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オリンパス社長解任劇で浮上した不正会計疑惑は同社で代々伝承された”お家芸”だった!?

olympus_ho1020.jpgオリンパス株式会社の公式HPより

「ウッドフォード氏本人は、儀礼や慣習よりもずっと具体的で憂慮すべき問題を巡って、同僚たちと衝突したと話している。トップの立場から『内部告発』を行ったためだという」(10月15日付け英紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」)

 10月14日、オリンパスの菊川剛会長は記者会見で、「日常の業務で組織を無視した指示があり、グループ全体が混乱していた」ことを理由に、同社取締役会がマイケル・ウッドフォード社長を解任し、菊川氏が社長職を兼務することを発表。今年4月の社長就任からわずか半年のスピード解任となった。

 同日、この解任発表について、オリンパス社内は「不自然なほど誰も触れようとしない」(同社現役社員)状況で、全社員向けに「菊川会長兼社長」名で次のような「臨時メッセージ」が配信されていた。

「(ウッドフォード前社長が原因で)独断専横的な経営判断で物事が進んでしまい、(略)このような事態を長期にわたり続けることは当社の社員をはじめ、(略)さまざまなステークホルダーに対して多大なるご迷惑をおかけすることであり、(略)判断いたしました」

 この説明を聞く限り、あたかも前社長に100%非があるように受け取れるが、冒頭のFTの記事によると、前社長が同社の主に2つの不正会計を社内で追及しようとしたことが解任理由だというのだ。

 ひとつめは、2006~08年に同社が計7億7,300万ドルを投じた非公開企業3社の買収について、その後投資額の約7割が減損処理されていた問題。

 2つめは、08年の同社による英医療機器メーカー・ジャイラス買収において、総額22億ドルの買収金額の約3分の1に相当する多額の報酬金を、買収を仲介しただけのフィナンシャルアドバイザーで、世界的な租税回避地(タックスヘイブン)であるケイマン諸島に所在する、いまだ所有者不明のAXAMという会社に支払っていた問題である。FTが入手した資料によると、オリンパスの社外監査法人だったKPMGも、09年監査の際にジャイラス及びAXAMの不正会計を示唆していたというのだ。

 さらに、オリンパスが04年に子会社化したITサービス企業・ITXに関するオリンパスの会計処理についても、かねてから社内では疑念の声が上がっていたという。ITXの元関係者はこう証言する。

「ITX子会社化以前の00年から、オリンパスはITXの株式を15%以上所有していましたが、同社は直接保有する株式以外にも、ITXの株式を投資信託化して、同社と関係の深いオリンパス香港・中国有限公司、コンサルティング会社グローバル・カンパニー(GC)、リヒテンシュタイン銀行に保有させていました。これは、本来オリンパスが自社名義で保有すべき『株式』を、意図的に自社の代わりに他社名義の『投資信託』に見せかけ、見た目上の自社の株式保有比率を引き下げるという行為であり、『意図的なグループ連結会計外し』という極めて違法性の高い操作だと社内でささやかれていました【編註:複数の企業間で、自社名義でお互いの株式を持ち合うことは、一部の例外を除き合法】。そして、04年のITX子会社化の際には、オリンパスはこれらの投資信託を買い取り、株式化することにより、一気にITXの約70%の株式を取得しました。子会社化の直前にITXは株式公開に失敗し、オリンパスやこの4社以外の株主は、ITX株式の評価損を一斉に計上していましたが、オリンパスは子会社化により、計上すべき評価損を免れていた模様です【編註:自社保有の株式下落により会計上損失を計上しなければならない基準は、子会社の株式の場合緩和される】。しかしこの行為は、株価が上がらない場合、将来多額の損失を”のれん代”として償却しなければならなくなる恐れがあり、『”意図的な”将来への損失先送り=商法違反』の疑いがあったため、社内で異論が噴出し、実際2年後に数百億円レベルの損失を計上したと聞いています」

●不正会計の指南役は某大手証券会社社員!?

 また別の元関係者は、FTでジャイラスとAXAMに関する疑惑を目にしたとき、この不正会計の際に利用された手法の”指南役”と思われる人物A氏にまつわる噂を、社内で聞いたことを思い出したという。

「(FT記事が提示するひとつめの問題である)非公開企業3社とは、アルティス(健康食品会社)、ヒューマラボ(同左)、NEWS CHEF(食器・調理器具会社)ですが、オリンパスの事業分野と無関係な会社ばかりです。前出のCGはオリンパスから投資業務委託も受けていますが、CG傘下の投資ファンドが所有するこの3社を、06~08年にかけオリンパスはCGの仲介でこのファンドから買収します。この取引の中心人物が当時CGの幹部だった元某大手証券会社社員A氏でした。A氏はのちにオリンパスの関連会社幹部となり、前出のリヒテンシュタイン銀行にオリンパスの法人名義口座を開くため海外出張したりと、財務面で同社のアドバイザリー的な役割を担っていたともいわれていました。買収の仲介料を”裏の指南”への報酬としてA氏に支払うために、オリンパスは損失を出してまで買収を行ったのでは、という噂まで社内で出たほどです。のちのジャイラスとAXAMの件でも、A氏が指南した手法が使われた可能性があるのではないでしょうか」

 ちなみにたびたび登場するこのリヒテンシュタイン銀行とは?

「スイス銀行に代表される、極めて顧客情報の守秘性が高いプライベートバンクで、口座開設にあたり最低でも必要な預金額は数億円以上。世界の富裕層の租税回避にも利用されており、08年にはアメリカ、ドイツなど複数国が協調して脱税捜査に入り、世界的に名の知れた起業家やミュージシャン、俳優が秘密口座を持っていた実態が明らかになりました」(証券アナリスト)

 オリンパスが利益の見込めない買収劇を繰り返し、この銀行やケイマン諸島などの租税回避地を使って、不正な隠し財産を積み上げているとしたら? 真相は霧の中だが、もし仮にこの元関係者の証言やFTの記事が事実だとすると、疑問を抱かざるをえない。

 10月20日付け日経新聞朝刊は、ジャイラス買収について、買収金額約2,200億円の約4分の1にあたる「557億円の減損処理を(オリンパスは)正当と主張するが、規模の大きい損失や支出が『財務悪化を招いた』(JPモルガン証券の森山久史アナリスト)との指摘がある」と報じた。また、新聞各社の報道によると、ウッドフォード前社長は17日、国際的な汚職などを捜査する英重大不正捜査局(SFO)にこの買収に関連する資料を提出し、オリンパス側も前社長に対し法的措置をとる可能性を示唆しているという。

 いまだにジャイラスやAXAMの会計は未公開のままだが、こうしたオリンパスの”謎の多さ”が、「菊川現社長が退任しない限り、同社に投資する市場関係者は出ないでしょう」(前出の証券アナリスト)との声を呼んでいるのかもしれない。
(文=編集部)

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最終更新:2013/09/10 19:30
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