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防衛利権とカジノで激震! 誰も知らない”ヤバい沖縄”読本(後編)

boueigigoku.jpg『防衛疑獄』講談社

前編はこちら。

 すなわち「浅瀬案」は、埋め立て利権が欲しい地元建設業界、その利権と絡みついた防衛施設庁、米軍再編協議の主導権を防衛庁から奪いたい外務省、新基地建設の既得権を侵されたくない米国――この四者の合作であるとの説が有力なのだ。

 端的に言って、最近よく見かける「沖縄利権」論には米国側の利権というファクターの抜け落ちたものが多い。その点、『防衛疑獄』は日本と同様に米国の側にも利権構造があることを明らかにした。また、普天間問題の着地点となった「沿岸V字滑走路」となるまでの過程で、元防衛長官らによる秘密会合があったという衝撃の事実が述べられている。

<二○○三年、私はワシントンの事務所で、安全保障議員協議会に属する数名の防衛庁長官経験者と米国防省高官の非公式会談をセッティングした。(中略)この会談での非公式提案のことは外務省も知らなかったし、守屋も知らなかった。(中略)真相は、私たちが「橋本・クリントン会談にこだわらない」という提案を出したことをアメリカは利用し、額賀防衛庁長官にV字滑走路案を持ち込んで、日本側の提案としてまとめさせているのだ>

 そもそも、戦後沖縄の利権構造は、駐留米軍が持ち込んだものと言っても過言ではないのだ。

●補助金漬けの沖縄に自立できる未来は……

 06年1月18日、野口英昭エイチ・エス証券副社長が那覇市内のカプセルホテルで怪死を遂げた後、週刊誌の誌面には、たとえば次のような論調があふれた。

<沖縄では小泉内閣が推進する構造改革特別区の「情報通信特区」や「金融特区」の地域が指定されてIT企業の進出が相次いでいる。ライブドアは小泉改革を利用して沖縄での”闇ビジネス”を拡大したとみられており、(中略)事件の背景には、小泉政権下でふくれあがった巨額のIT政治利権の存在がクローズアップされてくる>(「週刊ポスト」06年2月10日号/小学館)

 確かに、日本政府は米軍基地負担に対するインセンティブとして、各種「特区」を含むさまざまな振興策を沖縄に対して行ってきている。だが、それが「巨額のIT政治利権」を生んでいるなどというのは妄想にすぎない。

 『検証「沖縄問題」』では、振興策の本質を物語るメモが紹介されている。沖縄政策を司る内閣内政審議室から流出したものだという。

<「(1)沖縄新法は沖縄に対する政府のプレゼン【注:プレゼンス】みたいなもの、(2)沖縄にしてみれば政府がどれだけやってくれるかが関心事、(3)沖縄では地方分権の発想は評価されない、(4)新法が沖縄で利用されるかどうか、需要があるかどうかは、気にする必要はない、(5)法律を作るということは閣議でも決められた約束事。既存の制度に化粧をしただけの、名前だけの制度でもよい、(中略)安保関係者以外は、沖縄は全然重要ではないというのが本当のところ」>

 こんなやりとりの中で打ち出された「特区」など、しょせんは絵に描いた餅にすぎない。「沖縄利権」といえばやはり、政府から多額の補助のつく公共事業や、いわゆる「軍用地主」に支払われる借地料が本命なのだ。

 そして、公共事業依存型、財政依存型の経済構造に埋没した沖縄は、返還から36年が経過しながらも自立できずにいる。早い話が、「補助金漬け」なのだ。基地返還を叫びながら、返還後の土地利用計画を策定している自治体はひと握り。基地が返還されて軍用地料が入ってこなくなったら困る、という地主の思惑も、計画策定の足かせになっている。基地問題や経済問題で、いま沖縄に突きつけられているのは県民の「本気度」だと、『癒しの島、沖縄の真実』は喝破する。

●「沖縄=南の楽園」は人工的なイメージ演出

 はたして、沖縄は自立できるのか――その問いに対するひとつの答えとして持ち出されたのが「カジノ構想」だ。

 いま、沖縄経済のリーディング産業は観光である。入域客数(昨年589万人)は毎年のように過去最高を更新している。
それでも、沖縄の経済界には、「真の観光立県となるには切り札が欠けている」との認識が広がっている。「ナイトライフが貧弱で、客単価が伸びない」「青い空と海だけで売っていては、いずれバリ島やタイ、マレーシアに完敗する」といった懸念からだ。

 そこで、カジノ導入によって、コンベンション・ホールや各種レジャー施設を組み合わせた複合的な「ゲーミング・ワールド」を建設し、沖縄観光の弱点を克服する――これこそが、沖縄経済界のカジノ推進派が目指すところなのだ。しかし、実のところ、これには異論も多い。たとえば美しい自然と、人工の賭博施設とのアンバランスをどう調整するのか、といった指摘だ。

 しかしそもそも、多くの人々が沖縄に抱く「南の楽園像」自体が作られたものなのだ。それを丁寧に解き明かしたのが『沖縄イメージを旅する』である。その起点となったのは日本復帰記念イベントの沖縄国際海洋博覧会。西海岸沿いを走る国道58号線の路側帯に咲くハイビスカスやヤシの木も、沖縄の亜熱帯イメージ演出のために人工的に植えられたものだ。
 破壊の限りが尽くされた沖縄戦の後、沖縄には「米軍基地の島」「癒しの島」という2つの顔が作りつけられてきた。沖縄を知るためには、まずその表層をはぐことから始めなければならないのだ。
(取材・文=李策/「サイゾー」1月号より)

沖縄イメージを旅する

柳田國男から移住ブームまで。

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最終更新:2009/01/22 17:00
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