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日刊サイゾー トップ > その他 > ウーマン・ウェジー  > 嫌韓「週刊ポスト」の炎上にみる出版業界
【wezzy】 

嫌韓「週刊ポスト」の炎上、保守論壇に寄って燃えた「新潮45」を彷彿

 「週刊ポスト」9月13日号(小学館)が組んだ特集「韓国なんて要らない」に、抗議が相次いでいる。「週刊ポスト」9月13日号の表紙には、韓国への侮蔑的な感情を剥き出しにした見出しが躍った。

韓国なんて要らない
「嫌韓」ではなく「断韓」だ 厄介な隣人にサヨウナラ
GSOMIA破棄でソウルが金正恩に占領される悪夢
サムスンのスマホ、LGのテレビも作れなくなる
東京五輪ボイコットで日本のメダルが2桁増?
暴走・文在寅は「竹島上陸』計画中!
「10人に1人は治療が必要」――怒りを抑制できない「韓国人という病理」

 この特集は、<隣国だから、友として親しく付き合わなければならない――そんな“固定観念”を一度、考え直すべき時期なのかもしれない。>と始まる。そのうえで、仮に日韓関係が絶たれたとしても、それによって被る不利益は日本側より韓国側のほうが大きいことが予想されるとして、ゆえに日本人読者は「断韓」を恐れる必要はないと説く内容になっている。

 右派系論壇はかねてよりこの手の嫌韓特集を続けてきたが、総合週刊誌も追随しているかたちだ。日韓の政治的な関係が目に見えて悪化している今、韓国バッシングはより「売れる」特集になっているのだろう。

 しかし韓国という国家、そしてそこにルーツを持つ多くの人々を揶揄し、偏見を強める「週刊ポスト」の特集に、ネット上では複数の作家が版元である小学館への抗議を展開し、中にはもう小学館とは仕事をしないと明言する作家もいる。

 ただ小学館ももともと保守系雑誌「SAPIO」があったし、「週刊ポスト」の嫌韓特集はこれが初めてというわけではない。また、小学館以外でも新書なども含めて中韓ヘイト本を出していない出版社のほうが珍しいくらいではないか。それほど普通に、ビジネスとしての中韓ヘイトが蔓延しているのは確かだ。

 今回の「週刊ポスト」の問題は、昨年休刊した「新潮45」(新潮社)の騒動と地続きだといえるだろう。そこで今あらためて、右派論壇と出版業界の関係を振り返るべく、昨年9月の記事を再掲する。

「新潮45」の暴走を招いた「出版不況」と、過激な右派論壇のニーズ

「新潮45」(新潮社)2018年10月号

 2018年10月号に掲載された特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」の記事が大炎上し、「新潮45」(新潮社)の休刊が発表された。

 LGBT当事者や関係者を不当に傷つけたうえ、社会にまん延する差別や偏見を助長するような原稿を複数回にわたって掲載したことは看過できるものではない。新潮社はとかげの尻尾切りのように「新潮45」を休刊させて終わりにするのではなく、このような状況をつくり出してしまった過程と要因をきちんと洗い出し、検証する必要があるだろう。

 そして、もうひとつ考えておかなくてはならないのは、この問題は新潮社だけに限らず、出版界全体にまたがる問題であるということだ。

 

 9月25日に新潮社から出された「「新潮45」休刊のお知らせ」では、「新潮45」が今回のような問題を引き起こしてしまった原因について、<ここ数年、部数低迷に直面し、試行錯誤の過程において編集上の無理が生じ、企画の厳密な吟味や十分な原稿チェックがおろそかになっていたことは否めません。その結果、「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」(9月21日の社長声明)を掲載してしまいました。このような事態を招いたことについてお詫び致します>と記されていた。

 「新潮45」はもともと、犯罪や事件のドキュメントで読者を惹き付けていた雑誌。特に、死刑判決を受けていた元暴力団員が表沙汰になっていなかった3件の殺人事件を告白した手記(2005年11月号掲載)は多くのメディアも後追いし、山田孝之が主演した映画『凶悪』のモデルともなった(映画内の雑誌名は「明朝24」となっている)。

 「新潮45」が、現在のような過激な保守オピニオンを掲載する方向に舵を切った要因のひとつは、前掲した「「新潮45」休刊のお知らせ」にある通り、雑誌の部数減にある。2018年9月27日付朝日新聞によれば、最も売れた2002年1月号で5万7359部もあった実売部数は、現在では1万部前後にまで下落。それに伴い編集部の人員も減らされ、最終的には編集長も含めた6人で編集を行っていたという。

 そんな背景のなかで「新潮45」は、方向性を変えていく。「新潮45」は今回取り上げられたLGBT差別以外にも、レイシズムを喚起するような記事も載せるようになっており、実際、2018年9月号では「「日本喰い」中国人」なる特集を組んで、ヘイトを煽るような誌面を作成していた。

 こういった路線は、ここ最近の右派系論壇の傾向でもある。前掲朝日新聞のなかで社会学者の奥武則氏は、<右派系論壇誌の勢力図も様変わりしている。書店で平積みされているのは『WiLL』や『月刊Hanada』など過激さをウリにする新興の雑誌だ。ネットで飛び交う新しい言葉の応酬や決めつけに慣れてしまい、むき出しの言葉ばかりが並ぶようになった>と指摘している。

 ここで名前のあがった「WiLL」はワック、「月刊Hanada」は飛鳥新社と、中小の出版社から刊行されている雑誌だが、新潮社以外の大手出版社も、過激な言説を売りとするヘイト本の人気に乗っかり、その隆盛に手を貸している。

 その典型例が、<「禽獣以下」の社会道徳や公共心しか持たない><自尊心を保つためには、平気で嘘をつくのが韓国人>といった言説で差別を煽り、47万部も売り上げているケント・ギルバート『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』。この本は講談社から刊行されている。

 「新潮45」は世間からの猛批判を浴び、今回のような結末を迎えたが、それでも、ヘイトを煽り立てるような本が手堅い商売として成り立ち、書き手も発表する媒体も存在している以上、「新潮45」の1誌がなくなったところで、現在のような状況は変わらないだろう。

 事実、「新潮45」休刊の原因をつくった杉田水脈衆議院議員は、2018年8月号に寄稿した論考が大炎上した後も、これといった釈明や謝罪をすることもなく沈黙を保って国会議員を続けている。今後も弱者の権利を踏みにじるような原稿をどこかの媒体に寄稿するだろうし、その原稿を欲しがる出版社も確実に存在するだろう。

 また、「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」特集のなかで最も問題とされる原稿を寄稿した小川榮太郎氏も、これによって筆を折るような事態にはもちろんならない。9月26日には「月刊Hanada」2018年11月号の対談企画に出演する旨の宣伝をツイートしているが、前述したような過激な右派論壇誌がビジネス上のニーズを保ち続ける限り、そういった媒体に寄稿し続けるだろう。

 「新潮45」騒動が炙り出した出版界の問題は根深い。

(倉野尾 実)

最終更新:2019/09/03 09:26
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