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 >   > 日本映画界期待の新鋭・石井裕也監督「今の時代は、面白いだけじゃダメ」
『川の底からこんにちは』DVD発売記念インタビュー

日本映画界期待の新鋭・石井裕也監督「今の時代は、面白いだけじゃダメ」

IMG_1448.jpg1983年生まれの石井裕也監督。
「”中の下”って、バブル以降に育ったボクらの世代に共通する意識。
思った以上に、共感してくれた人が多かった」

 上がる上がるよ消費税、金持ちの友達一人もいない 来るなら来てみろ大不況、そのときゃ政府を倒すまで 倒せ倒せ政府~♪

 シジミ工場の社歌とは到底思えない、アナーキーかつ本音むきだしな歌詞で各地の劇場で爆笑を呼んだ石井裕也監督の商業デビュー作『川の底からこんにちは』。劇中でヒロインが口にする「どうせ、中の下ですから」という台詞は、長引く不況にあえぐ今の日本社会の気分とマッチして、本作はスマッシュヒットに。現在28歳の石井監督は本作で「第53回ブルーリボン賞」監督賞を最年少で受賞。さらに、昨年10月にはヒロインを演じた満島ひかりとの入籍を発表したことでも話題を呼んだ。2月26日(土)に『川の底からこんにちは』がDVDリリースされるのを記念して、日本映画界期待の石井監督が日刊サイゾーに登場。気になるあのことも聞いちゃいました。

――石井監督、この度は入籍に受賞、おめでとうございます!

石井裕也監督(以下、石井) ありがとうございます。

IMG_1480.jpg石井裕也監督の作品では”疑似家族”が描かれる
ことが多い。「ボクは血の繋がりはさほど気に
しない。でも、人と人との繋がりには興味が
ありますね」。

――大阪芸術大学の卒業制作『剥き出しにっぽん』(05)がPFFグランプリを受賞して注目されていた石井監督にとって、『川の底からこんにちは』は念願の商業デビュー作。PFFスカラシップ作品として、企画をプレゼンして製作費を獲得したわけですね。

石井 そうです。ボクの場合は、企画書ではなく、完成した脚本をプロデューサーに読んでもらったんですが、最初の脚本はお蔵入りしました(苦笑)。どん底状態の主人公が開き直ってスゴ味を発揮するというストーリーは『川の底――』と同じだったんですが、最初の脚本では39歳のグラビアアイドルが主人公で、かなりヤバい人という設定でした。生理的にエグい描写もあり、プロデューサーから「これはヤメてくれ」とダメ出しされましたね。けっこう時間をかけて書いた脚本でしたが、今考えるとお蔵入りして良かったと思います(笑)。その後、主人公が男になったり、女になったりして、今の形に収まったんです。

――39歳のグラビアアイドルのサバイバルものとは強烈ですね(笑)。”中の下”というモチーフは最初からあったんですか?

石井 いえ、最初は考えていませんでした。その後、東京で派遣OLやっていたヒロインが故郷でシジミ工場を建て直すというストーリーに落ち着いたんですが、脚本を書きながらプロデューサーと「何かが足りないよね」という話になったんです。「今は面白いだけじゃ勝てない時代だよね」「面白さに、+αが必要じゃない」と。そこで、すでにヒロインの「私、中の下ですから」という台詞は脚本に書いていたので、これじゃないかと。「これをフックにしていけば、ただの面白いだけの作品じゃなくて、もうひとつ上のステージに行けるんじゃないか」と話したんです。それから”中の下”という価値観を前面に押し出した形ですね。プロデューサーからの指摘は重要でした。

――これまでも独特なパワーとテイストを放っていた石井作品を、より際立たせたのがヒロイン・佐和子役の満島ひかりさん。おふたりの出会いは?

石井 最初は、この作品の顔合わせですね。主演俳優のキャスティングはプロデューサーに頼んでいたんです。それでプロデューサーから「この人、主演にするから」と言われ、じゃあ一度会おうと。

――初対面の場で満島さんから「私を使わないと後悔しますよ」と言われたそうですね?

kawasoko_main.jpg流れに流されて生きてきた佐和子(満島ひかり)
は父の入院をきっかけに、倒産寸前のシジミ
工場を継ぐことを決意。ひと癖ふた癖ある従業
員たちを束ねられるか?

石井 はい、言われました(笑)。顔合わせの席は、ちょっとお互いにケンカ腰でしたね。いや、ケンカ腰という表現は良くないなぁ(苦笑)。でも、まぁ、フツーじゃねぇなぁと。他の作品でも俳優と顔合わせしましたけど、フツーは初対面から、そういう暴挙に走る人はいませんよね。さすがに、開口一番の言葉が「後悔しますよ」じゃないです。それじゃあ、まんまドラマですよ(笑)。

――日刊サイゾーでも『愛のむきだし』(09)で満島さんをインタビューしましたが(参照記事)、非常にユニークな方ですね。いつも、あんな感じなんですか?

石井 いや、逆にボクは取材の場で彼女がどんな感じなのかは知りませんから(笑)。

●石井作品はコンテなし、カット割りもなし!

――ヒロイン・佐和子を演じた満島さんの「中の下ですから」とつぶやく前半のイケてない感じから、社歌をきっかけにシジミ工場を建て直そうとする開き直りぶりへの跳躍がお見事。前半のダメダメ感を漂わせている細かい仕草は、石井監督の演出?

石井 そうですね。前半のキャラクターづくりに関しては細かく演出しました。後半のブチ切れ演技は彼女が得意なことは分かっていたので、東京でのOL生活を前半に撮影して、彼女のテンションをなるべく抑えるように細かく演出しました。逆に後半は、演出はラフなものにしています。前半と後半で演出の仕方は変えましたね。前半抑えていた彼女が後半に感情を爆発させるシーンは、狙い通りに行ったと思います。でも、彼女が開き直る朝礼の場面はこの作品のキモになるものだったので、うまく撮影できるかどうかものすごく心配で、怖くて怖くてたまらなかったんです。

――満島さんはハードルとなるシーンを鮮やかにクリアして、石井監督の期待に応えてみせたわけですね。佐和子がやる気のない従業員たちに啖呵を切る朝礼シーンは名場面ですが、必ずしも石井監督のイメージの通りではないんでしょうか?

石井 もちろん違います。でも、自分のイメージを強要するのは違うとボクは思うんです。映画って、やっぱりみんなで作るものですから。ボクのイメージと違うから、ここはこう直してくれと言うのは違うんじゃないか。こうした方がもっと面白くなるから、こうしてくれという言い方ですね。ボクはコンテを描かないし、カットも割らないし、脚本の読み合わせもしない。とりあえず、現場に行ってから1回やってみようと。そこから、「あぁ、やっぱりダメか」と悩みながら、細かく細かく撮り直して、現場でできるMAX状態に持っていくんです。朝礼のシーン、ボクはすんなりと2テイクぐらいで撮り終えたつもりだったんですが、DVDの特典のメイキング映像を見ていたら、かなりテイク数を重ねているのが分かって、自分でも驚きました。あんまり細かくテイクし直しているので、彼女(満島ひかり)は退屈しかかってましたね(苦笑)。

kawanosoko_sub2.jpg叔父さん(岩松了)から連絡をもらい、5年
ぶりに故郷に帰ってきた佐和子(満島ひかり)。
工場の跡取りと知り、バツイチ子持ちの恋人
(遠藤雅)が強引に付いてきた。

――DVDの特典映像も要チェックですね。石井監督が作詞した「木村水産 新社歌」が大変なインパクト。あの社歌はどのようにして生まれたんですか?

石井 普段はダメな人たちが一生懸命になる姿を描きたかったんです。ボクとしては有意義なことを一生懸命やるよりも、どうでもいいことを懸命にやることのほうが尊いように思えるんです。歌詞はすんなり書けました。歌詞の内容が反体制的であるとも言われましたが、ボクとしてはもちろん風刺的な意味合いはありますが、ナンセンスの範疇に入るものだと思っています。意味のないことをみんなが集まって、熱中していることが感動を呼ぶんじゃないでしょうか(笑)。個人的に社歌とか校歌とかって好きなんです。無意味なものが好き。それに映画なら、歌ったり踊ったりしたほうがいいなと。楽しいじゃないですか。まぁ、下手にやると映画そのものを壊してしまうので、あの社歌がギリギリのレベルだったと思います。あの社歌に振り付けを入れたらアウトだったでしょうね。

●シンボルとしての汚物、そして疑似家族について

――無意味なことへの情熱が感動を呼ぶ、ですか。石井監督の作品と言えば、『剥き出しにっぽん』もそうでしたが、肥だめやウンコがよく出てきますよね。

石井 はい(笑)。自主制作時代のボクの作品に出てきたウンコは、すべて小児趣味的なものでしたね(苦笑)。海外の映画祭などでも、記者会見や質疑応答などで、「お前の作品に出てくるウンコにはどんな意味があるんだ?」とよく訊かれます。そのときは、まぁ、ボクもマジメに答えるようにしているんですが、さすがにもう短絡的にウンコを出すことはやめようと考えています(笑)。でも、今回の場合は、小輪廻というか、湖とシジミの関係、人間の生と死の関係を含めて、すべては循環しているという意味付けがあったんですけどね。ある種、人の嫌悪感を煽るウンコをまき散らしながらも、ひとつの希望に結実する物語を思い付き、これで行けるなと思ったんです。言葉を換えれば、クソみたいな世の中にも、ほんのちょっとした希望を見つけることができる映画にしたかったんです。

――自主制作時代は無意味にウンコを出していたけど、商業作品ではきちんと辻褄のあったウンコを出すようになったわけですか。

石井 そうです(笑)。普段は目を背ける人間の汚い部分に目を向けることで、それでも”人間って、やっぱりいいじゃん”と思えるものにしたかったんです。ウンコは言わば、そういう人間の汚い部分のメタファーですね。今回はうまくシンボルになったと思います。でも、まぁ、もういい加減、汚物ネタは本当にやめようと思います(笑)。

――でも、そういう泥臭さ、人間臭さは、熊切和嘉監督や山下敦弘監督らを輩出した大阪芸術大学出身者のいわば芸風でもありますよね?

石井 そうですね。ボクは熊切監督や山下監督のことは知らずに大阪芸術大学に入ったんですけどね。でも、ボクに”ダイゲイ論”を語らせると、ウルサイですよ(笑)。大阪芸術大学のある南大阪って、遊ぶ場所がなくて、物づくりに励むしかないんですよ。また、地理的に閉鎖的なこともあり、縦の繋がりが強くて、校風というか”ダイゲイ精神”みたいなものが脈々と受け継がれているのは確かですね。それに大学の近くの街で16mmカメラを回していたら、外部の人間が見たら似たような作品にどうしてもなってしまう。ちょっと退廃的でブルージーな感じになるんです(苦笑)。

kawanosoko_sub3.jpg工場の経営だけでなく、父親の忠男(志賀
廣太郎)の看病や血の繋がらない加代子の世話
にも追われる佐和子だが、逆に忠男や加代子
に励まされている自分に気づく。

――なるほど。もう少し、石井監督の作風について聞かせてください。『川の底――』のヒロイン・佐和子は寄る辺なき存在から、疑似家族、そして最後には拡大家族の中心へと成長していきます。石井監督の作品は、駆け落ちや血の繋がらない人たちが疑似家族を形成していく物語が多いように思いますが……。

石井 ボクは昔から幼友達や同級生たちでグループを作っちゃうんです。けっこう家族的な繋がりを持つグループで、誰かが他のヤツにバカにされたら、みんなでやり返しに行くみたいな感じなんですよ。ボクが子どもの頃に母親が亡くなり、片親で育ったというのがあるのかもしれません。「石井は疑似家族を作ろうとしているんじゃないか」と友人に指摘されたことがあって、それって当たっているかもしれないなと思いましたね。自分では自分のことを分析したりしないので、自分のことは分からないもの。映画の中でも無意識に描いているのかも知れません。家族の在り方を問う、みたいなことは考えてないですけど、人と人の繋がりに興味あるのは確かですね。駆け落ちに関しては、2つ興味があるんです。1つは駆け落ちに失敗してしまった人に興味が湧くんです(笑)。それと2つめは、理想論なのかもしれませんが、恋とか愛のために、それ以外のものを全部捨てられる心意気ってスゴいなぁと。自分は大切なものを1つだけ選ぶことすら難しいのに、それ以外のものは全部捨ててしまうなんて到底無理。憧れますね。

――石井監督は、実生活で新しい家庭を持ったわけですね。満島さんとの馴れ初めについて、少し聞かせてください。『川の底――』の製作期間中にどちらかからアクションがあったんですか?

石井 製作中は一切、そういうことはありませんでしたよ。う~ん、その件は『川の底――』の売りにはしてないので、ノーコメントってことにしてもらえませんか(笑)。

――では今後、満島さんを起用した作品の予定は考えています?

石井 いやいや、それはないんじゃないかと思います。一緒に仕事……、というのは今はちょっと考えられないですね(苦笑)。

 石井監督、プライベートな部分にまで踏み込んでスミマセン。でも、作品論に関しては雄弁な石井監督が、奥さまの話題になるとしきりに照れているのが印象的でした。石井監督の言葉をそのまま受け取ると、新鋭監督と話題のミューズとのコラボレーションが満喫できるのは『川の底からこんにちは』だけということに当面はなりそう。数々の奇跡を生み出した『川の底からこんにちは』、見逃すと後悔しますよ!
(取材・文=長野辰次)

kawanosoko_sub4.jpg
●『川の底からこんにちは』
監督・脚本/石井裕也 出演/満島ひかり、遠藤雅、相原綺羅、志賀廣太郎、岩松了、稲川実代子、菅間勇、猪股俊明、牧野エミ 発売元/IMAGICA TV 販売元/紀伊國屋書店 2月26日(土)DVDリリース 作品公式サイト <http://kawasoko.com>

●いしい・ゆうや
1983年埼玉県出身。大阪芸術大学の卒業制作として『剥き出しにっぽん』(05)を監督。PFF2007グランプリ&音楽賞を受賞。長編第2作『反逆次郎の恋』(06)はゆうばり国際ファンタスティック映画祭などに入選。大阪市の映像文化振興事業として、長編第3作『ガール・スパーク』(07)を制作。長編第4作『ばけもの模様』(07)は香港国際映画祭アジアン・デジタル・アワードにノミネート。さらに香港で開催されたアジアン・フィルム・アワードにて、アジアで最も期待される若手監督に贈られる第1回エドワード・ヤン賞を受賞。ロッテルダム国際映画祭、および香港国際映画祭にて、上記4作品の特集上映も行なわれ、反響を呼んだ。第19回PFFスカラシップ作品として『川の底からこんにちは』が2010年に公開。同年、『君と歩こう』(09)も公開された。『川の底からこんにちは』(09)はブルーリボン賞監督賞、ヨコハマ映画祭新人監督賞&主演女優賞、モントリオールファンタジア映画祭最優秀作品賞&最優秀女優賞など多数受賞。新作『あぜ道のダンディ』(10)は2011年公開予定。

川の底からこんにちは

こんにちは。

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