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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.687

「部落問題」を明るく語り合うドキュメンタリー『私のはなし 部落のはなし』

文=長野辰次(ながの・たつじ)

「部落問題」を明るく語り合うドキュメンタリー『私のはなし 部落のはなし』の画像1
屈託のないトークによって、差別問題が語られる『私のはなし 部落のはなし』

 マスコミタブーのひとつ、よく分からないから近づかないようにしている、迂闊に触れるとクレームが殺到しそう……。「部落問題」について、そんなイメージを持つ人は多いのではないだろうか。正体の分からない曖昧なイメージのものほど、人間は恐ろしく感じてしまいがちだ。

 ドキュメンタリー映画『私のはなし 部落のはなし』は、そんな「部落問題」に関する曖昧なイメージを一掃する作品となっている。出演者たちは時に笑顔を交えながら、「部落問題」についてオープンに語り合う。本作を見終わった後は、こちらまで前向きな気持ちにさせてくれる。

 本作で語られる「部落」とは、日本国内で不当な身分差別を受けてきた被差別部落(同和地区)のことを指している。明治時代に入り、封建社会を支えてきた武士、町民、百姓という身分制度は廃止され、それまで穢多(えた)・非人(ひにん)などと呼ばれた賎民身分の人たちも平民となった。

 社会制度上はなくなったはずの被差別部落だが、今なお部落出身者に対するいわれなき差別は残っている。興信所を使って結婚相手の身元を調べるケースもあれば、かつて部落と呼ばれた地域の近くで殺人事件などが起きるとネット上で根拠のない噂がたびたび出回ったりする。

 存在はしないのに、日本人の意識の中に消えることなく潜んでいるのが「部落問題」だと言えるかもしれない。だが、ドキュメンタリー映画『私のはなし 部落のはなし』は、観客の意識の中に穏やかに入り、「部落」にまつわるイメージをやんわりと上書きしていく。テロップなどは手書きとなっており、全体的に柔らかい印象を与える。

 基本的な構成は、「部落」と呼ばれる地域で生まれ育った出演者たちが、気心の知れた仲間や同じ地域で暮らしている人たちと、部落差別の実情について語り合うトークが中心となっている。異なる地域での複数のトークが進むが、若い世代が自身の恋愛体験を振り返っているのが印象的だ。部落出身であることが原因で、交際相手と別れることになったなどのエピソードが語られる。苦い体験談だが、社会問題についての難しいディベートというよりは、知り合いの「恋ばな」を聞いているような親密さが伝わってくる。

 あからさまな就職差別は減っているものの、交際や結婚などの機会に差別問題は顕在化するようだ。本人たち個人の意識だけではなく、家族や共同体の中に潜んでいた差別意識が浮上してくる。率直なトークを皮切りに、ナイーブな問題へと本作は迫っていく。(1/4 P2はこちら

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