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「老後2000万円不足」はまったく心配しなくていい~年金未納の年収1000万円と、厚生年金のある年収400万円を比較

 金融庁の金融審議会ワーキンググループの報告書を巡って大騒ぎになった「老後2000万円不足問題」。発端は、5月23日に朝日新聞の「人生100年時代の備えは?年代別心構え、国が指針案」という記事を受けてSNSでネガティブな意見が飛び交ったことでした。その後、金融庁の報告書を担当大臣が受け取らないことをめぐって騒ぎは大きくなり、その余波はまだ続いています。

 「2000万円不足する」という数字だけが一人歩きし、これまで年金に関心がなかった若い世代が、「そういえば、給料から結構高い保険料が天引きされてるよね。なのにもらえないのーー?」などと誤解したりして、公的年金の信頼が揺らぎかねない状況です。

 ただ、公的年金は絶対に大丈夫、ご心配は無用です。ぜひ、読者世代の皆さんに、公的年金制度がどれほど頼りになるものなのかをしっかりご理解いただきたいと思います。

 そもそも、「老後資金が2000万円不足する」の「2000万円」の出どころは、家計調査の高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)に毎月約5万円の不足が生じるとして、30年分で不足額が2000万円になるという計算です。

でも、老後いくら不足するかは人によって違います。一人ひとりが、自分の「必要貯蓄額」を求めることこそが大切です。私は、「人生設計の基本公式」を使って求めてもらっています。「岩城みずほ」と検索していただければHPに計算サイトがありますので、ぜひやってみてください。

未納が続くと、万が一の時の障害年金や遺族年金が受け取れない
 数年前のことです。ある若い経営者(当時35歳)の資産運用の相談に乗ったことがあります。年収は1000万円。所得税率の高い彼がまず優先して使ったほうがよいのは税制優遇の大きい個人型確定拠出年金(イデコ)ですが、その手続きを進めようとしたところ、なんと彼が国民年金保険料を滞納したままであることがわかりました。私は、年金制度は強制加入であることを説明し、すぐに保険料を納めに行ってもらいました。

 保険料を納めない「未納」と、手続きをして保険料を納めるのを「猶予」または「免除」してもらうのとはまったく違います。未納が続くと、老齢年金だけではなく、万が一の時の障害年金や遺族年金も受け取れなくなります。年金制度は、障害や死亡の保障もあるのです。

 今回は老齢年金に関してのみ見ていきますが、保険料を納めず公的年金を受け取れない年収1000万円の人と、厚生年金のある年収400万円の会社員とでは、将来の安心がどのくらい違うのでしょう。年齢はともに38歳とします。

●年収400万円共働きAさん(38歳)夫婦の場合

 夫と妻ともに会社員で生涯年収400万円で働き、65歳以降、厚生年金と基礎年金で約160万円受け取ると仮定します。夫婦合計で320万円が一生受給できます。基礎年金は、納めた月数によって受給額が決まり、厚生年金は年収と保険料を納めた期間によって決まります。年収が高く、保険料を納めた期間が長いほど受給額は多くなります。また、厚生年金は保険料の半分を会社が負担してくれています。

 では、「人生設計の基本公式」で老後いくら必要かを計算してみます。計算に使う数字は6つあってそれぞれ個人の事情に合わせて入れるのですが、今回は、年金制度がいかに頼りになるかを知るための試算ですので、ざっくりした数字を入れますのでご了承ください。

 まず、「平均手取り年収(Y)」は夫婦合算して、年収から社会保険料と税金を控除した後の630万円とします。「年金額(P)」は320万円、「現在資産額(A)」は、これまで貯蓄をしてこなかったとしてゼロにします。

 みなさんが実際に試算するときは、終身で受け取れる企業年金がある場合は「年金額(P)」に加算してください。イデコや有期の企業年金、私的保険、利子や配当、賃料収入、預貯金は「現在資産額(A)」に入れます。また、子どもの大学進学の費用など今後必要になる支出は「現在資産額(A)」から差し引きます。退職一時金のある人は加算します。

 「老後生活費率(x)」は、老後の生活費が、退職時の生活費の何割くらいになるかを考えます。この夫婦のケースでは60%とします。「現役年数(a)」は65歳まで働くとして27年、「老後年数(b)」は65歳以降95歳まで生きるとして30年とします。

 結果は、「必要貯蓄率(s)」は6.1%です。65歳まで働きながら、手取り収入の6.1%を貯蓄すれば、老後生活費は約29万6000円が確保できます。年間約38万7000円、月に約3万2000円を貯蓄していけばいいのです。27年間で約800万円を貯めれば大丈夫ということです。もし、今後年金が1割減とすれば、老後生活費を26万6000円とすれば良いのです。

●年収1000万円無年金Bさん(38歳)夫婦のケース

 数字の考え方は同じですので割愛しますが、Bさんが年金受給をしないで、Aさんと同じ水準で老後を送ろうとすると、「必要貯蓄率(s)」は52.6%となり、毎月手取り年収の約半分の32万円を貯蓄していかなければならなくなります。必要貯蓄額は1億370万円です。

 

年金は購買力を維持できる
 一生もらえる老齢年金がいかに心強い制度であるかがよくわかります。この試算は95歳までですが、それ以上生きても公的年金はずっともらい続けることができます(Bさんの場合は、もっと貯蓄が必要ということになります)。

 また、年金は、長い期間にわたって受給するので、今後、物価が上昇する可能性もあります。物価が上昇しているのに、受給当初のまま金額が変わらないとどうですか? 

 たとえば、りんご1個が300円から20年後に600円になれば生活は苦しくなりますね。物価の上昇に応じて、年金額が増えなければモノを買う力(購買力)は下がってしまうのです。年金を中心とした老後生活で大切なのは、モノを買う力(購買力)を維持することです。

 年金制度は、世代間扶助といい、現役世代の支払う保険料が、年金受給世代に仕送りをされる仕組みです。賦課(ふか)方式だからこそ、モノを買う力(購買力)を維持できます。もし、自分で支払った保険料を積立ていく方式(積立方式)だとどうでしょう。

 たとえば、Bさんは、公的年金の代わりに民間の生命保険会社の個人年金保険に加入するとします。20年後30年後に受け取るのは、加入時に決められた保険金額です。物価が上がっていれば購買力は減ることになります。

 公的年金は、賦課方式・強制加入方式だからこそ、30年後、40年後、高齢になって年金を受け取るようになったとき、購買力が維持された年金を受け取ることができるのです。民間の保険会社には絶対に作れない「保険」です。

年金は必ずもらえる
 物価が上がって年金額が上がった場合、それを負担するのは現役世代ですから、年金額の改定は、現役世代に十分配慮して行われます。

 現役世代の賃金が仮に30万円から30万3000円に1%上がると、年金額も1%上がります。でもそのまま上げていたら、将来の年金財政が厳しくなってしまいます。制度は、今後少子高齢化が進むことで支える力が弱くなり、一方、高齢者の余命は伸びて年金受給期間も長くなって支給総額が増加することをちゃんと想定して作られています。保険料の上限を固定して、限られた税源の中で、年金給付水準を少しずつ調整する「マクロ経済スライド」という仕組みです。(現役世代に近い68歳までは「賃金水準」に当たる「名目手取り賃金変動率」によって改定を行います)。

 年金額は下がることもありますが、給付水準は、現役世代の平均年収の50%を上回る水準(所得代替率50%以上)を確保できるように決められています。

 また、年金の財源は、私たちが支払う保険料のほか、基礎年金の2分の1は国庫負担が入っています。税金が投入されていますので、ネガティブな情報に振り回されて、年金保険料を支払わず、年金をもらえないのは損ですよ。しっかり保険料を支払い、老後の安心を作っていきましょう。

最終更新:2019/06/27 07:15
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