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 >   > 「僕がやっていることは究極の無駄なのか?」世界中の奇妙なモノを集めた『奇界遺産』
『X51.ORG』主宰・佐藤健寿インタビュー

「僕がやっていることは究極の無駄なのか?」世界中の奇妙なモノを集めた『奇界遺産』

kikai01.jpgUFOやUMA、奇妙なモノを追って世界中を取材する、佐藤健寿氏

 超常現象を調査するサイト『X51.ORG』の主宰者であり、フォトグラファーの佐藤健寿氏が、5年の歳月をかけ、世界中の”奇妙なモノ”をまとめた写真集『奇界遺産』。一度見たら忘れられない表紙、漫☆画太郎氏との異色コラボレーションが話題のこの本は、発売と同時に売り切れ店が続出、すぐさま重版がかかるほどの人気ぶりである。

 長い間、芸術やオカルトというものに関わり続けてきた佐藤氏。確かにそれらは、好奇心を強く刺激するものだが、同時に素朴な疑問が頭から離れないのだという。

「これって、本当に必要なんだろうか?」

 人類最大の無駄なのか、はたまた人類最大の天賦なのか。遥かなる旅の中で彼は、その答えを見つけられたのだろうか。

――この表紙、すごいインパクトですよね。

kikai3s.jpg(c)Kenji Sato

佐藤健寿氏(以下、佐藤) ここ(ベトナム/スイ・ティエン公園)は2年くらい前からずっと行きたいと思っていたんです。すでにこの本の入稿が始まり、仮の表紙も決まっていたんですが、「やっぱり表紙はこれしかない!」と。そこでぽっかり空いた時期に、ここだけピンポイントで行ってきました。

――インパクトがあるといえば、この本の最初に紹介されている、世界で唯一の”洞窟の中にある村”、中国の中洞組もすごいですよね。

佐藤 中洞組は、この本の中でも群を抜いて不思議な場所でしたね。始めは現地の観光局に聞いても、「そんなところは知らない」「数年前になくなっているはず」と言われてしまって。中国人は見栄っ張りなところがあるから、正面から取材しようとすると、あんまりこういう場所を公にしたがらないんです。あとはラスコー然り、ヨーロッパのグロッタ(人工洞窟)然り、本全体のコンセプトのひとつが「洞窟」でもあるので、奇界への「入り口」として、この場所を最初に選びました。

――どの家屋にも屋根がないようですが、洞窟の中はどんな感じなんですか?

kikai3s.jpg(c)Kenji Sato

佐藤 中洞組がある貴州省は、年間を通してずっと雨が降っているようなところなんです。だから洞窟の中が一番生活しやすいんですよ。電気は一応あるんですが、基本はロウソク。洞窟選びの条件はそれこそ日本の住居選びと一緒で、南向きで日当たりがよいということでここが好まれているんです。入口が広くて、夕方の5、6時くらいでもかなり奥まで明るいんです。 政府がわざわざ洞窟の外に家を造って、洞窟から退去させようとしたんですが、「住みにくい」ってことで、結局みんな洞窟に戻っちゃった(笑)。

――なんだか地下王国みたいですね。さて、佐藤さんが運営されているサイト『X51.ORG』では、UFOや超常現象といった類のものを取り上げていますが、そういったオカルト的な意味で、とりわけ奇妙な場所を挙げるとすると?

佐藤 ミクロネシア連邦のナンマドール遺跡が面白かったですね。ポンペイ島の端っこにある海上遺跡なんですが、”呪われた遺跡”と言われているんです。

――ムー大陸の最有力候補地、とも言われている場所ですよね。実際、佐藤さんも呪われたんですか?

佐藤 はい。呪われました(笑)。ここは誰が作ったかも、どうやって作ったかも分からないんです。ナンマドールの秘密は限られた人の間でのみ口伝されるもので、文献を残すことが禁止されていたため、はっきりした歴史が残っていないんです。過去にここの発掘に携わった人がけっこう死んでいて、ツタンカーメンの墓みたいな感じなんですよね。まず、島に上陸すると「雷神が雨を降らす」という言い伝えがあるんですが、僕が島に入ったときも、突然スコールが降りだしたんです。それからカメラ2台で島の撮影をしたんですが、ホテルに帰ってから写真を見ようとしたら、一台がまず全部ダメになっていて、もう一台も、島に近づくまではちゃんと写っていたのに、上陸以降に撮った写真がぐちゃぐちゃに切り刻んで並べ替えたみたいになっていまして……。

――こ、怖い!

kikai3s.jpg(c)Kenji Sato

佐藤 フィルムならばともかく、デジタルじゃありえないんですが、島の上陸直前に撮った写真なんかは多重露光みたいになって、教会のような建物が薄く写っているものもあったんですよ。さすがに「なんだこれ!?」と鳥肌が立ちました。その後、この記事を雑誌に入稿するときに、僕のページの修正だけが、何度やっても反映されなくなってしまったんです。冗談めかして「呪いですかね~?」なんて言いながら編集の人と笑っていたら、他の雑誌でも二度、同じことが起こったんです。さらにその後、たまたま40年前にナンマドールに調査へ行った日本人の海洋学者の希少本を古書店で見つけて読んだんですが、その人もここで撮った写真が写っていなかったり、僕と同じように何度やっても原稿が入稿できなかった、ということが書いてあって、驚きました。ナンマドールはまったく管理されていなくて、古代そのままのジャングル。今も聖地ですし、本当にミステリアスな遺跡です。

――今回の『奇界遺産』ではどういう基準で、掲載するスポットを選ばれたんですか?

佐藤 マニアックさや誰も知らない場所ではなくて、自分が直感的に”おかしい場所”だと思うところを、これまで行った場所の中から選んでいます。強いて言えば、”ワケのわからないものが当たり前になっている場所”が好きなのかもしれません。それが唯一のコンセプトと言えばコンセプト。こっちから見ると狂ってるように見えるんですけど、当地の人々から見ればそれは当たり前だという。

――そういうワケの分からない場所を求めて旅をしている。

佐藤 結局、狂っているかどうかは常に相対的な問題なので、あくまで僕の視点から見ると、というところですが。

――「ここは来なきゃよかった」と、がっかりした場所もあるんですか?

佐藤 がっかりとは少し違うけれど、片道3時間くらいかけて行って、バーっと撮影して、終わった後に「何やってんだろう、俺」って思うことはしょっちゅうありますよ(笑)。この前もタイの北部の仏像がいっぱいあるすごい寺に行ったら、そこで野犬に追い回されて。藤原新也とかけっこういろんな人が言っているんですが、海外で一番怖いのは野犬なんですよ。泥棒や強盗は、一応話ができるじゃないですか? でも野犬は交渉の余地ゼロですから、一番怖いんです(笑)。最後は木の棒を振り回して追い払いましたが、そんな時にふと、「今頃俺の友達は日本で普通に仕事してるのに、俺は何やってんだろう」と(笑)。数時間かけて訪れても、ミイラ一体だけしかない侘びしい場所もたまにあるんですけど、そういうのは、もうマゾヒスティックな感覚で、「こんなものわざわざ撮りに来ている俺」、みたいな気分になることもあります。

――それがたまらない。

佐藤 何もないと逆に安心するというか……。昔、岡本太郎が沖縄の御嶽(うたき)を見て、「何もないことが素晴らしい!」と言っていたけれど、何もない場所というのが、本当は一番すごいんじゃないか、と。

sato_02.jpg

――逆に何もないことを期待して行くことも?

佐藤 いかにも観光地、といった雰囲気で、案内の看板がバンバン立っているとやっぱり萎えちゃうじゃないですか。ほったらかしのところに惹かれます。南米のアマゾンの遺跡とか、ナンマドールとかはその最たるもので。

――まえがきで、「現代のラスコー(の壁画)を探すべく旅に出た」とあります。今回の旅は佐藤さんにとって、無駄なものが徹底的に切り捨てられる現代において、今も絶えず「呪術的な想像力=究極の無駄」が生きているのではないか、という試論を検証する作業だったということですが、”ラスコー”に匹敵するようなものは見つかったんですか?

佐藤 どれが優劣というのはないんですが、みんな同じようなものなんじゃないかと思いますよね。3万年前は、岩に絵を描くというのが、人間に出来得る最大のことだったけれど、現代は技術があるからいろいろなものが造れる。けれどその根本的な衝動っていうのは、きっと一緒だと思うんです。それこそ珍寺でも古代遺跡でもオーパーツでも現代美術でも漫画でも何でも、アウトプットのされ方が違うだけで。(後世に)残る残らない、有名かそうでないか、というのは、そんなに重要だとは思いません。ラスコーに絵を描かせた想像力が今も生きている、というのが面白いんじゃないかと。

――奇妙なものは人間にとって必要だと?

佐藤 必要というか、本当は必然的にみんなが備えているものだと思います。この本で扱っているものは、すごく突拍子のないものに見えるかもしれませんが、実は誰の心の中にもある、すぐそこにある狂気というか。余計なことって、誰かれ生きていればするわけじゃないですか。仕事にして芸術にしても恋愛にしても、実はみんな余計なことばっかりして生きている。でも、かといって「無駄なモノこそ素晴らしい」とかそういうサブカル界隈にありがちなことを言うつもりも全くありません。強いて言えば、そもそも何が無駄かどうかという価値判断自体にずっと疑問がある。

――今後も奇界を探す旅は続くんですか?

佐藤 そうですね、昨年末にこの本の入稿が終わって、年明けからイタリア、タイと1カ月以上撮影に出ていて、既に次作の構想も考えています。できれば3部作くらいにしたいんです。今回は南米やアジア、ヨーロッパが中心で、アフリカなんてぜんぜん扱っていないですし。

――佐藤さんに影響されて、奇界遺産に行ってみたいと思っている読者も多いと思います。何かアドバイスはありますか?

佐藤 やっぱり死んだら終わりなので、無茶はしないことと、野犬に注意ってことですね。
(取材・文=編集部)

さとう・けんじ
「X51.ORG」主宰。UFOやUMA、奇妙な人・物・場所を追って世界中を取材する。フォトグラファーとしては雑誌やファッションまで手がけるなど、現在は多方面で活動中。著書に『X51.ORG THE ODYSSEY』(講談社)がある。

写真展『奇界遺産展』
東京・青山ブックセンター本店内・ギャラリー
2010年2月23日(火)~3月8日(月)/10:00~22:00(最終日は19:00まで)
3月7日・トークイベント開催予定(ゲスト未定)
<http://www.aoyamabc.co.jp/15/15_201002/20100223_kikaiisan.html>

奇界遺産
発売:エクスナレッジ 定価:3800円
206ページ フルカラー/ハードカバー
イラスト:漫☆画太郎
amazon_associate_logo.jpg

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