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本

「ミートホープ事件」の元常務がペンで叫ぶ「最後の告発」

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『告発は終わらない―ミートホープ
事件の真相』(長崎出版)

 産地偽装、賞味期限切れ商品の販売、細菌検査の数値改ざん、ネズミが食べた肉の販売、牛の血で着色した饅頭を肉に混入etc......。2007年に発覚した北海道苫小牧市の食肉加工販売会社「ミートホープ」の食品偽装事件は、まさに常軌を逸していた。豚を牛と偽って売るのはまだ序の口。肉の量を増すためにリンパや血管、中国産のウサギ、羊肉、鴨肉、くずパンまでを日常的に混入して売っていたという。

 事件が発覚したのは、当時常務だった赤羽氏による内部告発から。しかし、真相が明るみに出るまでに数々の"行政の壁"が立ちはだかることになる。

 最初のリークは95年頃。卸し先の一つである学校給食センターに赤羽氏が匿名で電話し、「今日卸した豚肉は国産と偽っているが実は外国産だ」「ミンチも水増しされている。ベタベタしてるのが証拠だ」などと説明した。しかし、何度電話しても、対応したセンター長は「分かりました」と言うだけ。給食センター長は市役所からの天下りポスト。揉めごとを嫌った結果だった。

 保健所にも電話してみたが結果は同じ。匿名の限界を感じた赤羽氏は、ついに実名で告発する決意を固める。06年4月、農水省北海道農政事務所へ赴き、地域第九課の食品指導担当係長と面接。「ミートホープ常務の赤羽です」と名刺を出しながら事情を話した。しかし、刺し違える覚悟で実名告発した赤羽氏に返ってきたのは、「あなたが混ぜたのかもしれない」「所在不明のものは受けとれない」という信じ難い返事だった。その後も何度か押しかけたが、農政事務所の対応は変わらなかった。

 メディアを頼って地元の北海道新聞(以下、道新)とNHKに情報提供したが、両社ともこれを黙殺。特に道新は「こんなものは記事にならない」と、にべもなかった。打つ手がなくなった赤羽氏が全国紙や民放テレビ局などに告発状を書いたところ、朝日新聞がこれに反応。結果、07年6月に朝日が一面に「コロッケに偽ミンチ」という記事を掲載。これをきっかけに偽装事件はようやく公になり、ワイドショーまでが参戦する大スキャンダルへ発展。最初のリークから実に十数年が経過していた。無視したはずの道新は担当デスクが男泣きで謝罪に駆けつけたが、NHKは第一報をローカルニュースで流しただけ。その後も会見には顔を出すが一切報道しないという日が続き、強制捜査が入った発覚5日目に、ようやくトップニュースで流した。

 企業の倫理観の欠如、行政の怠慢と隠蔽体質、公共放送の官僚主義......。「ミートホープ事件」の深層には、日本社会に巣食う構造的な問題が数多く潜んでいる。今回、一連の騒動を、『告発は終わらない ミートホープ事件の真相』(長崎出版)という一冊の本にまとめた赤羽氏に、今の想いを聞いた。

──今回本を出そうと決めた理由をお聞かせ下さい。

赤羽 今までも事件は断片的に報道されてきましたが、問題の本質が必ずしも充分に理解されていない。事件が風化する前にまとめておきたかったという気持ちです。

──事件の本質とはなんでしょうか。

赤羽 一民間企業の不祥事による事件ではありますが、そうした事実を知りながらも放置してきた行政機関の責任は重大です。彼らが的確に対応してさえいれば、会社を潰して従業員を路頭に迷わすことをせずに、経営者も刷新して立ち直ることだってできたかもしれない。

──農水省は門前払いしたことを赤羽さんに謝罪したのですか。

赤羽 ひとこともない。当時の対応に対する説明を求めに何度か押しかけましたが、一切何も答えずに黙って聞いているだけの日もありました。それでもメディアから叩かれて検証チームを立ち上げたようなんですが、私が06年に最初に農政事務所へ肉を持ち込んだ記録がどこにもないんです。

──え? でも、検証チームというのは、赤羽さんがサンプル肉を持ち込んだのに門前払いをしたという経緯の検証ですよね?

赤羽 そのはずです。「ミートホープ社常務と名乗る者が訪問して情報提供をした」とまでは認めているんですが「肉を持ち込んだという事実は確認できなかった」というオチをつけてる。「職員全員に聞いたが確認がとれなかった」と調査をまとめているんですよ。実際には私、その日に2回持ち込んでいるんですがね。

──赤羽さんが肉を持ち込んだ事実は、なかったことにされてしまっているのですか? 農政事務所は肉なんか見ていないと?

赤羽 そういう話にされています。しかも経緯検証するなら、当然、当事者である私に事実確認をしてしかるべきじゃないですか。一切何の連絡もない。たまたまアポなしで行ったら教えられただけで。「なんで連絡くれなかったのか」と聞くと「インターネットでも公開している」と。

──ひとことの謝罪もなく、ネットで勝手に見ろということですか。

赤羽 社長は罪を問われて牢屋に入った。社員は会社が潰れて全員解雇。私の妻も告発自体を「世間の恥だからやめてくれ」と反対していて、今は別居状態です。妻の親類からは「親族の恥」と言われました。実は私自身もウツで通院しています。みんな裁きを受けたり、苦しんだりしている。それなのに、偽装がはびこる土壌を放置してきた行政だけが何も罪を問われていない。基本的な解決がされているのかという疑問を強く持たざるをえません。

──振り返ってみて、告発を後悔していますか。

赤羽 重要なことは、私自身が不正を知りながら常務としてその肉を売ってきました。その罪を忘れたことはありませんし、告発自体も正義感というよりは保身なんです。発覚する前に告発しないと、私自身が逮捕されるという恐怖感があった。その結果、多くの社員を路頭に迷わせてしまった。そのことは告発者として一生背負っていくつもりです。そのうえで問題の本質がどこにあるのかを、多くの人に考えていただきたいというのが正直な気持ちです。
(文=浮島さとし)


告発は終わらない―ミートホープ事件の真相


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2010.03.15 月   はてなブックマーク BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク livedoor クリップ みんトピに投稿 newsing it! この記事をChoix! 友達に知らせる Twitter



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