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ランキングからアニメを除外の「映画芸術」に聞いた「荒井晴彦さん、あなたはアニメが嫌いなのですか?」

 また、少し考えてから荒井は口を開いた。

「『君の名は。』を観た時も、また疑問を感じた。これは、歴史修正主義……あったことをなかったことにしてしまうのは、映画のルールとしてやってはいけないこと。劇中では、隕石落下がなかったことになる。それは、東日本大震災だったり、戦争だったり、そういうのもなかったことにしてしまう思想。それは、あれだけの大勢の人がいい映画だと思って見ていることは、なんなのだろうと思う……」

 それから、また話題は『この世界の片隅に』に戻った。

「作品の中に登場する朝鮮人みたいな人とか、遊郭の描写。それを、どうして、あれで抑えてしまうのか。ぼくには、ヤバいところにいかない線で描いているように見えた。それでもなお、良心的な描写だといわれる。だから、こう考えた……南京陥落の時に、日本中で提灯行列をやっていたはず。あのヒロインは、ひょっとしてそこに行っていないのか……」

 思いも寄らなかった映画の見方に戸惑っているうちに、荒井の言葉は続いた。

「そう考えた時、この映画はなんなのだろう。地上戦があったのが沖縄だけだった結果、天変地異と同じようなものだというのが、日本人の戦争観。結局は、反省は何もせず、それが現在につながっているのではないか……」

 

■荒井さんの考えは古い? 古くていいのだ!

 

 しばし、どう言葉を返そうか迷って、別の質問を投げかけてみた。

「荒井さんの考えは古いといわれている……」

 ふっ、と荒井は笑顔を浮かべた。まるで、そんなことは意に介さないかのように。荒井に変わって、稲川が口を開いた。

「『古い』で、いいと思っている。私たちの考える古い・新しいは違う。新しいアイテムや情報を提供しているかどうかに、価値観は持っていない。今回の件で、アニメの人たちは『映画芸術』の考え方は古いと言う。でも、それは資本側から観た価値観。そういうのに『映画芸術』は依存しない」

 問題提起の根っこの部分が、少し見えた気がした。アニメが興行成績の上位に浮上した。大勢の人が「これは、よい映画だ」と絶賛をしている。でも「よい映画だといっている貴方たちは今まで、どれだけの映画を観て、考えた上で、そう主張しているのか」。それが、問題的の根本にあるように見えた。荒井が口を開いた。

「『君の名は。』に熱狂している人たちは、モノクロスタンダードの映画とか、いわゆる映画史に関してノータッチ。本当ににいい映画を知らないのではないのか……もっと、いい映画が日本にも世界にもいっぱいあるのに。『この世界の片隅に』に感じるのは、いわゆる『反戦映画』として捉えるならば、もっと実写にもいっぱいある。ぼくは『火垂るの墓』のほうがいいんじゃないのと思うけどね……」

 なぜ『この世界の片隅に』が評価されているのか。それについて意見したいことは、さまざまあったが、それは抑えて訊ねた。

「では、アニメを除外したのは、新たにテーゼを立てたということ……」

 先に荒井が口を開いた。

「そうです。以前には、実写も頑張らないとアニメに負けるよと考えて、アニメを評価したこともある。でも、こう何も考えずに『アニメだ、アニメだ』とやるのは違うのではないかと思っている」

 稲川も続いた。

「今回は、基本的な映画の力はどこにあるのか、改めて考えようと提起した。アニメを評価するかどうかは枝葉の部分にすぎない……」

「映画芸術」の歴史の中で、年に1回のランキングが、論争の始まりになったことは、これが初めてではない。「なぜ、この作品が1位なのか」を巡って、幾度も論争が行われてきた。今年のベストワンには『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』が選ばれているが、選考者の投票の結果としての1位と、編集部の見解は違う。だから「もしも……」と、稲川はいう。

「今年、これはという作品があれば、アニメが1位になるかもしれない……」


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