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昼間たかしの100人にしかわからない本千冊 35冊目

沢木耕太郎、村上龍……今読むべきは1977年の「PLAYBOY日本版」だった

左:沢木耕太郎『深夜特急〈1〉香港・マカオ』(新潮社)
右: 村上龍『ニューヨーク・シティ・マラソン』(集英社)

 文章というものは、ただいたずらに書き連ねていたら、それはよいものではない。時には、さまざまな人の書いたものを読んで、我流に埋没している自分を振り返ることも肝要ではないかと思う、今日この頃。

 じゃあ、そんな時になにを読むといいだろう。

 最良の手段は、いま注目されている書き手のものである。

 注目されている書き手? 誰だろう。

 人に聞けば、みんなそれぞれに名前を挙げる。でも、最近聞くことが多いのは、キラキラした場所でエッセイだとかを書いている人の名前。わかりやすく解説してくれているとか、どこか共感できるとか。ああ、意地の悪い人は、自分のTwitterアカウントで批判している書き手の名前を挙げることも。……「批判を共有したい」という気持ちは、はい、ありありと。

 どうも、私にはそうしたものは眩しすぎる。マニュアル本のようなわかりやすさ。明日には忘れてしまいそうな刹那の共感。パソコンのモニターや、スマホの画面に映し出される文字の列は、ただ通り過ぎていくだけに見える。

 そんな風潮に抗おうとしてはいるのだけれども、まだ成果を実感することはできていない……。

 そんないま、私が自身を振り返るために読みたくなるのは、より硬質なもの。この連載に登場する「PLAYBOY日本版」の執筆陣をはじめ、どこか洗練された雰囲気をまとった硬質な文章。

 すでにそれらは埃をかぶった過去のものに過ぎないかも知れない。たいていの人は、こう思う。

「今、そうした文章のスタイルを実践したところで、当時と同じような評価を得るとは思えない」

 その通り。確かに時代は変わっている。

 今回、件の「PLAYBOY日本版」1977年2月号を読んでいて、そう思った。

 ぐっと分厚くなり、ヌードページも増えた、この号は今では一種の文化史の史料。

 これだけは、今でも「読んだ」と話す人の多い『深夜特急』へとつながる沢木耕太郎の短編「香港流離彷徨記 飛光よ!飛光よ!」が、掲載されているのは、この号。実際の旅は、これよりも2年前。文藝春秋から出た『若き実力者たち』の印税40万円を使って出かけた旅の記録が、現代にも通じる旅人のバイブルになるとは、誰も予測はできなかった。

 そんなルポルタージュか掲載されているのは、全266ページの誌面の中の後半にあたる142ページから。ページを開いた読者は、いかにして、ここに至るのか。前後の号と比較しても、内容は盛りだくさん。王貞治のインタビューはあるし、村上龍が芥川賞をもらってから、初めての作品になる『ニューヨーク・シティ・マラソン』も収録されている。その合間に、ちゃんとプレイメイトのピンナップもあるし「制服の天使たち……USA405号室のクランケ機能正常です」と、なんだか扇情的なタイトルのグラビア。

 たたみかけるように「あなたはふたりの相手と同時にSEXできますか?」と、これまた興味をそそる翻訳記事が。それだけかと思ったら、一転「ソ連海軍」だとか「アメリカ組織犯罪事件ファイル」と、また硬派な記事も混じっている。

 雑誌ならではの盛りだくさん。雑誌は、さまざまなテーマが掲載されていなくては、雑誌ではない。雑誌文化が衰退し、ネットへと移行する流れは止められない。雑誌の新たな形として生まれた情報系サイトも、わずかに残った紙媒体も、どこか変化の中で何が正解かを見いだせてはいない。

 ネットでも紙でも、雑誌にあたるものに必要なのは、知らない世界を知らせること。上すべりな共感とも違う、魂に響くような衝撃。好きであろうと、嫌であろうと何度も何度も読み返してしまう魅力。

 ふと、自分の文章に満足できなくなった時に、他人から薦められる文章に、そうした要素が含まれていることは少ない。

 きっとズレているのは自分だろう。

 でも、たとえ時代にも世間にも背を向けても、自分の納得するものを探したいのだ。

 今は、そう思っている。
(文=昼間たかし)

最終更新:2019/11/07 18:38

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