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アカデミー賞12部門でノミネート 世界が注目する話題作『英国王のスピーチ』

m0000000633.jpg『英国王のスピーチ』(C)2010 See-Saw Films. All rights reserved.

 当人にとっては人生を左右する深刻な状況が、はたから見るとおかしくてつい笑ってしまう。そんな少々屈折した笑いの要素を巧みに盛り込み、ドラマに仕立てた新作映画2本が2月26日にそろって公開される。

 『英国王のスピーチ』は、まもなく発表されるアカデミー賞に最多12部門でノミネートされ、現在最も注目される話題作。現イギリス女王エリザベス2世の父で「英国史上最も内気な国王」と呼ばれたジョージ6世と、あるスピーチ矯正専門家の交流を描く物語だ。

 第1次世界大戦後の英国。国王の次男ジョージは吃音障害に苦しんでいた。そして、妻が見つけてきたオーストラリア人ライオネルのもとで、吃音を克服すべく訓練を開始する。まず、ジェフリー・ラッシュ演じる型破りの言語トレーナー、ライオネルがユニーク。平民だが、権威に臆することなくジョージと対等の立場で治療に臨み、その心に隠されたコンプレックスを解きほぐそうとする。対するジョージ役のコリン・ファースの演技も見事の一言。途切れてしまう言葉と苦悩の表情に観客は心を痛めながらも、あの手この手のトレーニングに大真面目に取り組む姿に思わず吹き出し、大一番のスピーチではハラハラドキドキしながら心の中で「がんばれ、がんばれ!」と応援したくなるはず。悩みを抱えている人、現状に壁を感じている人に特におすすめしたい、温かな感動と勇気をもらえる傑作だ。

 もう1本の『シリアスマン』は、『ノーカントリー』でアカデミー賞4部門を獲得したジョエル&イーサン・コーエン監督が放つ異色作。降って湧いたような不幸の数々に翻弄される男の運命を描くブラックコメディだ。

 1967年のアメリカ中西部。ユダヤ人コミュニティーに暮らす物理学教授のラリーは、真面目だけが取り柄のような男。ひたすら平凡な人生を歩んできたが、ある日妻から突然離婚を切り出される。大学では落第生と、また自宅では隣人との間に、厄介なトラブルが続く。持病がある中年ニートの兄に居候され、妻や娘からは疎まれている。次々に降りかかる災難に困り果てたラリーは、ユダヤ教指導者のラビに助言を求める。個々のトラブルはありがちなものだが、それらが連鎖して真面目なラリーをじわじわと追いつめていく様はなんともシュール。同情を誘う主人公の困惑ぶりもひたすらおかしいが、冒頭と中盤に挿入されたオチが不明瞭な小話、驚天動地の結末という唐突さがやはり笑いを誘う。

 まさに人間劇の”王道”を行く「英国王のスピーチ」と、起承転結や因果応報といった定型を拒む不条理劇の「シリアスマン」。好対照な2作品を見比べるのも一興だ。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)

「英国王のスピーチ」作品情報
<http://eiga.com/movie/55750/>

「シリアスマン」作品情報
<http://eiga.com/movie/55320/>

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最終更新:2011/02/26 11:00
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