生徒が「自分はありのままでいい」と思えるようになる、麹町中学校の教育
定期テストや宿題を廃止するといった、従来の学校教育とは一線を画する取り組みをいくつも実施してきた東京都千代田区立麹町中学校。この先進的な学校づくりを指揮した同校の校長を務める工藤勇一氏が、9月26日に放送された『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)に出演し、教育観などを語った。
麹町中学では、中間・期末テストといった定期テストの代わりに、1つ1つの単元の終わりに“単元テスト”実施する。一般的な中学校で行われる中間・期末テストは出題範囲が広く短期間で実施されるため、一夜漬けで臨む生徒も出るが、単元テストであれば出題範囲は狭く、実施時期も不定期。ゆえに生徒の負担も少なく、教わった内容も定着しやすくなるという狙いがある。
この単元テストは、納得できる点数が獲得できなければ、もう一度受けることができる。その内容も1回目とほぼ同じで、1回目の反省点を見直せば点数を上げることが可能だ。
番組で紹介された、単元テストを生徒に返却するシーンは非常に印象的だった。芳しくない点数を取った時、友達に見られないように答案用紙の端を折って点数を隠す中学生は少なくない……少なくとも筆者の学生時代はそうだった記憶がある。しかし、麹町中学校ではそういった生徒はほとんどいない。
工藤氏は胸を張り、次のように語った。
<(麹町中学の生徒は)人と点数を比べない。麹町中には受験に失敗して入ってくる生徒が多く、入学時は『自分なんてダメだ』と思っている子が多くいます。それでも、それがだんだん変わってきて『自分はありのままでいい』と感じてきて、誰も周囲を否定しなくなります。そうすると、自己開示ができるようになって、挑戦ができるようになる。その環境を作るのが学校の中では一番大事です>
テストの点数は他人と比較するものではなく、本来は授業の定着度を測るものだ。入学直前、受験の失敗で傷ついていた生徒の自尊心も、学びによって自信を回復していく。
また、麹町中学では服装髪型検査も行なっておらず、生徒がありのままの自分を受け入れてもらえる空気感が醸成されている。非合理なルールで支配せず、生徒にとって本当にためになる三年間を送らせてあげたい、という「生徒ファースト」の姿勢が伺える。
麹町中学には宿題もない。番組内で工藤氏は、「宿題って極端な言い方をすれば何の役にも立ちません。すでにわかっている漢字を30回書くことに意味はなくて、時間の無駄ですよね」と言い切った。「無駄なこと」であっても疑問を持たず実直にこなすことが仕事だと学生生活で教え込んでしまえば、子供たちを短い時間で成果を出せる大人に成長させることを困難にする、との考えがそこにある。
詰め込み式の受験勉強にも否定的で、「今の日本の受験制度は、『記憶力の良い子が大学に行ける』仕組み」と一刀両断する。
<大人になればわかりますが、記憶力をベースにした学力はそんなに重要ではない。学力を上げることは、『分かるもの』と『分からないもの』を明確にして、『分からないものを分かるようにする』ということ。子供たちに必要なことは、『テストの点数を上げる』ではなく、学力を上げるためのスキルを身につけさせることですね>
番組司会の村上龍氏も、「子供は『自分は学年で4番だった』という喜びよりも、分からないことが分かった時の達成感のほうが大きいと思う」と腑に落ちたようだった。確かにその通りで、成績は他者による評価でしかない。それは学生時代に限らず、大人になってから続く長い人生でも同様だろう。
選択肢を「捨てる」ことが、子供のためになる
番組の最後に工藤氏は、子供の進路に悩む親に対してメッセージを送った。卒業生の親から子供の進路について相談されることが多々あるが、その際は「親が言ったことで進路を変えたら、子供は一生後悔します。子供が後悔しない生き方を支援するのが大事」と助言するのだという。
<職業を選ぶということは、自分の道から選択肢を捨てていくことですよね。勇気を持って捨てることが大事な作業になる。進んだ道が上手くいかずに違う道を選び直す時、その能力は必ず生きる。道を狭めたほうが可能性が広がるのに、大人は『狭めて良いのか?』と逆のことを言ってしまう。そういった親が子供を後押しするようになるのが麹町中の良さだと思います>
現在、麹町中のやり方を取り入れる学校は増えている。画一的でない「生徒ファースト」の指導が、全国に広がってほしい。
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