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「伊藤英明がケツ丸出しで全裸筋トレ」で話題の映画『悪の教典』  原作×マンガ×映画を横断的勝手にレビュー!!

akukyouten.jpg映画『悪の経典』公式サイト

 先月10日に封切りされ、過激な描写が賛否両論を呼んでいる伊藤英明主演、三池崇史監督の映画『悪の教典』。18日にはAKB48のメンバーを招いて特別上映が催され、大島優子が大量殺戮シーンに耐えきれず泣きながら退席&ブログで「私はこの映画が嫌いです」と言い放つという炎上マーケティングじみた宣伝も話題になりました(詳しくはコチラの記事で(https://www.cyzo.com/2012/11/post_11936.html)。

 原作は貴志祐介のサイコホラー小説で、映画公開に合わせてコミカライズ版も『good!アフタヌーン』(講談社)で連載中&単行本第1巻が発売中。いわゆるメディアミックスというやつですが、コミック版はさておき、映画版は、原作既読の人と未読の人でずいぶんと印象が異なるんじゃないかと思われます。もちろん、それはあらゆる原作付き映画に対しても多かれ少なかれいえることで、上下巻合わせて850ページ以上ある原作を129分に収めたという尺の都合もあるわけですが……。

 物語の主人公は、とある市立高校の英語教師・蓮実聖司(愛称:ハスミン)。彼はイケメンで授業も面白くて“親衛隊”ができるほど生徒から絶大な人気を誇るうえに、いじめ、暴力事件、カンニング、セクハラ、モンスターペアレントなど山積する問題をテキパキ解決して同僚からの信頼も厚いという完璧超人。しかし、実はハスミンは生まれつき共感能力を欠いたサイコパスで、学校に自らの「王国」を築くために邪魔者を次々と排除していく。そして遂には自分が担任する2年4組の生徒全員をショットガンで皆殺しにするというストーリー。

 「学校×バイオレンス」というと、深作欣二監督の映画『バトル・ロワイアル』(原作:高見広春)が連想されますが、この「バトロワ」と『悪の教典』の決定的な違いは、前者は生徒同士の殺し合い、つまり殺る側と殺られる側が対等だったのに対し、後者は殺る側が圧倒的な強者で、殺られる側は徹底して無力だということ。しかも生徒たちの多くはいままでハスミンに心酔してきたわけで、「え、そんな、ウソでしょハスミン? え、マジで!? えええーっ!!!」みたいな、かすかな希望が一瞬で絶望に塗りつぶされる感じを味わいながら、というか味わう間もなくバッタバッタとなぎ倒されていきます。

 それを指して大島優子は「人の命を大切にしないことは、認めません。命が奪われていくたびに、涙が止まりませんでした」とのたまったわけです。たしかにこの映画で描かれる命の軽さったらないですよ。でも、殺された約40人の生徒たちには将来の夢があったり好きなクラスメイトがいたり、それぞれ16~17年間の人生および可能性を秘めた未来があったのに、それらを一顧だにせず縁日の射的感覚で引き金を引いていくハスミン、やばい、マジやばい……という具合に、殺すことを躊躇しない人間の恐ろしさが見えてくるというものです。

 そもそもハスミンにとって、殺人は手段であって目的ではありません。たとえばアメリカの高校や大学でたびたび起こる銃乱射事件は「みんな殺してオレも死ぬ!」的な、いわば拡大された無理心中と解釈されたりします。あるいはシリアルキラーにとっての殺人はそれ自体が快楽であり、ある種の性癖のようなものであるとかね。でも、ハスミンの場合はあくまで自分が生き残るために他者を殺害しているのであって、ただ生存本能に忠実なだけ。自分が快適に生きたいだけ。

 そんなサバイバルモード全開なサイコパスが、平和な日本の、しかも実社会のような熾烈な競争もなければ外敵もいない「学校」という閉じられた空間に送り込まれたらどうなるのか……というのが本作品のポイントのひとつだと思われますが、映画では、このイケメン人気教師の仮面をかぶった「怪物」が完成する過程、すなわちハスミンの人格形成に関わる部分はかなり端折られています。また、殺人の動機(もしくは殺人決行に至るまでの心理描写)や、ハスミンの冷徹さや周到さが表れている手口の数々も、尺の都合からカットされたり、悪くいえば雑に描かれてしまっています。

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