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老人が若者の未来を奪う!? 『嫌韓流』の山野車輪が『若者奴隷時代』で唱える新たな対立軸

yamano.jpg衝撃の問題作を発表した山野車輪氏。

 「横暴かつ傲慢な新老人・暴走老人という害悪」「モンスター・シルバーの出現」「ジジババを殺らなきゃオレたちはこのままなのか!?」──ショッキングな見出しが躍るブ厚い漫画本。表紙には、憎々しげな表情の高齢者と、奴隷のように鎖でつながれた若い男女。漫画家・山野車輪が描いた『「若者奴隷」時代』(晋遊舎)が話題になっている。

 山野車輪と言えば、社会問題にまでなった『マンガ嫌韓流』(同)の作者。日韓問題について韓国を激しく批判的に描いて話題になり、当の韓国でも大手メディアが大々的に報じ、ネット上では作品に基づく論戦が連日激しく繰り返された。

 そんな山野氏が今回テーマに挙げたのは、保守対リベラルによる左右対立ならぬ、高齢者と若者世代による「上下対立」だ。日本では手厚すぎる高齢者福祉の弊害で現役世代が苦しめられているとし、昨今耳にする「格差社会」の正体が、実は高齢者と若者の間にある「世代間格差」であると説いているのだ。

 しかしながら、老人福祉については今後益々公費を投入して制度の充実化を図らなければならないというのが、どちらかと言えば一般的な社会認識。『「若者奴隷」時代』は時代に逆行した暴論なのか? 今なぜこのテーマなのか? 作者の山野氏に聞いた。

──そもそもこの本を書こうと考えたきっかけは。

山野車輪氏(以下、山野) もともとは一般的な「格差社会」について描こうと、雇用情勢や賃金などの日本の労働市場の実態について調べていたんです。調べるうちに、現役世代が苦しんでいる一方で、高齢者が手厚く守られすぎている構図が見えてきた。若者の厳しい現状など関係なく、高齢者は年金を受け取り、人生を謳歌している。その実態に非常に違和感があったんですね。実は「格差」とは富裕層と貧困層ではなく、世代間にこそ存在するのだと。

──そういうことを言うと「年寄りを批判するのはけしからん」という声がきませんか?

山野 これまで若者論は多く語られてきましたが、高齢者についてはほとんど正面から論じられてきませんでした。今や5人に一人が高齢者であるにも関わらず、です。あっても「お年寄りは弱者」とステレオタイプに決めつける歪んだ認識ばかりです。しかし、高齢者優遇と若者冷遇を続けてきた結果、若者は家庭を持つという人並みの幸せさえも享受できない時代になってしまった。明らかに「若者奴隷」の時代なんです。そのことに多くの国民は気づいていない。

──「高齢者福祉の否定だ」という批判意見に対しては?

山野 高齢者は「弱者」だからとにかく否定してはいけない、否定すると即高齢者差別である、とする風潮は非常に問題があると思います。現在の高齢者を時代の中での大きな塊として冷静に見ると、若者や未来の子どもたち世代と比較して裕福な世代であると言わざるを得ない。他の世代の富をむさぼって長生きができている。一方で若者や将来世代は上の世代から富を奪われるばかりで、他の世代からの所得移転もない。現在も、おそらく将来的にも福祉の恩恵にあずかれないでしょう。こうした制度で本当にいいのかということを、全世代で議論すべきときにきています。 若者は、上の世代から世代間闘争を仕掛けられている以上、争いを避けるのではなく、露払いをすべきなのです。

──昨年の夏にホリエモンこと堀江貴文氏が、「若者を捨てない政治」の方法論として、年金に代わる新しい社会福祉制度「ベーシックインカム(最低限所得保障)」の導入を唱えました。これは、年金制度を廃止して公務員をなくし、そのお金ですべての国民に8万円前後の一定金額を給付するというものです。

山野 僕は一つの考え方だと思います。一人あたり支給額8万円はともかく、5万円としても、日本人の人口1億2,000万人として60兆円の財源があれば可能です。現在、年金制度に47兆円、公務員の人件費に30兆円が使われていますから、公務員の賃金を半分に減らして15兆円浮かせば、それだけで62兆円捻出できます。もちろん机上の計算ですが、「とても無理!」という話ではないわけです。最低限の安心は確保しつつ、より豊かな生活を営みたければ働けばいいという考え方ですね。

──『若者奴隷時代』の反響はどうでしょう。賛否どちらが多いですか。

山野 実感としては真っ二つに割れている感じです。若い層からも「年寄りを批判するとはけしからん」という批判がきますし。「まずは自分の親を撲殺してから言え」なんていう過激な批判もありました。

──読売テレビの『たかじんのそこまで言って委員会』では講師として出演されたそうですが。

山野 収録中、緊張しすぎてずっと地に足つきませんでした(笑)。私はテレビに出演したことがないどころか、人前で公演をしたことすらなかったんです。そんな私が、関東圏以外全国放送の超優良視聴率番組で、講師として話さなければならないというトンデモな話なんですよ。最初はテレビ慣れするために、コメンテーターの一人とか、地方の番組とかの慣らし運転でもできればよかったんですけど……。無茶と言えば無茶な話なんですが、逃げずにやらなければと思い、出演してみました。パネラーの皆さんは予想に反して優しかったですよ。

──率直に申し上げて、よくこの企画が通りましたね(笑)。取次店がよくウンと言ったなと……。

山野 版元は「こんなの売れない」と、全然乗り気じゃなかったです。部数もそうとう絞られました。他に高齢者批判本がないので、出版データがないんですね。しかも、高齢者批判は日本人のメンタリティに反しますし、若者層もいずれは自分が高齢者になるから批判しづらい。批判すると即、「差別者」のレッテルを貼られる。だから売れないだろうと。

──今、高齢者層に対して仰りたいことはありますか。

山野 自分たちのことは自分たちでがんばってほしい。「年をとったら若い者が面倒見てくれる」と甘えてばかりでなく、自己責任でやってもらいたいですね。そして、未来ある子孫の幸せを多少なりとも考えてほしい。それが率直な思いです。
(文=浮島さとし)

※山野氏が『若者奴隷時代』について語っている動画はこちらで見ることができます。
<http://www.ustream.tv/recorded/6403745?lang=ja_JP>

「若者奴隷」時代 “若肉老食(パラサイトシルバー)”社会の到来

老子もあの世でびっくりです。

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最終更新:2010/06/24 15:00
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