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閉塞した出版業界の中で、掟破りのインディーズ・レーベルが勃興する!

minikomi_top.jpgジュンク堂書店新宿店「〈ミニコミ2.0〉~『誰でもメディア』時代の雑誌~」フェア

 沈没気味の出版業界を尻目に活気づいていて、自主制作雑誌「ミニコミ」が再び注目を集めている。

 折しも、ノンジャンル文芸誌と銘打つミニコミ『界遊』の編集部が、webサイト「STUDIO VOICE ONLINE」と連動で、いま注目のミニコミ4誌の関係者を集めて座談会を開催(STUDIO VOICE ONLINEにて先行公開中)。それを端緒として、〈ミニコミ2.0〉と銘打った企画を展開している。現在、ジュンク堂書店新宿店で「〈ミニコミ2.0〉~『誰でもメディア』時代の雑誌~」フェアが12月30日まで展開され、21日には宇野常寛氏と速水健朗氏による同タイトルのトークイベントも控えている。

 今、あえて雑誌メディアを展開するからには、明確なヴィジョンがあってのことなのだろう。上記トークイベントの司会も務める一連の〈ミニコミ2.0〉企画主催・『界遊』編集発行人の武田俊氏と、フェアを担当する「ジュンク堂新宿店にこの人あり」と謳われるカリスマ書店員・阪根正行氏が、出版業界の未来を占う!

阪根(以下阪) 現在、ジュンク堂新宿店で展開中の〈ミニコミ2.0〉フェアの棚の一番のコンセプトは、まずはミニコミというものを知ってもらうことにあります。STUDIO VOICE ONLINEで先行公開されている座談会に登場した方々の雑誌、『界遊』『HB』『PLANETS』『Review House』を中心として、それぞれの雑誌のカラーがうまく出るように4誌の関連書籍を展開し、加えて他にも質の高いミニコミ群を紹介しています。

takeda.jpg『界遊』編集発行人の武田俊氏

武田(以下武) ジュンク堂さんは常にさまざまな視点からフェアをされていて、今回のフェア自体、僕から阪根さんに話を持ちかけ、面白そうなのでやりましょうと快諾してくださったんですよね。

 (フェア決定に関して)うちは割と書店員個人の裁量に任されていますから。ジュンク堂と言えば「図書館」というイメージが強く、そのジュンク堂がフェアをどんどんやるのは意外と思われる節もあると思います。フェアは、ジュンク堂らしさである「図書館」機能をあくまでメインに据えながら、目先の利潤目的と離れたところでお客様の興味のない分野へのきっかけを与えるという位置づけなんですが、それには新刊本フェア一辺倒では頭打ちなので、何かしらの切り口をもって、出版に限らない他ジャンルへと誘える足がかりを作れればと思っています。

――フェアにある種のハブ機能を持たせるということですね。

 ただ、書店員の能力的にも限界があるんです。新刊で作家をフィーチャーすることも必要ですし、「本屋大賞」への賛否両論なんかもあると思うんですけれど、僕らはあくまで現場の感覚で動いています。書店員は作家さんとは違って一日8時間店に拘束されて、その間は本も読めない。本の知識も、学者や研究者さんのほうが詳しいに決まっています。だからそこと断絶するのではなく、編集者を介してでも書店と著者らが連携できる土台がもっと整備されれば良いと思うんです。

 書店員に著者自身の発想力や学者の知識をフィードバックするということですね。それは消費者的に見てもすごく健全なことだと思います。今、出版業界の流通面で課題があるとしたら、取次という旧来のシステムがあって、見計らいで配本されてくるため、書店員のアンテナが活かされず、その能力も相対的に下がってきている。都会では、審美眼を持つ書店員さんに認めてもらうことで、僕らは本を置いてもらっています。でも、僕が思うに、今は書き手が編集をしたり、メディアを自分で持つ側に回っているという状況にあります。だからこそ、生産者から現場である書店までが一続きに繋がれる状態が要請されてきています。

――その、書き手が自らメディアを持つ「今」の状況というのが、出版業界では「ミニコミ」という位置づけになるのでしょうか?

 そもそも、商業誌ではないインディペンデントのミニコミが隆盛したのは今が初めてではありません。僕がリアルタイムで知るところではないのですが、70~80年代に一度盛り上がりを見せ、多様なものが刊行されていました。しかし、2000年代以降、状況の変化が起こっています。技術面ではDTPソフトが安価になって誰でも簡単に使えるようになり、流通ではオンデマンド印刷所の台頭から印刷コストが下がって、より手軽に自分のメディアを持てるようになった。つまり、今回の企画で掲げた〈2.0〉というのは、端的に言えばバージョン・アップということになります。

sakane.jpgジュンク堂書店新宿店・阪根正行氏

 いわゆる商業誌と比較して、定期的に発行する体力はないかもしれないけれど、一冊一冊の内容を見ると結構うまいことできている。それこそ今までのミニコミのイメージは、手書きの貼り紙新聞の延長上のような感じだったんですが、今はみんなきちんと編集してイベントに合わせて発行したり、切り口を据えて誰かの取材をし、特集を組んで作れている。それを企業単位ではなく、団体単位でやれる人間がちゃんと出てきたというのは、現在の特徴かなと思っています。

――そうした状況を総じて、〈ミニコミ2.0〉と呼んでいるというわけですね。

 〈web2.0〉というのは、生産者と消費者の区分がなくなる流動性を指しています。似たような状況は出版界にも起きていて、それは先程述べた技術・流通面での変化にも起因しています。現状のように出版社が軒並み経営不振となった時に、作り手が僕らのようなミニコミに参入するというのは、当然の成り行きだと思うんです。つまり、あらゆる文脈で通用するようなマスメディアは成り立たなくなる。またコンテンツの強度一つ取っても、だんだん商業誌との差が埋まっていくのではないかと考えています。

――ある意味〈出版2.0〉とも言えるのかもしれませんが、武田さんは積極的にそうしたフラットな状況を望んでいるのでしょうか?

 現在の状況の自然の帰結として考えているので、期待とも違います。平らかな状況が訪れ、あらゆるものが肩を並べて乱立せざるを得ない時、そこでまた個々に閉じこもるのではなくて、それらを越境するハブメディアとしていかに機能させるかということを『界遊』では模索しています。好きなもの擁護を越えたところで、内閉でも連帯でもなく「外部」に手を伸ばす試みを体現しているものを〈ミニコミ2.0〉としたい。要は、読者に開かれているコンテンツか、そして作り手自身がどう振る舞えているかというところでもあると思うんです。

 そうですね。例えば、僕はもともと思想関係に興味がある人間なんですが、柄谷行人さんや浅田彰さんは確かに優秀で高度な理論を扱うけれど、実践感覚が少し欠けている部分もあります。つまり、自ら動いて自分の本一冊を売り込むことも容易ではない。そんな彼らがもし〈ミニコミ2.0〉のように書店をまわって自分の雑誌を売り込むところからキャリアをスタートしていたら、今とは違った姿になっていたかもしれない。逆に言えば、〈ミニコミ2.0〉の中から柄谷・浅田を超えるような人が出てくるかもしれないと思うんです。

 それは、シーンに向けて何かコトを起こそうと試みる時、基礎体力と編集力というものが必要になってきているということですよね。例えばTwitterを著名人も活用するようになっていますが、その使い方一つにしたって批評力、自分をパッケージングしてどう打っていくかということが問われているような気がします。自分をもプロデュースする力です。

――取材から編集、営業や宣伝、執筆も含めてすべてを切り盛りせざるを得ないミニコミでは全方位的な実践感覚を求められていると。

 一方で、これだけ出版不況と言われる中、同人誌即売会、例えばコミケの盛況ぶりは目を見張りますが、それだけでは内輪の「祭り」に過ぎない。ブログではなく本を作って、自分で出店してお客さんのリアルな反応も楽しんで売り上げも出して、じゃあ打ち上げだ、というノリももちろんあって良いと思います。でもそれだけではなく、イベントという祭りを越えて、その外の生活の場で波及力を高めようとする、日常空間において届けようとするものが〈ミニコミ2.0〉なのではないかと思うんです。祭りに参加する人は、そもそもシーンに興味があるわけで、本来的な意味で偶然に出会うということが不可能ですから。

――非日常の祭りではなく、日常の中に食い込んでいけるもの、ということですね。

 フェアはその意味では、きっかけとしてまずは日常に「祭り」を持ち込むという試みでもあるので、そこに今回の〈ミニコミ2.0〉フェアの意義があると思っています。

〈ミニコミ2.0〉STUDIO VOICE ONLINE×界遊(KAI-YOU)
<http://www.studiovoice.jp/kaiyou/minicomi/index.html>

●STUDIO VOICE ONLINE×界遊(KAI-YOU)連動企画
<ミニコミ2.0> ~「誰でもメディア」時代の雑誌~ トークイベント

ミニコミ2.0 ~「誰でもメディア」時代の雑誌~
速水健朗×宇野常寛 トークセッション

■2009年12月21日(月)18:30~20:00(最大延長20:30) 開場:18:00
■ジュンク堂書店新宿店8F喫茶スペース
http://www.junkudo.co.jp/newevent/evtalk-shinjyuku.html#20091221shinjuku
☆会場…8階喫茶コーナーにて。入場料1,000円(1ドリンクつき)
☆定員…50名
☆受付…7Fカウンターにて。電話予約も承ります。

STUDIO VOICE (スタジオ・ボイス) 2008年 07月号

ミニコミをスタジオボイス的にお洒落に特集しました。

amazon_associate_logo.jpg

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