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五輪開催で頭が痛い新聞社──現場と経営サイドが「やれ」「やるな」で“アクセル・ブレーキ同時踏み”

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 いまや世界が注目する東京五輪の開催の可否。菅首相を筆頭に、大会関係者は「当然やる」というスタンスを崩していないが、各種調査では中止ないしは再延期を求める声が7割前後に達しており、国民に祝福されながらの開幕は難しい状況だ。

 これに頭を抱えているのは大手新聞社。「中止せよ」と主張する者と「やってくれ」と願う者とで社内が割れているという。

 開催できれば、57年ぶりとなる東京五輪。競技を楽しみにする国民にはまるで関係のない話だが、スポンサー企業の名前を見ると、異例とも言える名前が並んでいる。最上位の「ワールドワイドオリンピックパートナー」にはトヨタ、ブリジストン、パナソニック、コカ・コーラなど、世界的企業が名を連ね、それに次ぐ「ゴールドパートナー」にも、日本を代表する企業が勢揃いするなか、3番目のランクにあたる「オフィシャルパートナー」として、読売、朝日、毎日、日経の大手紙4社が仲良く五輪を協賛しているのだ。

「報道の中立性という観点から、海外では新聞社が五輪のスポンサーになることはあり得ない。ところが今回の東京五輪では、朝毎読の全国紙3紙と日経がスポンサーになっています。もともと五輪スポンサーには『一業種一社』という縛りがありましたが、IOC(国際オリンピック委員会)との協議により、これが緩和されました。そこで、読売一社だったところに朝日、毎日、日経が割って入ったのです。新聞社は系列にテレビ局もありますし、自国開催で読売だけに独占させるのはマズいと思ったのでしょう」(広告代理店関係者)

 これ以上ないビッグイベントを、すべてライバル社に持っていかれてはたまらないと考えるのは自然なこと。新聞各社が払うスポンサー料は数十億円にものぼるという。ただ、7割もの国民が開催を疑問に思う状況なら、編集部サイドは当然、それを紙面に反映させる必要が出てきた。

「例えば朝日であれば、5月12日の社説で『開催ありき 破綻あらわ』と、開催に強く疑義を呈する意見を発表しており、読売や毎日も、開催に向けて突き進む政権とは距離を置くトーンの記事が見られます。投書欄でも、開催にストップをかける意見がピックアップされるようになってきています。

 しかし経営サイドとしては、是が非でも開催して欲しいのが本音です。すでにスポンサー企業は、開催延期で“追い銭”を取られており、中止になっても、企業が払ったスポンサーフィーが戻ってくるかどうかは怪しいもの。『無観客などで“旨み”が減ってもいいから、とにかくやってくれ』と、強く願っているはずです。

 そもそも新聞社はネットに押されて部数が激減しており、経営はアップアップ。激しい人員整理を行っても、部数減のペースに追いつかないのが現状です。そこにきてスポンサーフィーがムダ金になればダメージは甚大。ただ、現場の記者たちは“記事を書く我々が社内で一番エラい”と思っていますし、編集権を侵されることは断固拒否ですから、経営社側の人間は、五輪中止を促すような記事を苦々しく見つめていることでしょう」(フリージャーナリスト)

 もはや五輪開催は風前の灯火。なぜ、こんなことになってしまったのか……詳細な検証記事が出ることを期待したい。

石井洋男(スポーツライター)

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

いしいひろお

最終更新:2021/05/14 07:00
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