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特集:あらためて、宇多田ヒカル

宇多田ヒカル「First Love」誕生から24年、アジアの“青春”に与え続ける影響

文=菅原史稀(すがわら・しき)

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2001年の宇多田ヒカル(Getty Images)

 

 私たちの“青春”は、何度でもリプレイされ続ける。

 Netflixにて全世界独占配信中のオリジナルドラマシリーズ『First Love 初恋』が、2022年
11月24日の配信開始から3週連続でグローバルトップ10(テレビ・非英語部門)入りを果たした。
 
 アジアを中心に世界各国で話題となった同ドラマの効果により、本作のインスパイアソースとなっている、宇多田ヒカルが1999年にリリースした3rdシングル「First Love」も東アジア各国・地域でチャート入りを記録。この「First Love」のリバイバルヒットに連動する形で、同曲のMVが公開されているYouTubeのコメント欄はさまざまな国の言語でにぎわい、このような声が寄せられている。

「ドラマでこの曲が流れるたび、鳥肌が立った。そのノスタルジックさがシーンにとても合っていた。この曲を蘇らせてくれたNetflixに感謝したい」

「自分はこの曲がリリースされた後に生まれた。初めて聴いたけど懐かしい気持ちになるし、日本語の歌詞は分からないのに泣いてしまった」

“レジェンド”宇多田ヒカルがアジアンポップスに与えた影響

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2022 Coachella Valley Music And Arts Festivalのステージに立つ宇多田ヒカル(Getty Image)

 2022年4月16日(現地時間)、コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバルの舞台で、宇多田は叫んだ。

「Let’s go back to the ’98!」

 彼女が披露したのは、まさにあの「唇から自然とこぼれ落ちるメロディー」。アメリカ最大の音楽フェスティバル・コーチェラのメインステージにおいて宇多田がデビュー曲「Automatic」、そして「First Love」を歌唱したことは、J-POP史に間違いなく刻まれる、記念すべき出来事だった。

 そして何よりここで忘れてはならないのは、そのノスタルジックな風に吹かれていたのは、日本の人々だけではなかったということである。

 宇多田のデビューアルバム『First Love』(※楽曲「First Love」は同アルバムからのシングルカット)は、発売からわずか5カ月後の99年8月には737万枚の実売枚数を記録していた。うち35万枚は香港や台湾など日本以外の東アジア各国でリリースされたもので、宇多田のデビューは他国のリスナーにも衝撃を与えていたのだ。

 その後も長く愛され続けた同アルバムのセールスは、2013年までに全世界で991万枚に達しており、まさにJ-POPを代表する1枚となっている。

 ここに収録された「Automatic」がプレイされた瞬間、コーチェラのステージを生配信していたYouTubeチャンネルのチャット欄には世界各国からコメントが殺到し、多言語によってそれぞれの心情が表されていた光景が印象的だった。

 宇多田が「Automatic」、「First Love」を披露したのは、アジア系アーティストの作品を発信してきたアメリカのレーベル・88risingとコーチェラによるコラボステージ「88rising’s Head In The Clouds Forever」。そこには、ウォーレン・ヒュー(インドネシア)やMILLI(タイ)、2NE1、BIBI(韓国)、NIKI(インドネシア)、リッチ・ブライアン(インドネシア)など、世界で活躍するアジアのアーティストたちが集結した。

 宇多田のコーチェラ招聘(へい)にあたった、88rising設立者でCEOのショーン・ミヤシロ氏は、「宇多田ヒカルさんはレジェンドであり、私にとっての日本のヒーローでもあります。彼女をHead In The Clouds Foreverに招くことができ、まさに夢が実現しました」と語っている。

 J-POPのみならず、アジアンポップスのシーン全体を見渡しても“レジェンド”として位置づけられる存在である宇多田に、敬意を寄せるアジアのアーティストは少なくない。そのなかには、現在世界規模にまで市場を拡げているK-POPの第一線で活躍するクリエイターもいる。

 韓国の大手芸能事務所・SMエンターテインメントに所属し、BoA(00年デビュー)から東方神起、少女時代、EXO、Red Velvet、NCT 127、そしてaespa(20年デビュー)まで、長らくK-POPアーティストのプロデュースと作詞・作曲に携わり、いわゆる現行の“K-POPサウンド”の立役者の一人でもあるKENZIE氏。彼女はインタビューで、J-POPおよび宇多田が自身に与えた影響についてこうコメントしている。

「J-POPには独特な情緒や哀愁がありますよね。“J-POP”という言葉しか知らなかった私としては、音楽を知ってすごく驚きました。それでいろんなJ-POPを聴き出したら、J-POPの持つ旋律がすごく気に入ったので、この表現を韓国の音楽にも乗せたいと思うようになりました。だから私の初期の作品を聴けば、その旋律が表れていると思います。少女時代の<Into The New World>もそうですしね。聴いていたのは、2000年ごろの曲とそれ以前の曲ですから、宇多田ヒカルなどの影響はありますかね」(『ニュー・コリアン・ミュージック・ガイダンス』/音楽出版社より)

 この、KENZIE氏が語るところの「(J-POPの)独特な情緒や哀愁」が、現在も変わらず若年層の心も掴んでいることは、宇多田の「First Love」のリバイバルヒットを見ても、疑いようのないところだろう。

 最近では、90年代から00年代に流行したファッションや音楽を指す「Y2K(Year2000)」ブームが全世界的に勃興を見せている。

 K-POPシーンでも、98年にリリースされたガールズグループ・S.E.Sの代表曲「Dreams Come True」が新世代グループ・aespaによってアレンジカバーされたり、今年7月にデビューしたNewJeansのサウンドが90年代~00年代のシーンを彷彿とさせたりと、「ミレニアム時代」の再解釈が行われている。

 そんななか、90年代後半から00年代前半にアジアの人々の“青春”を形作った宇多田ヒカルが改めて“レジェンド”として評価され、より広く知れ渡っている現状は、ある意味自然なことと捉えられる。

 そしてもちろん、宇多田ヒカルの作品が偉大である理由は、過去作が表す「独特な情緒や哀愁」、遠い日を想うノスタルジアだけではない。アメリカの音楽メディア・ピッチフォークが発表した2022年のベストアルバム50枚・ベストシングル100枚には、宇多田の8thスタジオアルバム『BADモード』が31位、収録曲「Somewhere Near Marseilles」が10位にランクインするなど、最新作は英語圏の音楽的動向ともリンクし、世界中で高評価を得ている。

 宇多田ヒカルの楽曲は、まさに現在進行形でアジアの“青春”を更新し続けているとも言えるだろう。

 

菅原史稀(すがわら・しき)

編集者、ライター。1990年生まれ。webメディア等で執筆。映画、ポップカルチャーを文化人類学的観点から考察する。

最終更新:2023/01/02 08:00

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