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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.175

やめろと言われても、今では遅すぎたッ! 妻夫木聡&武井咲主演の過剰なる純愛劇『愛と誠』

aitomakoto1.jpg“愛は平和ではない、愛は戦いである”の名ゼリフで幕を開ける『愛と誠』。
昭和歌謡曲の名曲がフルコーラスで甦る!

 やめろと言われても~、今では遅すぎたッ! 映画の序盤、学ランを着た妻夫木聡が西城秀樹の1974年のヒット曲「激しい恋」を熱唱する。その歌詞のまんまの映画である。『巨人の星』『タイガーマスク』『あしたのジョー』などの“スポ根”漫画で知られる梶原一騎原作の純愛ストーリー『愛と誠』を、三池崇史監督が映画化。妻夫木の「激しい恋」に続いて、映画初出演となる武井咲が加藤和彦の名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」をフルコーラスで歌い上げる。ミュージカルタッチのツッコミどころ満載ムービーだ。一度映画館に足を踏み入れてしまうと、その過剰すぎる世界を最後まで見届けるはめになる。

 「週刊少年マガジン」で『愛と誠』の連載がスタートしたのが1973年。3年間にわたって濃厚なる青春ストーリーが繰り広げられた。財閥の令嬢・早乙女愛は幼少期にスキー遊びをしていたところ誤って急斜面に陥り、地元の少年・太賀誠に命を救われる。愛にとって白馬の王子さまが現われた瞬間だった。だが、誠は額に大きな傷を負ってしまう。それから11年後、都内の名門高校に通う愛はフダ付きのワルと化した誠と再会。誠の額には巨大な傷跡が残っていた。自分が傷つけたために誠の精神が歪んでしまった。自責の念にかられる愛は、何とかして誠を本来の純真な姿に立ち直らせようと尋常ならざる情熱を注ぎ始める。愛の献身的な行動に焼きもちを妬いたのが、メガネ秀才の岩清水弘。「君のためなら死ねる」とストーカーまがいの手紙を愛に送りつけ、2人に執拗に付きまとう。報われることのない一方通行の恋愛トライアングル! さらに不良の巣窟である花園実業高校を仕切る“影の大番長”との対決が愛と誠を待ち受けていた!

 愛は平和ではない。愛は戦いである。ネール首相が娘に贈った言葉を引用したオープニングからして、原作の連載された70年代でも充分に大仰でアナクロ感のあった『愛と誠』が21世紀に再映画化されたことに驚いた。しかも、かつて松竹で実写化された際は『愛と誠』(74)『続・愛と誠』(75)『愛と誠・完結編』(76)の三部構成だった大河ドラマを、三池版『愛と誠』は2人が運命的に出会った幼少期のエピソードからラストまで一気に突っ走る(残念ながら、ムチの名手・砂土谷峻の登場は割愛)。

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