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「伊藤英明がケツ丸出しで全裸筋トレ」で話題の映画『悪の教典』  原作×マンガ×映画を横断的勝手にレビュー!!

 要するに、映画でのハスミンは、ショットガンを持った爽やかな外道にしか見えないわけです。ただ、それが悪いかというとそうでもなくて、原作にあったサイコサスペンス要素を思い切って削ったおかげで「暴力にエクスキューズも建前もいらねえ! とにかく皆殺しだぜヒャッハー!」みたいな猟奇性が際立ってます。それに『極道戦国志 不動』や『殺し屋1』など数々の血みどろ暴力映画を撮ってきた三池監督が映像化するならさもありなん、という感じ。

 ハスミンは気分がいいとき(たとえば殺人がうまくいったときなど)に『三文オペラ』の主題歌「モリタート(殺人物語大道歌)」を口笛で吹くクセがあり、同曲は「マック・ザ・ナイフ」というタイトルでジャズのスタンダード曲になっているんですが、クライマックスの虐殺シーンではビッグバンド・アレンジの「マック・ザ・ナイフ」をBGMに、軽快にショットガンをスイングしまくり。ハスミン役の伊藤英明も、ただ無表情で生徒たちを撃ち殺すのではなく、ときにはにっこり笑ったり(もちろんそれは快楽から来る笑顔ではなくて、自分の銃の腕前に満足している感じ)、必死に生き延びようとする生徒をほめてあげたり(でも殺す)、いい塩梅で狂気を醸しています。

 また、原作から削られた部分がある一方で、

・伊藤英明がケツ丸出しで全裸筋トレ。
・男子生徒(林遣都)が男性教諭(平岳大)にフェラチオされる。しかもわりと長時間。
・セクハラ体育教師役の山田孝之が、ショットガンを向けられた絶体絶命の状況で女生徒のパンツを嗅ぎ、その持ち主を言い当てる(129分間で唯一笑いが起きるシーン)。

といったオリジナルシーンも盛り込まれ、Twitterなどではこのケツやホモ描写が話題になってもいて、そのあたりの客の釣り方はうまいな、なんて思ったり。

 でも、一番びっくりしたのは主題歌ですよ。映画はかなり後味悪い感じで幕を下ろすんですが、エンドロールで流れるのが、EXILEの新ユニット「THE SECOND from EXILE」とやらのデビュー曲! これで余韻ぶち壊し! どこでどうねじ込まれたのか、ある意味で最も恐怖を感じた瞬間でした。

 さて、一方のコミック版は、まだまだ序盤というか、第1巻で原作の全12章のうち2章の前半まで消化したあたりですが、ほぼ原作に忠実。絵柄や登場人物のキャラデザも原作のイメージを損なっていないので(ただし、不気味な数学教師・釣井正信に関しては、映画版の吹越満が圧倒的にハマっている)、おそらく原作既読組も、未読で「上下巻ある原作を読むのはちょっと……」という人にもオススメ。

 原作はハスミンが担任するクラスの生徒全員に名前があって、それぞれキャラ付けされていて、しかも個性的な教員もたくさん。つまり登場人物がやたら多いんですが(でも、読み進めていくうちに自然とキャラと名前が一致してくるあたりは、さすが貴志祐介)、コミック版では序盤で主要キャラを一覧にするような見せ方で整理していて、ずいぶん取っ付きやすくなってます。

 最後に、原作にはハスミンが女生徒を調教して修学旅行中に中出しをキメたり、女性養護教諭が保健室で男子生徒と淫行三昧だったり、残念ながら映画ではカットされてしまったAVみたいなエロ描写もあるので、そのあたりも大いに期待したいところ。
(文=須藤輝)

●映画『悪の教典』
<http://www.akunokyouten.com/>

最終更新:2012/12/11 18:00
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