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“生涯ドルヲタ”ライターの「アイドル深夜徘徊」vol.24

【今夜最終回!】NHKドラマ『トクサツガガガ』が描き出すオタクの悦楽

NHK『トクサツガガガ』公式サイトより

 今から30年ほど前、「アイドル冬の時代」と呼ばれる時期があった。「メジャーなアイドルが出てこなかった時期」という意味で使われるが、実はこの時代こそ、「アイドルファン」にとって冬の時代だったのだ。

 今でこそメジャーな趣味になったアイドルだが、当時、アイドルファンは「かっこ悪いもの」「モテないやつの趣味」という目で見られることが多く、私自身、学校や職場でカミングアウトすることをはばかったものだ。

 遠因は、アニメや漫画に端を発する熱狂的なマニア、いわゆる“オタク”というものを、どこか危険視するような風潮にあった。ちょっと変わった嗜好を持つ人が、差別的に扱われることは古くからあることだ。周囲に合わせたコミュニティを作り、身を守っていくための本能でもある。

 それに比べれば、今は好きな趣味を突き詰めていける時代になった。オタクもだいぶ市民権を得ているようだし、ネットの普及によって、同好の士と繋がることが簡単にできるようになった。しかし、それで全ての問題が解決したわけではない。いくら「多様性の時代」と言われようとも、根底にある「異質なものを排除しようという気持ち」が、完全になくなることはないだろう。現実の世界には、今もまだ、家族や職場の偏見を恐れ、そのことをひた隠しにしている人も大勢いるのだ。

 そんな、“隠れオタク”を題材にしたドラマ『トクサツガガガ』(NHK総合)が話題となっている。

 主人公は、特撮マニアのOL・仲村叶(小芝風花)。職場では自分の趣味を隠し、普通の女子を演じているが、心の中では、自分の趣味をわかってもらいたい、そしてリアルな誰かと趣味の話を思いっきりしたい、と願っていた。

 そんな時、電車で出会った吉田さん(倉科カナ)が同じ特撮オタクであることを知り、仲良くなる。そこで彼女は、オタク同士で繋がることの喜びを知るのである。

 一方、叶の職場には、北代(木南晴夏)という、気難しい女性がいた。なかなか自分のことを話さない彼女だったが、実は名古屋のボーイズアイドル『Bee Boys』のオタクだということが判明し、2人は急速に仲良くなる。

 そして、北代のオタク仲間・みやび(吉田美佳子)や、行きつけの駄菓子屋の強面店主・任侠さん(カミナリ・竹内まなぶ)、特撮好きの少年・ダミアン(寺田心)なども巻き込んで、オタクならではのドタバタ劇が繰り広げられるのだ。

 このドラマの人気の秘密は、オタク心をくすぐる構成と小ネタにある。

 脈々と続く戦隊もののパロディをはじめ、アニメや懐かしのテレビ番組のテイストが、これでもかと詰め込まれている。しかも、劇中で使われる、特撮番組『獅風怒闘ジュウショウワン』や、そこで使われる曲なども、実にしっかりと作りこまれている。画面に出てくる字幕なども、オタクが好きそうなポイントを見事に押さえたもの。ネットを通してリアルタイムに、「あの元ネタは◯◯」「あれの構成は××っぽい」と盛り上がれるようにできているのだ。何より、ドラマを通して、作り手の“オタク心”が見えてくるようなところがいい。

 もちろん、小芝風花をはじめとしたキャストの熱演も魅力だ。オタクであることがバレないようにと、コソコソと活動をするときの緊迫した表情、好きな特撮を見ているときの恍惚の表情、自分と通じ合える人と出会ったときの歓喜の表情。少しオーバーなくらいの演技が、このドラマにはぴったりとハマっている。

 物語が佳境に入り、大きなテーマとなっているのが、親との関係だ。叶の家庭では、両親が離婚しており、母親(松下由樹)に育てられた。しかし、その母親は、オタクや、他人と違うことが大嫌いという性格。当然、叶の特撮好きも許すことなどできずにいたのだ。

 このような親との関係は、オタクにとって最大の難問だ。学生のうちは、何といっても、貴重な財源が親から出ているということがある。親の意に反し、小遣いをもらえなくなったら、オタク活動もできなくなるのだ。独立してからも、その関係は、そう簡単に断ち切ることはできない。それまで世話になった恩義もあるし、世間的な目もあるだろう。

 ただ、自分の経験からいっても、親の考えを完全に変えることはできない。自分よりもずっと長く、それこそ全く違う価値観の中で生きてきたのだ。ならばどうするか。


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