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歴史あり!? エロに情熱を燃やす愛すべきオトコたち『わが青春のマジックミラー号 AV界に革命を起こした男』

『全裸スポーツシリーズ』という“二次会で飛び出た面白フレーズ”みたいな作品が10万本の売り上げを上げていること自体どうかしているのに、その儲けを『地上20メートル空中ファック』が吸い取ってしまうという事実。読んでいるだけで、“何が正しくて、何が間違っているか”という感覚が完全に麻痺してしまう。

 そんな危機的状況から抜け出すため、同社はできるだけ制作費をかけずにインパクトを与える企画が目下の課題になっていく。

 そこで発案されたのが、“合法露出マシーン”こと「マジックミラー号」だったという。トラックの後ろのマジックミラーBOXの中で、ナンパされた女の子が裸になるというこの企画は、スタジオ代、女優のギャラ代も安上がりで済み、それでいて、まるで外で裸になっているような非日常感を演出することもできる、まさに一石二鳥の企画だった。

 ご存じの通り、このマジックミラー号シリーズは大ヒット。累計315万本を売り上げ、同社を年商100億を稼ぐ大企業へと発展させる礎となった。

 それほどのヒットを生み出すだけあって、マジックミラー号には、女の子の抵抗感をなくすためのプロのこだわりが隠されている。スタッフに女性を混ぜる、繁華街の路上に停車しておくことで女の子の移動距離を短くする、内装を爽やかな青空にすることで、ラブホテルのようないかがわしさを払拭するなど、きめ細やかな心配りが随所に施されている。長年の疑問であったあの青空模様には、そんな意味が隠されていたとは。

 ちなみに僕も、一度だけマジックミラー号に乗ったことがある。と言っても、“素人お姉さんに筆下ろしを手伝ってもらう童貞”として乗ったわけではなく、浅草で開催されたファン感謝イベントでマジックミラー号に試乗しただけなのだが、内装は思ったよりもきれいで、作りもしっかりしていた。

 しかし、まさにここで、DVDで見た“マッサージからの、いつのまにか挿入”や“オナニーのお手伝いからの、いつのまにか挿入”が繰り広げられていたのかと想像すると、なんとも言えない無言のエロスに興奮したのも事実だ。

 そんな社の発展に大きく貢献した久保氏だが、ある日、ソフト・オン・デマンドを追放されてしまう。その後入社したAVメーカーも社長が逮捕され、一年で解散。“制作ができる人間は生きていける”が持論の久保氏は、制作する場所すら失ってしまった。ものづくりに生きた男が、その機会を奪われた時の絶望は想像に難くない。

 職を失い食えなくなっていた久保氏が、周囲の力を借り、高橋がなり氏と和解して、自身の映像制作会社「マメゾウピクチャーズ」を設立するまでに至る再起の物語は、まるで一冊の小説を読んだのような清々しい読後感すら残す。

 AV業界という特殊な環境に青春を費やした男の物語がここには記されている。僕たちが普段、何気なく見ているAVにも、製作者のこだわりや苦労が隠されている。そんな裏側を知ってから見るAVはまた違った趣があり、格別だ。マジックミラー号をより一層楽しむためのスパイスとして、ご一読をお勧めしたい。
(文=大谷皿屋敷[劇団「地蔵中毒」])

最終更新:2017/02/23 09:31
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