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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.180

“神様”との出会いと別れ、そして旅からの帰還  ドキュメンタリー『アニメ師・杉井ギサブロー』

gizaburo01.jpg原宿育ちの杉井ギサブロー監督。雨の明治神宮を歩きながら、
自身のアニメ人生を振り返る。

 アニメ界の巨匠・杉井ギサブロー。東映動画時代に日本初の長編カラーアニメ『白蛇伝』(58)の製作現場に参加し、虫プロ移籍後には世界初の連続テレビアニメ『鉄腕アトム』(63~66)の作画・演出を担当。幻の『ルパン三世』パイロット版にも名前を連ねている。日本アニメの黎明期から活躍し、最新作『グスコーブドリの伝記』が現在公開中の現役バリバリの監督である。しかし、作家性を前面に押し出すことなく、娯楽作品を提供することに徹してきたため、長いキャリアとアニメ界への貢献度の割にはそのフィルモグラフィーがスポットライトを浴びる機会は少なかった。そんなアニメ界の偉人・ギサブローの半生をドキュメンタリーにまとめ上げたのが石岡正人監督。前作『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』(10)では、アテナ映像時代の師匠である伝説のAV監督“ヨヨチュウ”こと代々木忠監督の波乱に満ちた足跡を記録している。ヨヨチュウに続いて、石岡監督が「年代を重ねた、かっこいい大人の男」としてクローズアップしたのがギサブローだった。ドキュメンタリー『アニメ師・杉井ギサブロー』は至高のアニメ職人の意外な素顔、知られざる内面に迫っている。

 1940年生まれのギサブロー監督は原宿育ちだ。戦後間もない原宿には米軍の宿舎が建てられ、最新のアメリカンコミックに触れるためにギサブローは米軍の敷地内で英字新聞の配達をしていた。雨の降る原宿・明治神宮の境内でビニール傘を手にしたギサブローが自身の少年期を振り返る。ギサブローが東映動画に入社したばかりのエピソードが楽しい。18歳になったギサブローは、念願叶って日本初のアニメスタジオ・東映動画に入社する。大好きなアニメーションの仕事ができることがうれしくて堪らない。毎朝早くに目が覚めてしまい、明治神宮をランニングして汗を流してから大泉学園にある東映動画に出社する。それでも、まだ誰も出社していない。新人時代のギサブローの上司となったのが、後にカリスマアニメーターとして知られることになる大塚康生だった。また、同僚だったりんたろうが当時のギサブローの印象をこう語る。「昼休みに女の子たちを集めてバトミントンをしていた。しょっちゅう遊んでた」と。新人時代からギサブローは大物の片鱗を見せていた。

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