吉本芸人の「シモ」トラブルも徹底的に調査し解決させた元よしもとの謝罪マン・竹中功が見た、純烈・謝罪会見
「謝罪」をせねばならなくなったということは、すなわち「事件・事故」が起こってしまったという現実の前に立っていることにほかならない。
「事件・事故」は、悪意があろうがなかろうが、不意の出来事であろうがなかろうが、相手の心の針がマイナスに振れることである。そして、それによって自分の心の針もマイナスに振れることである。
その原因に気づき、反省し、再発防止を宣言することのすべてがセットになって「謝罪」といえる。
前回、ここでは「謝罪を成功に導くステップ」として6つを挙げた。これらの実行の順番を間違ってはいけないこと。またのんびりやっているヒマがないことも忘れてはならない。
1:命や人体に関わることがないかを確認
2:経緯・事態を時系列で整理して完全に把握する
3:「謝罪シナリオ」を書く
4:原因を究明し、再発防止策をまとめる
5:直接の被害者に、直接謝罪に行く
6:必要であれば、対外的に発表する
今回はその中で2つ目に挙げた「経緯・事態を時系列で整理して完全に把握する」ことを詳しく話そう。
「情報」と「データ」の違い
ここで重要なのは刑事か、私立探偵か、弁護士か、はたまた週刊誌や新聞社の記者なのかと言わしめるほど、「現状の把握」のための調査の時間を惜しまないことだ。
まずほしいものは、属人的な「情報」などではなく、起こってしまった「事件・事故」の現状という非属人的な「データ」である。徹底的に正しい「データ」がほしいのだ。
この「情報」と「データ」の違いを今一度話しておこう。
「情報」とは、先に書いたように「属人的」なものなのだ。たとえば、私がクルマを運転している最中によそ見をして、ほかのクルマと接触事故を起こしたとしよう。「家族のことで考えごとをしていたから」とか「明日締切の原稿が仕上がっていない」といったことは「属人的な理由」と呼べる。これらは、人によって違うが当然だ。だが、「明日のデートのことでワクワクしていて信号を見落とした」と言おうが、「悩みごとがあって……」と言おうが、事故は事故なのである。
現実に問われるのは、その時の精神状態ではなく、「信号無視」という事実である。「情報」をその事故と関係づけることは不要である。
「属人」とは、その字のごとく、業務や状況が特定の人物に依存してしまうことで、ビジネス上ではメリットもデメリットもあるといわれている。しかし、「事件・事故」などの有事の際、処理する担当者にすれば、気分や精神的な側面を知ること以前に、時間軸に則った「真実」がほしいのだ。
「現状の把握」から見ると、その因果関係が必要なのではなく、「何時何分、どこの交差点で、どちら向けに時速何キロで走っていて、一旦停止を怠った。それによって接触事故を起こしてしまった」というのが、その事実のすべてである。もちろんそこに「酒気帯びも確認されず、不注意であった」というものを加えるとしても、重要なのは「非属人的」な「データ」である。
問題は「一旦停止義務を怠った」であって、悩みごと、仕上がっていない原稿、デートの予定などが気になったかどうかは何の意味もない。
取り返しのつかない、そして悪意ある犯罪を犯したのなら、動機や原因も重要になるが、ここは謝罪や再発防止のために「現状」をできる限り正確に把握することが必要だ。
この際の聞き取りついて先ほど「刑事か探偵か記者か」と書いたが、対象者が社内であっても家族であっても、容赦なく、事実に関するデータの収集に全力を尽くさなければならない。
謝罪と再発防止のためには「真実」が必要
ここで予告しておこう。事実を聞き取る際に、当事者にはどうしても失敗を認めたくないとか、恥ずかしいといった心理が働き、「真実」が見えなくなることがある。何度も言うが、謝罪と再発防止のためには「真実」が必要なのだ。そのつもりで突っ込んでいかないと、言い訳やウソに惑わされて「真実」から遠のき、「何に気づいて反省し、誰に何を謝るのか」という「謝罪」の基本が組み立てられない。そして、二度と同じあやまちを犯さないための「再発防止策」が見つけられないという最悪の状態になる。
私は、かつて勤めていた吉本興業で、大小さまざまな事件に出会い、広報担当者として後始末を担当した。相手への謝罪だけで済んだこともあれば、大々的な「謝罪会見」を行ったこともある。内々で終息させた経験もある。
その中のひとつに、男性芸人が起こした「シモ」のトラブルがあった。
担当マネージャーから当初受け取った報告は、本人はそれほど悪くないという印象を与えるものだった。だが、私はそれを聞いていくつかの疑問が湧いた。そのマネージャーが芸人より年下で経験の浅い女性だったため、彼は本当のことを話していないのではないかと感じたのである。
私は弁護士ではないが、彼を守るため「真実」の収集に集中した。そのトラブルはどこのホテルで、何時から何時まで、行為はどのようにしてどこまで進んだのか、費用はいくらでどちらが払ったのか、現金だったのかカードで支払ったのか、といったことが重要だったのである。
そこで、改めて彼を呼んで聞き取りを行った。すると、残念ながら彼はやはりマネージャーに真実を語っていなかったことがわかった。
聞き取りを行った結果、刑事事件性はなかった。しかし、新聞や週刊誌がこの件をどう扱うかを想定し、それに対処することが私の重要ミッションであった。
こういう時に面倒なのは、ウソはつかないまでも、恥ずかしがって本当のことを話さないことである。ここで「真実」に出会えなければ、メディアにも「真実」を伝えることができない。そういう意味でも、私は芸人を守り抜くために「真実」を知る必要があった。そして、そこでの正確な聞き取りに基づいて、報道に対抗し、一緒にホテルに行った女性との関係修復にも奔走した。
精神面の「情報」は不要である。
別の例として、紅白歌合戦出演から一瞬にして転落した「純烈」の会見を思い出してほしい。
元メンバーの友井は「週刊誌に書かれている女性とのトラブルは事実です。もう二度とあやまちを犯さないように償いながら、生きていきたいと思っています」と報道を100%認め、記者会見で反省を述べ、禊としてグループを脱退、芸能界を引退した。彼はその日まで誰にもバレることなくDVや借金を繰り返し、芸能活動を続けていたのだが文春砲で撃沈したのだ。
記事にあった事実のように丸裸にされた彼には言い訳はできない。またそういう卑劣な行為の理由など聞きたくはない。ただ視点を変えると、バレなければあのまま隠し通していただろうし、同様のこともまた繰り返していたかもしれない。犯罪者によくあるパターンだ。
今回は法的に裁かれたものではなかったが、「人間」として失格だと烙印を押された。リーダーの酒井は友井のことを「僕の中であいつはもう死にました。なので会うことはないと思います」と断罪し、グループとしては彼を除いての再スタートを会見で宣した。
一部ファンの甘やかした言葉も聞こえてきたが、結果的に彼を許す者は誰もいなかった。彼の行動の理由や言い訳などの「情報」は不要である。
現実は「暴力、借金」という「真実(=データ)」でしかないのだ。一人のサイテー野郎は消えたが、残ったメンバーは生きていかねばならない。「純烈」は「残ったメンバーでやる!」という「新生ビジネス」を宣言したのである。これはピンチをチャンスに変えた良い例である。スピーディに対処した姿は凛々しく、次の紅白も夢ではないという希望を持てた。
ここは最速で判断して、きっちりと本人が会見も行い、熱い情報を周知させて行くことが重要である。
絶対に間違ってはならない「名数(めいすう)」
ここで、聞き取りの中で最重要ともいえる「名数(めいすう)」について説明しておこう。これは謝罪にだけ必要なものではなく、一般的な報告時にも重要なことだといえる。
「名数」とは、名前や地名、固有名詞、そして人数や年月日、量など、「名」や「数」で表されるもののことを言う。私は「竹中功」であって「竹内功」ではないのである。3月1日に起こった事件があれば、それは3月3日ではないのである。
「名数」が間違っていると、まったく違う人物や誤った日時になってしまう。そうなったら目も当てられない。おおよそとか大体ではなく、それらは正確に表現できるものだからだ。
実際に報告の場でその間違いが明らかになった場合、対処の方法をすべて見直したり、発言をすべて撤回したりしなければならないこともあり得る。「名数」とは、それほど間違ってはならない「データ」なのである。
もし「名数」を間違ったのが記者会見や株主総会などの場であったなら、その人は人格すら全面的に否定されかねない。合っていて当たり前のこともまともに伝えられない人として評価されてしまうのだ。小さな報告書であっても同様だということはご理解いただけるだろう。
「謝罪」をせねばならなくなった時、「事実」を曲げたりウソが含まれたりすると、一からやり直しになる。「真実」を手に入れる努力を惜しんではならない。これは「謝罪」に限らず、上司への報告時にも使える「処世術」であるともいえる。
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