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『石子と羽男』赤楚衛二&望月歩が熱演! 大庭弟を描く上での“配慮ある表現”にも賛辞

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Paravi配信ページより

 9月9日に放送されたTBS系金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』第9話。第1話放送前にはただの「初回ゲスト」かと思われていた赤楚衛二が、ここまで感情をかき乱すキーパーソンになってくるとは、一体どれほどの人が想像できただろうか。

大庭、羽男、石子による優しさの連鎖と、詐欺による悲劇の連鎖

 ある晩、公園のトイレが放火され、中から身元不明の遺体が発見された。放火直後に現場から走り去る姿が防犯カメラに映っていたため、容疑者として逮捕されてしまった大庭蒼生(赤楚衛二)。弁護士として接見に来た「羽男」こと羽根岡佳男(中村倫也)だが、大庭からは「俺がやりました」「もう話すことはありません」と突き放されてしまう。大庭が何も話さないことにはどうしようもできない。大庭と交際している「石子」こと石田硝子(有村架純)は、パラリーガルで、弁護士資格がない身であるため自身は接見できず、大庭のために自分は何もできないと悩む。

 「話してくれるまで、俺が何回でも会いに行くから」と羽男に励まされ、自分を取り戻した石子は、手紙を通して大庭に想いを伝える。「あなたが黙秘を貫いているということは、何か私達には簡単には言えない事情を抱えているんだと思います」「たくさんの大庭さんを知ってるからこそ、何か正しい理由があって、口を開くことができないんじゃないか。そしてそれにより、大庭さんは苦しんでいるんじゃないかと、とても心配しています。私達は、どんな事情があるにせよ、あなたの力になりたい。大庭さんも、私と羽根岡先生を信じて下さい。声を上げていただかなければ、お手伝いすることはできません。今度は、私が傘を差し出す番です。ずぶ濡れの私を助けてくれたように、私達が大庭さんを雨から守ります」 羽男が読み上げた石子の思いは、黙秘を続けていた大庭の心に届く。

 大庭が「ずっと、どうしていいか分かんなくて」と打ち明けたのは、事件直前の出来事だった。事件当日の夜、たまたま実家に帰っていた大庭。その時、弟の拓(望月歩)は大庭の社用ジャンパーを持ち出して散歩に出かけたが、1時間ほどして戻ってきた拓はなぜかケガをし、玄関にうずくまっている。何かあったと察知したものの、拓はとても怯えており、まともに話ができる状態ではなかった。翌日、防犯カメラに大庭のジャンパーを着ていた人物が映っていたことから警察は大庭のもとにやってきたが、防犯カメラに映っているのが自分ではなく本当は拓だと気づいた大庭は、「弟を守るため」自分がやったと偽証してしまったのだった。

 弟を信じたいが、疑わしくもある。だが、弟が警察に捜査されることは絶対に避けたいという大庭。「なんでそこまでして弟さんをかばうの?」という羽男の問いに、大庭は「生まれつき人と接するのが苦手で、昼間出歩くこともできない感じなんです。夜中散歩するのも、そういう理由で。拓は絶対取り調べなんて耐えられないって思うんです」と説明する。そして、拓が逮捕されることは避けたい大庭は、自分は容疑者のままでいるから、その間に拓の無実を証明してもらえないかと頼むのだった。

 さっそく拓に話を聞きに行く羽男と石子だが、いざ当日夜のことを尋ねようとしても、拓は怯えてしまい、会話ができない。事務所に戻り、話してくれるまでに時間がかかりそうだと気落ちする石子に、羽男は「所長とか石子さんって(中略)動揺してても、寄り添って支えようとしてくれる」「寄り添ってくれる方だから、拓さんも、石子さんにだったら話したいと思うようになってくれるんじゃないかな」と励ましの言葉を送る。

 そして遺体で発見されたのが日向理一郎(平田広明)という男性であることが判明。日向の妻・綾(山本未來)と会って話をしたことをきっかけに、少しずつ謎が解けてくる。大庭は転職先の「ナカマル」の利根社長(坪倉由幸)から、転職してまだ2カ月にもかかわらず、子会社の「株式会社グリーンエステート」をゆくゆくは任せたいと声を掛けられていた。先に名義だけ社長として登録しておく、それで役員報酬がもらえる……そんなうまい話に騙されて大庭が表向きの社長とされたグリーンエステートは、不動産投資詐欺を行っている疑いのある会社で、日向夫妻は、まさにその詐欺の被害者だった。諸悪の根源はグリーンエステートの“大庭社長”だと早とちりした日向は、復讐と保険金を目当てに、“大庭社長”の目の前で焼身自殺を図ろうとしたのだった。

 兄が自分のために罪をかぶったことを知った拓は、自ら警察署に駆け込む。人前で話す状況にうまく言葉が出てこないが、相手に寄り添うことのできる石子のサポートもあってついに、公園にいたのは自分で、目の前で日向がガソリンをかぶったことを証言。日向が遺した遺書を妻の綾が提出したこともあり、この証言には妥当性があるとして、大庭は不起訴処分に。しかし、何かに怯え、涙を流していた拓はさらにこうも言っていたのだった。「もう一人、いた」「その人が火、つけた」――。

拓というキャラクターに対する配慮ある表現

 第1話で依頼者となった大庭が、最終回目前で再びストーリーの中心となる展開に視聴者は沸いた。第8話のラストで突然警察に連行され、予告映像で「俺がやりました」と自白する場面があったことから「どうなるの?」と不安にさせたが、すべては弟を守るため。やはり大庭は大庭だった。また、大庭の弟・拓役で出演した望月歩は、『石子と羽男』スタッフが手がけた『マザー・ゲーム~彼女たちの階級~』『アンナチュラル』などにも出演した若手役者で、今回の熱演にも賛辞が送られた。

 さらに、SNS上で話題となったのは拓に対する演出だ。拓のキャラクターについて、「生まれつき人と接するのが苦手で、昼間出歩くこともできない感じ」と大庭が語るにとどまり、それ以上の説明はなく、すべては望月歩の演技と、拓を囲む周囲の人たちによって表現された。視聴者からは「みんな拓くんに自然に接していた。この子は診断名があって……とか、なんだコイツ……? みたいな境界線引くシーンがないのが新鮮ですごいよかった」「“人との関わりが苦手な弟”と説明し、それ以上付け加えないこのドラマ素敵だと思うよ」「これが配慮だよなって思う」など肯定的な声が多数上がっていた。これは「真面目に生きる人々の暮らしを守る“傘”になろう」というスローガンを掲げる作品のプライドを感じるポイントだったといえる。

 また、重いストーリー展開だからこそ、羽男のキャラクターにところどころ助けられた。大庭が“自白”したことに動揺し、「資格さえあれば」と頭を抱える石子に対し、落ち着こうとうながす羽男は、自分も動揺していると明かした上で、「俺だってやってないって信じたいよ。でもさ、信じたいって気持ちで動いてたら、アレでしょ?」と言って、「弁護士倫理に反しま~す」と石子のモノマネをし、ふざけるようなフリで石子に冷静さを取り戻させる。そして「話してくれるまで、俺が何回でも会いに行くから」と優しく語りかけるのだった。

 この羽男の軽妙さと、優しさの絶妙なバランス。石子が羽男のもとに相談に行った際には、交際してない男性の家には上がれないと自分の“ルール”を貫こうとする石子に、「俺だよ俺。何も起こんないでしょ。ほら」と言って心配を取り除く。部屋に上がった石子を励まそうとして、直前に見ていた御子神(田中哲司)の動画の“名言”をパクるも、「は?」と石子に睨まれ、すぐさま「うん。ごめんなさい。違いました、すいません」と謝る。こうしたやり取りからも、石子がいつもの自分を取り戻せていることがわかるが、それは先の羽男の優しさのおかげなのだ。不起訴処分となり、勾留から解かれた大庭が警察署から出てきた際、お互いに見つめ合いながら石子に駆け寄る大庭を、無邪気に割って入って石子よりも先に抱きしめ、「よかったね!」と心から喜び、石子にツッコまれる羽男もまた、これ以上なく羽男らしかった。

 思えば、第9話には2つの「連鎖」があった。大庭は弟を守ろうとし、拓は兄のために懸命に証言しようと頑張った。羽男は大庭と石子に優しい言葉をかけ、石子は大庭と拓の心を開いた。この優しさの連鎖によって、大庭は救われ、拓も逮捕されずに済んだのだ。羽男もまた、石子と、所長の潮綿郎(さだまさし)の“寄り添う”優しさに救われてきたことを語っていたことも忘れてはならない。一方で、大庭は騙されて名義貸しをしてしまい、それによってあらぬ疑いをかけられた。そしてグリーンエステートの投資詐欺によって追い詰められた日向は、“大庭社長”への憎しみを抱いたまま、帰らぬ人となった。人を騙すことによる連鎖が悲劇を起こしたのだ。「本当に責められるべきは(中略)人をだますやつだ」と言う羽男の言葉どおり、この悲しい連鎖は断ち切られることを期待したい。

 いよいよ今夜、最終回となる第10話が放送される。第9話のラストで拓が証言した人物とは誰なのか。また、黒幕と睨まれている御子神、不動産投資詐欺、そして羽男の父親・泰助(イッセー尾形)とはどんな決着がつくのか。最後の最後まで目の離せないドラマとなりそうだ。

■番組情報
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー
TBS系毎週金曜22時~
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし ほか
脚本:西田征史
音楽:得田真裕
主題歌:RADWIMPS「人間ごっこ」(Muzinto Records / EMI)
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山本剛義
編成:中西真央、松岡洋太
製作著作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2022/09/16 12:00
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