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M・スコセッシからS・スピルバーグまで! 2012年上半期の注目作

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(C)Paramount Pictures 2011

 来春のアカデミー賞に向けて本格的な賞レースシーズンに入ったハリウッド。全米各地の映画賞やマスコミの年間ベスト10が続々と発表される中、大きな注目を集め、ヒットが期待される2012年前半イチオシの話題作3本をご紹介。

 まず1本目は、『ヒューゴの不思議な発明』。巨匠マーティン・スコセッシが童心に返って撮りあげた心温まる3Dアドベンチャードラマ。舞台は1930年代のパリ。駅の時計台に隠れ住む孤児の少年ヒューゴは謎の少女イザベラとともに、父親が残したからくり人形の秘密を探り始める。その探求の旅の中で、2人は映画の始祖ジョルジュ・メリエスの知られざる人生と向き合うことになる。

 ここ20年、『タクシードライバー』(76)『レイジング・ブル』(80)『グッドフェローズ』(90)という3大傑作のバイオレントなセルフイメージに囚われていたスコセッシが完全に自己を解放し、「映画愛」を高らかに謳(うた)い上げた本作。メリエス、リュミエール兄弟といった映画メディア草創期の巨人たちへのオマージュや、やがて消え去るフィルムへの憧憬など、世界中の誰よりも映画を見ている映画監督といわれているスコセッシによる贅沢な映画史講座という側面もあるが、それ以上に心を揺り動かす一級のエンターテインメント作品として仕上がっている。「誰も見たことのない、まったく新しいスコセッシ映画」という惹句がふさわしい、映画ファン必見の一作だ。

 2本目はジョージ・クルーニー主演の『ファミリー・ツリー』。『アバウト・シュミット』(02)『サイドウェイ』(04)のアレクサンダー・ペイン監督、7年ぶりの新作はハワイが舞台。最愛の妻エリザベスが突然のボート事故に遭い昏睡状態になり、仕事一辺倒だった弁護士マット(クルーニー)は、17歳と10歳の2人の娘の面倒を見なくてはならなくなる。久しぶりに娘たちと向き合うマットだったが、長女から「エリザベスが浮気していて、マットとは離婚するつもりだった」と衝撃の事実を打ち明けられ、狼狽。マットは娘2人とともにエリザベスの浮気相手を探し始めるが……。

 表向きは滑稽な動きとシチュエーションで展開する、相変わらずのペイン映画だが、今回は「人間にとっての本当の豊かさとは?」「次世代へ伝えるべき大切なものとは何なのか?」という真剣な考察が作品の根底に横たわっており、ただの良質なオフビート・コメディにとどまらず、ひとまわりスケールの大きな映画となっている。とくに人生の喜び、哀しみ、苦みが渾然一体となったかのようなエンディングは近年のハリウッド映画では出色のでき栄え。一見ごくシンプルだが、得も言われぬ深さを感じさせられる。人生を見つめ直すには打ってつけの映画かもしれない。

 そして最後は、ハリウッドの帝王スティーブン・スピルバーグ監督の最新作『戦火の馬』。第1次世界大戦に参戦した兵士の体験を基にした同名小説をスピルバーグが惚れ込み自ら映画化。ジョン・フォード(『捜索者』、1956)、デビッド・リーン(『アラビアのロレンス』、1962)、スタンリー・キューブリック(『突撃』、1957)ら映画最盛期の巨匠たちへのオマージュを散りばめつつ、戦火のヨーロッパを駆け抜けた一頭の馬の旅路を『フォレスト・ガンプ』(1985)風に描く一大叙事詩になっている。映像美の極致とでもいうべき完璧な撮影と奇跡の物語の見事な融合が観る者の心を震わせる。映画と馬の相性の良さを知り尽くしたスピルバーグが放つ渾身の感動作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・藤井竜太朗)

『ヒューゴの不思議な発明』作品情報
<http://eiga.com/movie/56064/>

『ファミリー・ツリー』作品情報
<http://eiga.com/movie/57144/>

『戦火の馬』作品情報
<http://eiga.com/movie/55976/>

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去年のアカデミー賞といえば。

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最終更新:2012/01/01 13:49
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