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※=外部スタッフ

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本

ドキュメンタリー監督・松江哲明の「こんなマンガで徹夜したい!」vol.01


この世でもっとも"熱い"マンガ、『宮本から君へ』を君は読んだか?

新井英樹の連載デビュー作『宮本か
ら君へ』(太田出版/ 各1,554円・
税込)。1991年から94年まで「週
刊モーニング」(講談社)で連載。
不器用で熱い新米営業マン・宮本浩
のあがき続ける日々が描かれている。

童貞の絶望と希望を描いた傑作ドキュメンタリー『童貞。をプロデュース』の監督・松江哲明。ディープなマンガ読みとしても知られる彼が、愛してやまないマンガたちを大いに語る──。

 かれこれ3年くらい前から「映画化したいマンガは?」と聞かれたら、速攻で『宮本から君へ』と答えている。そんな時、目の前にいるプロデューサー、もしくは取材者は一瞬止まって「はぁ」としか答えてくれないのだが、そのリアクションが原作を知らないからなのか、「無謀だろ」という意味なのかはわからない。

 そりゃ僕だって冷たい海に裸に入る宮本を、拓馬と宮本との対決を、靖子と宮本とのセックスを「そのまま」描けるなんて思っちゃいない。だからといってそれを避けては『宮本から君へ』を映像化する意味はない。わずかここまで200字ちょいで僕は5回も「宮本」と書いているが、本作の魅力は宮本浩に尽きる。暑苦しいドストレートな営業マン、宮本。全ての基準が「俺」の彼は、仕事も女もライバルも己が納得するまで突き進む。自己チューだけど自意識過剰ではない。自分をさらけ出すけど、そこには常に誰かがいる。自分探しは相手がいてこそわかるのだ。部屋にこもって見つかるかっての。人と向き合い、ぶつかり、壊れ、最終的に残った「何か」が自分らしさ、ではないのか。『宮本から君へ』は登場人物たちの絶叫と共にそんなことを教えてくれる。

 ハッキリ言って僕は、宮本浩はマンガ史上どころか映画、音楽、演劇、すべての表現物で一番熱い、と思う。僕はモノ作りをしていて『宮本から君へ』をスルーする人間を信用しない。好きになれ、なんて言わない。嫌いでもいい。ただ、「読んでるか?」と問いたい。こんなにも着火させるマンガを知らないから。マンガを読んで走りたくなる経験したことある?「あー面白かった、明日早いから寝なきゃ」なんて言ってる場合じゃない、「うぎゃー」と深夜の商店街をダッシュしたくなるような経験。僕はしたよ、チャリで。恋が、仕事が、ケンカが、出産がしたくなった。最後のは男だから無理けど、読んだ直後は子宮の頃の記憶が甦った。

 けど『宮本から君へ』は「マンガなんて面白ければいいじゃん」なんて人には(特に女子)にはウケが悪い。線が汚いとか絵がうるさいとかぬかしやがる。逆に「好きなマンガは?」と聞かれて「みや...」と発した瞬間に握手を求める人もいる。そのほとんどが男(しかもムサい)だったりするのだが、「共鳴してんなー」と思う。で、朝まで飲む。迷惑だってことはわかってる。けど語りたくなるのだ、「宮本」は。『ドラゴンボール』や『北斗の拳』を語る仲間を見つけるのは簡単だけど、そういないからね、本作は。悲しいけど。しかし『宮本から君へ』はタイトル通り、すべての「君」に向けて書かれたものだ。ストレートな問いかけに対しては直球で応えたい、と思う。

 だからこそ僕は映像化を企画する。「君へ」と宛てられた僕にできることは映画を撮ることだから。ただ劇映画、つまりドラマとして描くのではない。ドキュメンタリーとして、だ。宮本のような人間を捜し、マンガと同じような状況を作り、追い込み、その感情を記録する。原作の展開では、セックスの最中に金魚が死に「幸せと不幸せのバランス」を知ることになり、ラグビー部の怪物に「俺の女」をレイプされ、半殺しの目に遭い、遭わせ、遂には壮絶な自力出産と対面するのだが、そんな現場を「はい、よーいスタート」で作れるはずがない。思わず出てしまった射精も、金玉を潰すのも、「おお最高だ」と拳を握るのも、僕が見つけた宮本浩、彼のタイミングで発して欲しい。

 撮影スタートは原作同様、社会人としてはじめての夏。ここ最近、秋が近づくたびに「あぁ、また撮影の機会を逃してしまった」と後悔するのだが、今年こそは渋谷駅で宮本浩と出会いたい。きっと、いるはず。いないのなら、作る。そんな人間、いて欲しいもの。『宮本から君へ』を読むと人間の可能性について考えてしまう。そういう意味では、きっとアンサーとして描かれた『ボーイズ・オン・ザ・ラン』の花沢健吾氏が「聖書」と答えるのもよくわかる。

 『宮本から君へ』は今もこれからもヒトを刺激し続けるんだな、と確信している。


●松江哲明(まつえ・てつあき)
1977年、東京都立川市出身。99年、在日コリアンである自身の家族の肖像を綴ったドキュメンタリー『あんにょんキムチ』を発表。同作は国内外の映画祭に参加し、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、平成12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。また、07年に公開した『童貞。をプロデュース』が大きな話題を呼ぶ。新作『あんにょん由美香』『ライブテープ』が近日公開予定。
ブログhttp://d.hatena.ne.jp/matsue/


定本 宮本から君へ 1 (コミック)


火傷してみる。


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2009.04.28 火   はてなブックマーク BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク livedoor クリップ みんトピに投稿 newsing it! この記事をChoix! 友達に知らせる Twitter



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