マジックミラー号」の初代監督マメゾウこと、久保直樹氏が、AV界で頭角を現し活躍していくさまを記した自伝的エッセイ。 映画監督を目指していた久保氏が、ひょんなことからAV製作に関わるようになり、その時何を思い、次々に直面する問題をどのように解決していったのかが克明に記されている。

 今でこそAVメーカーの大手として知られるソフト・オン・デマンドだが、発足当時から順風満帆というわけではなかったようだ。

 高橋がなり氏が率いていた同社は、設立以前から「ビデオ安売王」での販売用として製作していた「全裸バレーボール」、「全裸バスケットボール」が1万本を超えるヒットを記録したことを受け、製作し続けた「全裸スポーツシリーズ」が累計10万本を超える空前の大ヒット。

 しかし、“もっと世間にインパクトを”と9,000万円もの制作費をつぎ込んだ『地上20メートル 空中ファック』がまさかの大赤字。クレーンを利用した大掛かりなセットを組み、上空20メートルに設置された透明なアクリル板の上でセックスをするという、“潔さ”しか感じられないこのおバカ企画は、ほとんど売り上げにつながらず、前作の儲けのほとんどを失ってしまう。その損失は、会社の存続が危ぶまれるほどだった。

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