
『冬薔薇』伊藤健太郎の演技は必ずや評価されるだろうが…とにかく暗く重たい復帰作
#映画 #伊藤健太郎

赤井英和主演の『どついたるねん』(1989)でデビュー後、2000年には『顔』で日本アカデミー賞最優秀監督賞などを受賞した阪本順治監督。任侠や喜劇、群像劇、SF……といった幅広いジャンルを扱ってきた阪本監督の新作かつ、2020年にひき逃げ事件を起こして芸能活動を休止していた俳優・伊藤健太郎の復帰作となる映画『冬薔薇(ふゆそうび)』が、6月3日から公開される。
本作において、阪本監督は伊藤と面談をし、当て書き(その役を演じる俳優をあらかじめ決めておいてから脚本を書くこと)しながら脚本を完成させた。そのストーリーは、人生のどん底から這い上がる希望の物語……ではなく、何もかもがうまくいかない中でも逃げることなどできず、それでも生きるしかない。そんな現実を容赦なく描き出した、終始人間臭くて重苦しい作品だ。
希望ばかりを見せることで安易な安心感をもたせる作品とは全く異なっている。逆にフィクションだからこそ、徹底的に負の部分を見せることで、自分を見つめ直すことができる。
現実社会においては、必ずしも救いがあるとは限らない。誰かが助けてくれるとは限らない。それは親でも友人でも……。
【ストーリー】
ある港町。専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるみ、友人や女から金をせびってはダラダラと生きる渡口淳(伊藤健太郎)。“ロクデナシ”という言葉がよく似合う中途半端な男だ。両親の義一(小林薫)と道子(余貴美子)は埋立て用の土砂をガット船と呼ばれる船で運ぶ海運業を営むが、時代とともに仕事も減り、後継者不足に頭を悩ましながらもなんとか日々をやり過ごしていた。淳はそんな両親の仕事に興味も示さず、親子の会話もほとんどない。そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起きる。そこに浮かび上がった犯人像は思いも寄らぬ人物のものだった……。
※次のページから一部ネタバレを含みます
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