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一番“ガッカリ”は『となりのチカラ』か『DCU』か? 今期ドラマ序盤ランキング

ガッカリドラマ3位 『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』水曜22時~(日本テレビ系)

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ドラマ公式サイトより

〈あらすじ〉
秘書の雛子(高畑充希)は、カリスマ社長・浅海(松田翔太)のムチャブリに振り回されてばかり。唯一の楽しみは、ビール片手にゲームでストレス発散という残念な女…。そんなある日、ヤケクソで提出した企画が採用され、雛子はレストランの再建事業を担う“子会社の社長”に大抜擢! しかしナマイキな部下・大牙(志尊淳)に振り回され、買い取ったレストランでは従業員の反乱が!? 前途多難な毎日が始まる!

 日テレ水曜ドラマ枠といえば、昨年は絶好調だった『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』、ギャラクシー賞にも輝いた傑作『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』と続き、ドラマファンの期待と信頼を高めていたのだが……あらすじから漂っていた地雷臭は間違いではなかったと言わざるを得ないだろう。お仕事ドラマとしても、(今後より展開されるであろう)恋愛ドラマとしても中途半端というあたり、フジ木曜ドラマの『推しの王子様』『SUPER RICH』といった駄作と近いものがある。ツッコミどころは多々あるが……というよりツッコミどころしかないが(このあたりは東海林かなさんのレビューも参照されたい)、同枠で『過保護のカホコ』『同期のサクラ』を成功させた高畑充希を持ってしてもおもしろくならない、脚本のつまらなさと設定の古さ。高畑にとっては、このドラマをおもしろくすることが最大のムチャブリでは。

ガッカリドラマ2位 『となりのチカラ』木曜21時~(テレビ朝日系)

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Telasa公式ページより

〈あらすじ〉
東京のとある郊外に建つマンション。そこに、中越チカラ(松本潤)と妻の灯(上戸彩)、そして娘の愛理(鎌田英怜奈)と息子の高太郎(大平洋介)という1組の家族が移り住んでくる。優柔不断で困っている人を放っておけない性格の夫とテキパキしっかり者の妻に、ちょっぴり大人びた姉と無邪気な弟…そんな一家がやってきたマンションには、とても個性豊かな住人たちが暮らしていた。いろいろと思いを巡らすチカラに、灯は「ご近所のことに首を突っ込まないように」と諭すのだった…。

 隣近所との関係が濃密だった“古きよき昭和”を懐古するように、お節介キャラが騒動を巻き起こすハートフルコメディというのは平成の時代に多く生まれたが、それをあえて令和に持ってきたということだろうか。

 しかし、何より気になるのは、昨年4月期の『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)を想起せずにはいられないナレーション(田中哲司)だろう。『大豆田』と違い、こちらは演出としてスベり続けている……というかあまりコメディとして機能していないのが観ていて辛い。不思議なのは、チカラ(松本潤)の心境や状況を代弁するこのナレーションと別に、チカラ自身のモノローグもあるところ。ゴーストライターとして働くチカラは他人を助ける行為によって“自分自身から逃げている”と娘に指摘されているが、ナレーションの雄弁さに比べ、モノローグが少ないのはそうした主人公を現しているのだろうか。

 チカラが隣人にやたらと絡むことで、ドラマはDV、ヤングケアラーといった社会問題にも触れていくのだが、今のところコメディとしてはどうにもつまらなく、社会派としてはあまりに表層的すぎる。遊川和彦氏の代表的ヒットである『女王の教室』や『家政婦のミタ』(ともに日本テレビ系)は、主人公の行動がどんなに物議を醸しても、そこに主人公の確固たる哲学や信念があったからこそ支持を集めていった。チカラの行動は視聴者にイライラやモヤモヤを抱かせるが、はたして支持や共感を生み出していけるのか、それともただ周囲をかき回すだけのキャラクターで終わってしまうのか。

 初回放送だけであれば圧倒的にワースト1位だったが、しかし、鬱憤が溜まった時だけ聞こえるチカラのモノローグ、第2話で明らかになった彼の過去、そしてただのお節介というより、他人との関係性を築くことに執着しているようにも見える、主人公のある種の異常さ……これらを考えると、ただの「社会派ホームコメディ」とはならないだろう予感もある。無論、遊川和彦作品だけにこちらの想像の斜め上を行く展開が待っている可能性もあるのだが……。

ガッカリドラマ1位 『DCU』日曜21時~(TBS系)

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Paravi公式ページより

〈あらすじ〉
海上保安庁に「潜水特殊捜査隊」、通称「DCU」が発足した。DCU設立の目的は、島国日本において海や河川で発生する事件の解決や、水際からやってくるテロなどからの防衛。いわば水際捜査に特化したエキスパート集団だ。隊長となったのは、50歳を迎えた新名正義(阿部寛)。メンバーには過去に水難事件で新名に命を救われた瀬能陽生(横浜流星)の姿も。DCUは海上・水中だけではなく陸上の捜査権限も与えられることになったのだが、そのことが警察関係者との間に溝を生んでいた――。

 前述のように『となりのチカラ』と悩む部分はあったが、絶好調の「日曜劇場」ブランド、さらに「ハリウッド」の文字をやたら押し出したことも考えると、ガッカリ度の高さは今期随一だろう。

 警察・刑事モノといえば、監察医、犯罪者プロファイリングなどさまざまな手が繰り出されてきた。『DCU』は水を舞台に「手錠を持ったダイバー」が活躍すると謳っていたため、どんな作品になっているかと思えば、今のところありきたりな刑事モノの枠をはみ出していない。重要な証拠を水中から探し出す以外は、陸での捜査が続くのだ。

 彼らは海上保安庁に所属する潜水特殊捜査隊のはずなのだが、その設定があまり生かされているように思えない。特に第1話は海ではなくダムの捜査で、ハリウッドを謳う作品にしては地味な画の多い初回だった。主役の阿部寛は、撮影チームのこだわりに「さすがハリウッド」的な発言をしていたと記憶しているが……。「実在の海上保安庁は海上と無関係な陸上の捜査について権限はない」などとツッコまれ続けているのも、フィクションとしてあまりに“いまひとつ”だからだろう(なお、海上保安庁の全面協力のもと撮影されている)。そんなガッカリ度の大きさは、今期イチの高視聴率スタートとは相反して、オリコンによるドラマ満足度調査では初回50点(100点満点)とかなり低い評価になったことからもうかがえる。

 どのへんがハリウッドクオリティなのか?という意味では他にもさまざまな面で残念ポイントが見つかるが、気になったのは山崎育三郎演じる公安一課の刑事・清水の役どころ。なぜか“オネエ”口調なのだ。日曜劇場の“オネエ”といえば、『半沢直樹』シリーズの黒崎(片岡愛之助)が印象的だが、特に意味もなさそうなのにそういう設定なのは、なにかこだわりでもあるのだろうか。いずれにせよ、これが本当にハリウッドの作品であれば、真っ先にやり玉に挙げられるだろうキャラ設定であり、「ハリウッド共同制作」が聞いて呆れる。ドラマの元々のコンセプトは「ハリウッド」側からの提案だったようだが(クレジットにも「Based on a concept created by Ilan Ulmer and Samuel Goldberg」と表記される)、それを日曜劇場ナイズドした結果がコレということなのだろう。

 とはいえ、第1話の冒頭では産業スパイ絡みの事件が過去にあったことが示唆され、また第1話と第3話では「ロシア」というキーワードが出てくる。「DCU」設立の目的には「水際からやってくるテロなどからの防衛」とあることから、今後は国際問題なども絡む内容となってくることが予想されるところ。その時こそ「ハリウッド」の本領発揮となるか、注目したい。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2022/01/31 19:36
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