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業界の最先端をゆくピクサーの初挑戦『メリダとおそろしの森』

merida.jpg(C)DISNEY / PIXAR .All rights reserved.
7/21(土)ロードショー 2D・3D同時公開
ディズニー公式サイト:<http://www.disney.co.jp/>

 今週は、子どもから大人まで楽しめる良質なCGアニメ映画を作り続けてきたピクサー・アニメーション・スタジオによる、最新ファンタジーアドベンチャー『メリダとおそろしの森』(7月21日公開、2D/3D上映)を紹介しよう。

 中世スコットランドのとある王国。豪胆な王と、王家の格式を重んじる王妃の間に生まれた王女メリダは、幼い頃から弓の腕を磨き、愛馬で森を駆けめぐるおてんば娘に成長する。母が一方的に結婚話を進めることに反発し、城を飛び出したメリダは、森の奥深くで出会った魔女に「運命を変える魔法」を懇願。魔女にもらったケーキを母に食べさせたことで、王国を揺るがす重大な事態に。果たしてメリダは、過酷な運命に立ち向かい、母と王国の危機を救うことができるのか……。

 ピクサーが長編13作目にして初めて、人間の女性を主人公に据えた意欲作。メリダが試練と冒険を通じて精神的に成長する姿に加え、王妃と王女という母娘の絆もしっかりと描き出す。中世という時代設定は、やはりピクサーにとって初挑戦となるが、シンプルに純化された人間関係と神秘的な森での出来事をうまく引き立てている。

 そうした過去作に例のない描写や表現を支えるのは、常に業界の最先端をゆく同スタジオの技術力だ。メリダの燃えるような赤い髪の毛にカールを作る“アイロン”や、森の中や城壁の石に苔を吹き付ける“スプレー”などを、コンピューター上のプログラムでバーチャルに作り出し、動作や風に反応して揺れる様子など繊細な表現を可能にした。こうした細部の緻密な描写の積み重ねのおかげで、個性的なキャラクターや雄大な景観に魂が吹き込まれ、観客はリアルな感情とダイナミックな展開を楽しむことができる。

 本作の監督の1人、ブレンダ・チャップマンは、ドリームワークス・アニメーション在籍時に『プリンス・オブ・エジプト』(99年)で共同監督を務め、大手スタジオの長編アニメ映画でメガホンをとった最初の女性になった。03年にピクサーへ転籍したのち本作の監督と原案に抜擢され、「ピクサーアニメ初の女性監督作品」と大きく報じられたが、残念ながら制作上の意見の相違でマーク・アンドリュース監督に交代。とはいえ、「女性は上品で慎ましくあるべき」という古い固定観念にとらわれず、ヒロインが運命を自ら切り拓いていくというストーリーには、少なからずチャップマンの半生が投影されているはず。後任監督のマーク・アンドリュースも本作が長編デビューとなることを考え合わせると、ピクサー自身もまた、新しい時代に向けた製作陣の世代交代という、成長のためのターニングポイントを迎えているのかもしれない。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

「メリダとおそろしの森」作品情報
<http://eiga.com/movie/56798/>

最終更新:2012/07/23 17:26
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