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凶悪犯罪の真相

100時間に及ぶ独白から浮かび上がる、“連続ピストル射殺事件犯”の素顔『永山則夫 封印された鑑定記録』

41L5MvmBl+L._SS500_.jpg『永山則夫 封印された裁判記録』
(岩波書店)

 永山則夫という人物は、日本犯罪史にとって、語弊を恐れずに言うならば「特別な」人間だ。横須賀の米軍宿舎から盗み出した拳銃を使用し、1968~69年にかけて東京、京都、函館、名古屋で合計4人を殺害した、「連続ピストル射殺事件」を引き起こす。その事件の凶悪性もさることながら、事件当時まだ19際の少年だったこと、網走や青森の地で貧困にまみれたその生い立ち、そして、逮捕後に発表した小説群の成功……。ある意味で社会に対して多大な影響を残し、97年に彼の死刑は執行された。

 『永山則夫 封印された鑑定記録』(堀川惠子著、岩波書店)は、2012年に発見された永山の精神鑑定中の独白テープをもとに、生い立ち、家族関係、事件に至るまでの思考を詳細に追いながら、あまりにも複雑な要因が絡まった彼の内面を丁寧に解きほぐした一冊だ。同じ内容は昨年ETV特集でも放送され、高い反響を獲得した。

 74年にこの精神鑑定を行ったのは、精神科医の石川義博。ロンドン大学に留学経験を持つ犯罪精神医学のスペシャリストである彼は、通常1カ月程度の精神鑑定をじっくりと8カ月にわたって行い、その半生をテープに記録した。49本、100時間にも及ぶこのテープには、事件までの19年間が、永山自身の言葉で丁寧に語られている。

 北海道・網走の地で、賭博狂の父親と、家計を支えるために行商に精を出す母親との間に生まれた永山。8人きょうだいの7番目の子どもであり、その家庭は極貧を極めた。両親は生まれたばかりの永山を顧みず、永山の記憶にも、その頃の母親の記憶はない。その代わりに、まだ幼い彼の面倒を見たのは、19歳年上の長女セツ。おむつを換え、食事を食べさせ、一緒になって遊んでやる。永山の記憶にあった、最も古い思い出も、セツとともに見た網走の烏帽子岩だった。

石川「セツ姉さんっていうのは、どんな感じなの?」
永山「やさしいっていうか、セツ姉さんにおんぶしてもらったこと覚えてる。あとね、網走湖かな、湖があって、その近くでね(略)そこにセツ姉さん、いたよ」

 母親代わりとなって、深い愛情を注いでいた長女はしかし、永山が4歳の頃に忽然と姿を消す。身ごもった子どもを堕胎したのがきっかけで精神を病み、精神病院に入院することとなってしまった。永山は、唯一の頼れる存在を失い、その歯車は狂いだす。母親が、8人きょうだいのうち次女と四女、そして長男が産ませた孫娘だけを連れて青森に逃げたのは、セツの入院から半年後のことだった。そして、置き去りにされたきょうだいたちは、自らの力で氷点下30度にもなる網走の冬を過ごさなければならなかった。この記憶は「抑圧された記憶」として、永山の記憶から抹消されている。

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