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『silent』異例の配信人気で…Official髭男dismのドラマ主題歌も「記録的ヒット」の相乗効果

『silent』異例の配信人気で…Official髭男dismのドラマ主題歌も「記録的ヒット」の相乗効果の画像
『silent』キービジュアル(ドラマ公式サイトより)

 川口春奈主演のフジテレビ系木曜劇場『silent』が異例の盛り上がりを見せている。

 放送前の注目度は決して高いとはいえなかったが、初回が放送されると大きな反響を呼び、あっという間に今期最大の話題作となった。コア視聴率(13歳~49歳の個人視聴率)は5%に迫る勢いで、現状今期ドラマ1位。オリコンによる「ドラマ満足度ランキング」では4週連続の首位を記録し、11月3日放送の第5話では今年初の100Pt満点を獲得するなど、視聴者から熱い支持を得ていることがうかがえる。

 物語そのものは大きなドラマの起こらない、シンプルなラブストーリーだが、リアリティのある会話劇、繊細な心理描写、過剰な説明や演出での盛り上げの排除、物語の展開やセリフと呼応するような小道具や設定のディテールといった、“丁寧”なつくりが支持されている。聴覚障がいを扱うこのドラマのタイトルどおり、作品に寄り添う劇伴がない場面も多く、没入感を誘う。手話での会話も多いため、“ながら見”では重要な場面を逃しやすく、視聴者を画面に注視させる。そして、象徴的に登場するスピッツの楽曲/アルバムなど、ストーリーとリンクしている“仕掛け”が細部に潜んでおり、ドラマに「語りたくなる」奥行きが用意されているのも人気の理由だろう。

 視聴率も初回から上昇しているが、『silent』は見逃し配信で圧倒的な勢いを見せているのが特徴だ。フジテレビは、TVerなどの無料配信プラットフォームにおける「AVOD」(広告付き動画配信)で、今年8月から3カ月連続で、再生数、UB(ユニークブラウザー)数、総視聴時間のすべての指標で民放1位を記録しており、特に10月度はいずれの指標でも過去最高を記録しており、この最大の要因が『silent』の大ヒットとなっている。TVerお気に入り登録者数は異例の200万人超えで、「TVerにおける単話での放送1週間の見逃し配信再生数」の記録も、第1話443万再生、第2話489万再生、第4話582万再生と3度にわたって更新。TVerだけで、第4話までの累計再生数は2400万を突破しており、2021年10-12月期の累計再生数1位となった『最愛』(TBS系)の2280万再生を上回る驚異的な数字だ。繰り返し見ている視聴者が多いと見られている。

 配信で数々の新記録を打ち立てている『silent』だが、その勢いはOfficial髭男dismによる主題歌「Subtitle」にも現れている。『silent』劇中に登場したスピッツ「魔法のコトバ」「楓」などは登場人物の心情と歌詞がリンクしているのではと考察されているが、主題歌「Subtitle」の歌詞もまた、ドラマのストーリーに寄り添ったものだとして反響を呼んでおり、ドラマの盛り上がりに合わせて「Subtitle」の“配信”人気も拡大中だ。

BTSと並ぶ、ストリーミング累計1億回再生の史上最速記録に

 ドラマの放送開始(10月6日)翌週の10月12日に配信された「Subtitle」は、ストリーミングで急速に勢いを伸ばし始め、10月26日公開(2022年10月17日~2022年10月23日対象)のビルボードジャパン総合チャートで、米津玄師「KICK BACK」を2位に引きずり下ろして首位を獲得した。

 そこから3週連続で総合1位をキープし、11月16日公開(2022年11月7日~2022年11月13日対象)のチャートではCDシングルの初週売り上げが60万枚超えとなったKing & Prince「ツキヨミ」に僅差で総合首位の座を奪われたものの、ストリーミング指標では5週連続で1位。ストリーミングでの週間再生回数が史上初となる「3週連続2000万回超え」という勢いを見せ、ビルボードジャパン史上最速となるチャートイン6週目で累計1億回再生を達成する見込みだ(※6週目で累計1億回再生はBTS「Butter」とタイ)。

 2022年を代表する大ヒット曲であるAdo「新世界」やAimer「残響散歌」ですら累計1億回再生まで12週かかっていることを考えると、Official髭男dism「Subtitle」の勢いがいかに異例かがわかるだろう。Official髭男dismは、アニメ『SPYxFAMILY』オープニングテーマとなった「ミックスナッツ」がこれまで自身最速での累計1億回再生突破となったが、これも12週であり、「Subtitle」で大幅に最短記録を更新した形だ。先のAdoとAimerの楽曲も『ONE PIECE FILM RED』、『鬼滅の刃 遊郭編』といずれもアニメのタイアップ曲だが、『silent』人気は久々にドラマタイアップのヒット曲となったとも言えるかもしれない。なお、2020年の世界興行収入1位となる記録的ヒットとなった映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌であるLiSAの「炎」も、累計1億突破まで7週かかっている。

 ドラマは11月24日は放送休止となり、第8話が1週空いて12月1日の放送となるが、TVerでは主演の川口春奈の独占インタビューを含む「silentドキュメンタリー」が11月17日、11月24日、12月1日と3週にわたって連続で配信される予定だけに、TVer人気への影響は少ないと見られる。加えて、木曜劇場は全11話完結が多く、『silent』も第11話まであるとすると、最終回はクリスマスシーズンの12月22日となると見られ、ラブストーリーである『silent』はより一層盛り上がっていくだろう。

 Official髭男dism「Subtitle」はSpotifyの日本デイリーチャートでは現在も1位の座に君臨し続けており、ストリーミングの週間再生回数は4週連続で2000万回超えとなるのも確実視されている。年末には『FNS歌謡祭』(フジテレビ系)や『第73回NHK紅白歌合戦』といった音楽特番への出演も決まっており、『silent』同様、Official髭男dismによるこの主題歌もまた、“配信”でさらなる新記録を打ち立てていくこととなりそうだ。

加賀美ジョン(音楽ライター)

洋邦問わず、音楽にまつわる編集・ライティングで十数年。クレジットを眺めるのが趣味。

かがみじょん

最終更新:2023/03/14 14:09
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