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ブラジル・フォトルポルタージュ【前編】

巨大祭典「リオのカルナヴァル」から学ぶ、人種の多様性がもたらす希望とは?

リオのカルナヴァルに学ぶ民衆の力

 2020年は「海外からの外国人観光客」だけでも約42万人が訪れた人類最大の祭「リオのカルナヴァル」。今年もロイター通信をはじめ、BBCやニューヨークタイムズ、仏AFPほか、世界中の国際メディアが集結した。

 毎年の目玉であり最大の注目を浴びるのは、パレード専用のメインスタジムで行われる「巨大パレードコンテスト」のトップリーグ(全6部リーグ:81団体)だ。今年も圧巻のパレードが行われたが、パレードの現場や民衆の喝采を浴びたのは、今年の優勝チームでも歴史的な名門チームでもなかった。それはトップリーグで13チーム中10位に採点結果が終わった〈サォン・クレメンチ〉という1961年創立の比較的新しいチームのものだった。

 なお、本来はチームとは言わず“エスコーラ・ヂ・サンバ”と呼び、リオデジャネイロ市界隈の、各地域に根ざした祭の連、日常から助け合うサンバの地域共同体のことを指す。サンバとは単なる音楽ジャンルの呼び名なのではなく、社会における共同体であり、精神性なのだ。

〈サォン・クレメンチ〉の団旗を掲げる男女ペアダンサー

 毎年、全エスコーラがパレードのテーマを元にテーマ曲サンバ、打楽器隊アンサンブル、衣装、山車、振付けなどを新調する。今年話題となった〈サォン・クレメンチ〉のパレードのテーマサンバ曲は「ペテン師:信用詐欺」と題され、「現職ブラジル大統領:ジャイール・ボルソナーロをはじめ、旧宗主国:ポルトガル領時代から現在に至る、ブラジル社会での宗教関係者、政治家、商人、有名人、マスメディアや昨今のフェイクニュースに至るまで、歴史的な不正や嘘を暴き、すべてをVAR(ビデオ判定)にさらし、永遠なる刑務所内での休日に送り込め」という痛快な内容だった。

ブラジルがゴールド・ラッシュで湧いた18世紀に出現した億万長者たちは、罪滅ぼしに教会を乱立させた。同時に、信仰を欺く行為が横行したことを表すペテン師と教会の山車が登場

 1エスコーラのパレードの長さは、7万人以上が観戦するスタンドが両側に740メートルに渡り続く、パレードコースをさらに越えるものだ。サォン・クレメンチは総勢3600人、5つもの巨大な仕掛け山車、25組の異なる衣装による役に分かれて1時間に渡り、テーマ曲サンバ・パレードによるパフォーマンスを展開。世界100カ国以上に生中継放送された。

ブラジルで半知性の象徴とされるロバが、安易に手に入れた富にまみれて登場。横には宗教関係者の衣装を着た女性たち、後ろ側には悪戯な天使たちの姿

 このようにブラジル社会や国民は日本と異なり、自由で民衆の力にあふれている。もし一方的な支配や不正があれば「サンバという独自の市民共同体文化」で老若男女が結束し、クリエイティブでユニークな表現をもってして社会告発し、さらに共感を得る力を持っているのだ。

 しかも「世界中が注目する世界一の祭」で、それをやってしまうのだ。もしサォン・クレメンチが今の日本の政治状態、政治家・宗教団体・企業・歴史の不正や汚職を、同じように痛烈に暴き、シュールで笑えるパレードに仕立てたら、どんなものになるだろうか? それ以前に、それを行うこと自体ができるだろうか。

 それは日本の主要メディアで自由にフェアに放送できるのか――。サォン・クレメンチは、ブラジルの民衆の力と自浄力、自省心をサンバで表現したのだ。

金の盲者に、偽造当たりクジを売る詐欺師の衣装を着たグループも登場

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