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変人・軽部のいない職場は紅ショウガのない牛丼!! TBS側の痛恨の演出ミス『下町ロケット』第4話

■男泣き! 立川談春の名台詞

 出番の少なかった軽部に替わって、第4話でクローズアップされたのは「佃製作所」経理部長・殿村(立川談春)の去就です。殿村は新潟県燕市で米づくりをしている父・正弘(山本學)が倒れたため、週末は実家の手伝いをするようになっていました。父からは「米づくりはサラリーマンが片手間でやれるようなもんじゃない」と釘を刺されていましたが、殿村は素人なりにも土地をトラクターで耕し、田植えまでしたことで先祖代々にわたって続けられてきた米づくりに愛情が湧くようになっていました。農家を継ぐ気になっている息子を、老いた父は「農家よりもサラリーマンのほうが安定している」と諭します。もう米づくりは自分の代で終わりだと。東京で会社員生活を続けてきた殿村は、ここでぽろりと本音を呟くのでした。「サラリーマンは収入は安定しているけど、心の安定はないよ」と。

 殿村は元々は銀行員でしたが、口ベタなために出世コースから外れ、名もない「佃製作所」に出向させられた落ちこぼれサラリーマンです。ままならない人生をずっと歩んできました。でも、そんな殿村は“理系バカ”佃社長の情熱に触れ、佃社長の夢を実現させることで自分の居場所も見つけることに成功したのです。これまで「佃製作所」の窮地をその実直な人柄で何度も救ってきた殿村ですが、佃社長や苦楽を共にしてきた同僚たちとの別れの時間が近づいてきました。佃社長のおかげで自分の居場所を得た殿村ですが、今度は自分の力でしか守ることができない大切な居場所を見つけたのです。夕日が沈む水田に向かって手を合わせて何度も頭を下げる父・正弘の姿を見て、殿村は先祖代々続いた米づくりを自分が受け継ぐことを決心します。少年合唱団「LIBERA」の天使の歌声が、殿村父子のバックに流れるのでした。

 殿村がサラリーマンから農業に転職することを、妻の咲子(工藤夕貴)も賛成します。実際に静岡県富士宮市で無農薬野菜を育てている工藤夕貴ですから、これは当然の答えでしょう。スーツに着替えた殿村は「佃製作所」に出社し、毅然とした表情で社長室の扉を開けます。「この会社で過ごしたことで、私でもモノづくりの楽しさを知ることができました。オヤジの米づくりの情熱の欠片を理解することができたんです。何が大切かを教えてくれたのは社長です。ありがとうございます」と退職する意向を伝える殿村でした。目の前のことにすぐ夢中になってしまう佃社長にとって、冷静沈着な殿村は欠かせない存在です。でも、そんな大切な部下が新しい人生の決断をしたのですから、もう止めるわけにはいきません。男泣きしながら、殿村の門出を応援する佃社長でした。プロ野球の巨人軍も、佃社長のように気持ちよくエース・菅野智之をメジャーリーグに送り出してほしいものです。

 

■ブラック企業ではないとは言い切れない「佃製作所」の今後

 第4話を見ていて感じたのは、吹けば飛ぶような「佃製作所」の経営がなんとか成り立っているのは、立花やアキといった若い技術者たちが寝る暇を惜しんで開発に取り組み、経理部の殿村は週末も資料を持ち帰って予算繰りに思案を巡らすという、多くの社員たちの献身的奉仕があるからだということです。佃社長のロケット開発、そして農業用トラクターの改良という夢を実現させるために、社員たちは多大なる情熱を搾取されているわけです。経営者と社員との間に齟齬が生じれば、「佃製作所」も年末恒例の「ブラック企業大賞」にノミネートされかねません。

 これからの『下町ロケット』で重要な役割を担うのは、はやり変人・軽部ではないでしょうか。経理部長の殿村がいなくなった後の「佃製作所」において、佃社長に対して技術面以外でストレートに意見できるのは軽部だけです。サービス残業を瞬時で断れる男・軽部なりの喜びや生き甲斐を描くことで、新シリーズは職場の多様性や働くことの新しい意味を伝えることができるはずだと思います。

 第4話の視聴率は13.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。第3話では今期最高となる14.7%まで上昇したものの、さらなる更新はならず平凡な数字に落ち着きました。超地味な題材と地味めのキャストで13%台をキープしているのはすごいことですが、TBS品質・日曜劇場ブランドに胡座をかくことなく、さらに果敢にチャレンジしてほしいものです。今回はサスペンスタッチにすることで、物語の流れを止めてしまう軽部の出番を少なくしたことが惜しまれます。軽部の変人ぶり、独自の言語センスを毎週欠かさず盛り込めば、まだまだ話題は広まるに違いありません。軽部は昼食に何を食べているのか、定時に退社して何をしているのかも、ぜひ描いてほしいと思います。ゴースト編の完結となる第5話では、軽部は一体どんなサプライズを見せてくれるのでしょうか。
(文=長野辰次)

最終更新:2018/11/05 20:00
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