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ランキングからアニメを除外の「映画芸術」に聞いた「荒井晴彦さん、あなたはアニメが嫌いなのですか?」

「映画芸術」(編集プロダクション映芸)

「なんとも思ってはいない、ただ……」

 夕方、会議を終えて少し疲れた様子の荒井晴彦は、少し考えてから口を開いた。

 今、アニメ関係者の中でひとつの雑誌が話題になっている。荒井が編集発行人を務める「映画芸術」(編集プロダクション映芸)が、それだ。映画批評誌の中では老舗に位置づけられる雑誌。その最新号に掲載された「日本映画ベストテン&ワーストテン」。年1回発表される同誌のランキングで、2017年の作品からアニメ映画を除外したことが話題になっているのだ。

 その除外に至る論理、議論。アニメを外すなら選考を辞退することを決めた映画評論家の主張などは、これが掲載された最新462号に掲載されているので、興味のある人は各自で目を通してもらいたい。

 ともあれ、最新462号の発売と共に、主にアニメ関係者から、さまざまな形で批判が噴き上がった。「アニメが嫌いなのではないか」「CGが当たり前になっているのに、実写とアニメに違いはあるのか」。

 個々の意見はさまざまだが、主要なものは荒井が「アニメが嫌い」で「考え方が古い」というもの。そうした意見の背景には、アニメ映画は大勢の観客を動員し、世界的にも評価されている。それに対して、実写はどうなのか。ネットではさまざまな言葉を費やして、単なる対立軸ではない問題だとを書き連ねるものも目にした。

 それでも、アニメ関係者……評論家やライターを肩書にする人々や愛好者が、実写に対するコンプレックスのようなものを燃やしているのではないかという予断を拭うことはできなかった。そう考えたとき、アニメを除外することを決断した「映画芸術」編集部の、誌面には記されていないバックグラウンドの部分を訊ねてみたくなった。

 取材依頼を送った翌日の昼。電話で告げられたのは「今日の夕方どうですか。編集会議の後の時間なのですが……」。すぐに、私は「行きます」と答えた。移動の最中に、もう一度読み直しておこうと思いカバンを開くと「映画芸術」ではなく「映画批評」の1972年7月号が入っていた。この号に収録されている「共産主義者同盟赤軍派より日帝打倒を志すすべての人々へ」は、何度読んでも面白いが、今は要らない。新宿で電車を降りて、もう1冊買った。

 

■すずさんには「戦争責任」はあるのか

 

 荒井は、編集アンカーの稲川方人と2人でやってきた。単刀直入に質問した。

「荒井さん……2016年のランキングで『この世界の片隅に』が1位になったのが悔しいんですか? それとも……アニメが嫌いなんですか?」

 冒頭の通り、少し考えてから荒井は話し始めた。

「『君の名は。』を映画館で観た時に思った。この映画館にいっぱいいる観客の人たちは、普通の映画を観ないのだろうか。よい映画というのは、映画の100年以上の歴史の中で、いっぱいある。けれど、ここにいるのは、そういうものがあることを知らない人たちなのではないかと。それで『いい映画だ』『いいアニメだ』と、言っているのか……そんなことを思ったのです」

 では『この世界の片隅に』は? 私が訊ねると、しばらくして、ようやく荒井の口が開いた。

「ん……どうしてこれが評価されるのか、よくわからなかった。時代考証をよくやっているという人は、私の周りにも多かった。でも、私は『(絵で)描けばいいんじゃないか』としか思わなかった。これまで、ぼくも実写で戦争中の日常を撮ったことはあるけれども、そういった評価はなかった。具体的に揃えるのは大変なのに……」

 私は、これまで50回くらい『この世界の片隅に』を観ている。そんな私にとっての「名作」に与えられる批判にも、苛立ちはなく新鮮に聞こえた。荒井は言葉を続けた。

「あの映画は評価されている。けれども、この映画は、日本の映画の中にずっとある戦争イコール被害の流れの中にある映画と同じ……被害だけを語っている……」

 被害だけを語っているという見方が気になった。

「被害だけを描くことが、本当にそれでいいのかという問題提起は無視されている。ぼくは『イノセントな女のコに戦争責任はないのか』と言っている。でも、そこにはみんな、なんにも……」

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