日刊サイゾー トップ > 社会  > Qアノンの日本版「Jアノン」も! 広がる陰謀論とGAFAの対応
Qアノンの日本版も登場!【1】

ディープステート、不正選挙、コロナデマ……Qアノンの日本版「Jアノン」も! 広がる陰謀論とGAFAの対応

文=ゼロ次郎

プラットフォームから締め出しても別に行くだけ

 ここまで述べてきたように、Qアノンによる陰謀論はインターネットを中心に拡散を続けてきた。では、SNSや動画配信サービスを提供しているGAFAは、どのような対策を取っているのか? 『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)の著者で、GAFAの最前線を追っている、株式会社ニューズフロントでフェローを務める小久保重信氏は、次のように評価する。

「GAFAも努力していないわけではなく、当局から責められるたびに新しい施策を発表しています。不適切な投稿の監視をAI任せにするのではなく、外部に委託してモデレーターやチェック機関を置いたりしているのですが、コロナ、大統領選、そしてQアノンのトリプルパンチでなかなか勢いを止められないようです。また、GAFAの主な収入源は広告費のため、炎上すればするほど彼らの利益になるのではという穿った見方もされてしまいます。フェイスブックでは、陰謀論の投稿などの前後に広告が出たことで、1000社以上の広告主にボイコットを起こされるといった事態も起こっています。GAFAに対する姿勢は政党によっても異なっていて、民主党は憎悪表現だとか不適切な発言を放置していたことを追及する一方で、共和党は保守的な意見を検閲していると指摘しています。言論の自由、表現の自由のせめぎあいも絡んできて問題がさらに複雑になっているわけです」

 この結果、Qアノンの拡散は、これまでGAFAを保護してきた法律を改正するか否かの議論を呼び起こしている。

「議会占拠事件を受け、3月25日に米国議会の下院はSNSの主要3社(フェイスブック、ツイッター、グーグル)を呼び出して公聴会を開きましたが、ここで通信品位法230条を修正するか否かの議論が起こりました。この条項は、『SNS企業はコンテンツの発行人ではないため、ユーザーの投稿に対して責任を問わない』というもので、民主・共和両党からこれを撤廃しようという動きが出てきています。通信品位法は1996年に制定され、当時の新しい技術であるインターネットと、それに関連する新興企業を保護する意図がありましたが、今や世界のインターネット人口は46億人ともいわれており、25年前の法律では実情に対応できないという雰囲気が出てきています」

 前出の塚越氏も、次のように続ける。

「GAFAに対しては以前から“分割案”が出ています。例えば、グーグルは検索機能とそれ以外を分社化するべきだとか。反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)や通信品位法の解釈でずっと揉めているわけです。その一方で、米国内には『中国が発展を遂げているときに、GAFAを押さえ込んでしまうと、技術力で抜かれてしまうのではないか』といった中国脅威論が、問題を複雑にしています。フェイクニュースや陰謀論が野放しになっているのは民主主義の構造的欠陥だという声もあり、個々人が情報を適切に処理し切れない現代においては、中国のようにインターネットを徹底的に監理する技術を、部分的にでも利用すべきという声も、少数ですがあります」

 このように、GAFAも対応は続けているものの、なかなか陰謀論の拡散力には勝てない。だからといって規制を強めれば、それはそれで問題が生じると秦氏、辻氏、塚越氏の3氏は続ける。

「トランプ氏やQアノン系のアカウントをSNSから締め出した結果、陰謀論が何十%も減ったという研究結果もありますが、締め出された人々は陰謀論を捨てたわけではなく、別のコミュニティ(SNS)へ移動しただけという側面もあります。閉鎖的なコミュニティで地下化し、実態を掴めなくなるほうが危険性は高いため、そことの兼ね合いがこれからの課題だと思います。また、ツイッターでは投稿をリツイートする前に情報ソースを確認させる機能がついていますが、個人的にはグーグルやヤフーなどでも、特定のキーワードを検索したときにそういった注意喚起をする方法はありうると思います。現在でも、自殺に関するキーワードを検索すると『こころの健康相談統一ダイヤル』などの連絡先が表示されるような形で、技術的には可能なはずですし、企業の社会的責任として必要なのではないでしょうか」(秦氏)

「宗教における回心と通じるところがあるのですが、陰謀論は、それを維持する社会構造がなければ廃れます。ところが、新型コロナウイルスが蔓延している今の社会状況では、陰謀論的な考えを維持するコミュニティを見つけやすいので、減ることはないと思います。レオン・フェスティンガーという心理学者が『予言がはずれるとき』(勁草書房)という本で、認知的不協和という理論を紹介していますが、これは宗教団体の『○月○日に地球が滅びる』といった予言が外れたときに信者がどのような反応を示すかというのを論じたものです。予言が外れた時点で脱落する人もいれば、これまで信じていたことを無駄にしたくないという考えにすがり、自分が信じていたことと、予言が外れたという不協和を新しい解釈で塗り替えて、自分はあくまでも間違っていないということに固執する人もいます。陰謀論に基づく考え方というのは、世界をどう見ればいいのか、この世の中にはどういう意味があるのか、自分はなぜここにいるのかといったような実存的な欲求を満たしてくれるので、Qアノンたちも活動をすることによって自分の存在意義だとか、使命感を満たしている面もあると思います。規制によって陰謀論を語る場が限定されることで、信じる人々による閉じた強固なコミュニティが形成され、信念を維持強化、あるいは先鋭化しやすい構造が生まれる危険性もあります」(辻氏)

「インターネットをすごくキレイなものにしたいという人は多いんですが、汚い部分をどの程度受容するかが大事だと思います。なんでもかんでもキレイなものにすると偏りが出てしまいますが、かといってキレイにしたい人たちにとって、どの程度まで許容できるかと言われても、なかなか受け入れられるものではない。そうなると、やはり技術の力で両者のバランスを補っていくしかないのではないでしょうか」(塚越氏)

 世界をひとつにすると言われたインターネットは、今や思想の対立と分断を招くようになった。陰謀論を支持するわけではないが、本音と建前によって保たれている現実世界の秩序こそが幻想であり、インターネット上で展開されている剥き出しの混沌こそが、ある意味では“世界の真実”ともいえるのではないだろうか。

 とはいえ、GAFAが提供するサービスが我々の生活から切り離せなくなっている以上、後戻りはできない。「ネットと現実の区別」を本当に明確にするときが来ている。

(文/ゼロ次郎)

これだけやってもなくならない……GAFAによる陰謀論対策の一例

――GAFAも陰謀論を拡大させて私腹を肥やしているわけではない。ちゃんと、対策はとっているのだが、もはやキリがない?

●日本語への対応は?
グーグル

ディープステート、不正選挙、コロナデマ……Qアノンの日本版「Jアノン」も! 広がる陰謀論とGAFAの対応の画像2 YouTubeの対応がほとんど。例えば、次世代モバイルネットワーク5Gが、新型コロナウイルスの原因であるという陰謀論を主張する動画や、Qアノンやピザゲートなど誤った陰謀論に「誰かが関与している」と主張する動画の配信の禁止。また、グーグル自体は1月に、自社アプリストアからParlerを削除。

●時々変なアプリを排除
Apple

ディープステート、不正選挙、コロナデマ……Qアノンの日本版「Jアノン」も! 広がる陰謀論とGAFAの対応の画像3 特にSNSを持っていないため、5G陰謀論でたまに取り沙汰されるぐらい。また、同社も連邦議会議事堂乱入事件を受け、AppストアからParlerを削除している。ちなみに、18年にも右派政治評論家のアレックス・ジョーンズのアプリ「インフォウォーズ」の提供を、Appストア内で禁止しているので、同社の排除は珍しいことではない。

●たびたび槍玉に挙げられる
フェイスブック

ディープステート、不正選挙、コロナデマ……Qアノンの日本版「Jアノン」も! 広がる陰謀論とGAFAの対応の画像4 昨年8月にはQアノンの陰謀論に関係する1950以上のグループ、440件のページ、1500件の広告、さらにインスタグラムの1万件以上のアカウントを制限したと発表。10月には、Qアノンに関連するすべてのページ、グループ、インスタグラムのアカウントを削除すると述べて対策を強化している。

●Qアノン関連商品を売るのはやめた
Amazon

 もともと何も対応はしていなかったが、1月6日に米連邦議会議事堂で発生した暴動を受け、ほかの企業同様Parlerを排除。それだけではなく、Qアノンを支持する自費出版本、Tシャツ、ポスター、ステッカー、その他陰謀論に関連する商品に販売禁止措置を適用した。

最終更新:2021/06/14 14:00
12

ディープステート、不正選挙、コロナデマ……Qアノンの日本版「Jアノン」も! 広がる陰謀論とGAFAの対応のページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る
トップページへ

アイドル・お笑い・ドラマ…ディープなエンタメニュースなら日刊サイゾー

  • facebook
  • twitter
  • feed
イチオシ企画

「クリティカル・クリティーク 」気鋭の文筆家によるカルチャー時評

フィメール・ラッパーをはじめ、さまざまなカルチャーにまつわる論考を執筆気鋭の文筆家・つやちゃんによるカルチャー時評
写真
特集

宇多田ヒカル「First Love」とアジアの“青春”

 私たちの“青春”は、何度でもリプレイされ続ける。  Netflixにて全世界独占配信中のオリジナルドラマシリーズ『First Love 初恋』...…
写真
人気連載

「どん兵衛」と「赤いきつね」が共謀?

 今回は、和風カップ麺ブランドの2大巨頭であ...…
写真
UPCOMING

クリエイティブな次世代モデル・MONICA

 アップカミングなあの人にインタビューする連載「あぷ噛む」。第1回目は、モデルのMONICAにインタビュー。11月とは思えないほど暖かいある日の昼...…
写真