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日刊サイゾー トップ > 社会  > 地方の「名物」が食べられなくなる?

いつまでも食べられると思うな! 地方の「知る人ぞ知る名物」が、どんどん食べられなくなっている……

「里山里海グルメ発見伝」ホームページより

 最近、地方の名物が消えまくっててヤバい。

 JR松山駅の名物駅弁だった「醤油めし」がなくなることになり、惜しむ声が広がっている。製造していた鈴木弁当店が、売上の低迷から店を閉じたためだ。

 松山駅の「醤油めし」は、醤油味の炊き込みご飯をメインに据えた、素朴な逸品。鉄道旅を愛好する人の間では、一度は食べてみたいといわれる駅弁であった。

 新聞などの報道によれば、同店は大手コンビニチェーンとの取引解消後、同業者やコンビニとの競争が激しく、売り上げを低下させていたという。鉄道利用者が買い求める駅弁だけでは、事業が成り立たなくなっていたということだ。

 近年、市場構造の変化による事業の低迷や事業者の高齢化など、さまざまな理由で地方の「名物」が、どんどんと姿を消している。

 昨年9月には、広島県呉市にあるアイスもなかの「巴屋」が市内に3店舗あった店舗を閉鎖。直営店は消滅し、市内2店舗の委託先を除きスーパーなどでの販売だけになった。

「巴屋のアイスもなか」は、呉の人々にとっては夏ならずとも食べたくなる、定番のおやつ。店頭で注文すると、その場でもなかの中にアイスを詰めるスタイルのため「シャリシャリの出来たてが美味しい」と評判。とりわけ、呉駅構内の店舗は、常に繁盛していたが、実際には店舗の営業は年々厳しくなっていたという。

 完全消滅ではないものの、店舗の消滅にその味を知る人のショックは、癒えることはない。

「これまでも、一部のスーパーやネット通販で買うことができました。でも……でも、店でおばちゃんに詰めてもらうのとは、全然味が違うんですよ」(呉市出身者の声)

 流行っているというのに、先行きが不安な店もある。昨年末、和歌山県を訪れた時に地元の人から聞いたのは「てつめん餅」の存続への不安だ。

「てつめん餅」というのは和歌山県の太地町にある亀八屋がつくっている。白とよもぎの二種類の皮で餡を包んだ餅である。この餅は、その味を愛する人たちには「幻の餅」として名高い。というのも、その独特の食感が維持されるのは、作ったその日限り。翌日になると、まったく美味しくなくなってしまう。

 その日持ちの短さ。かつ、売っているのが大阪からは3時間以上、東京からだと、空路を駆使してどんなに急いでも5時間近くかかってしまう、ご当地だけという幻のもの。だが、地元の人によると店主の高齢化で、いつまで店があるのか心配する人もいるという(と、いう話を聞いたのは新宮でだったので、店に寄ってみようと思ったがスケジュールの都合で断念。それくらい遠い……)。

 2017年暮れには、昭和の駄菓子として知られた「梅ジャム」を製造する梅の花本舗が廃業。少しさかのぼれば高知県香南市にあったエチオピア饅頭も、製造していた近森大正堂が閉店しており、もう食べられない。

 現在、社会構造の変化や高齢化によって、多くの地場企業が事業を継承できずに、休廃業に追い込まれているという。今後も消えていく味は、多い。それらを、せめて「どうやったら、つくることができるのか」記録だけでも、残してほしいものだ。
(文=昼間たかし)

最終更新:2018/04/09 20:00
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