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週刊アニメ時評 第42回

賛否両論巻き起こす、アニメ版『惡の華』ロトスコープの功罪

akunohana.jpgアニメ『惡の華』公式サイトより

 「ハ・ナ・ガ・ハナガ・サイタヨー」のエンディングテーマがいやでも耳に残るアニメ『惡の華』。皆さん、見てます?

「別冊少年マガジン」(講談社)連載中のコミックを原作とした本作は、全編にわたって実写映像をトレースする「ロトスコープ」という技法で制作された日本初のテレビアニメとして、TOKYO MXなどU系局やネットで4月より放送開始。記号的表現の真逆をいくような写実的な映像は、現在主流のアニメ表現に慣れ切ったアニメファンのみならず業界人にも大きな衝撃を与え、「すごい表現だ!」「いやいや、気持ち悪い!」「仲村さんがかわいくないブヒー!」と賛否両論を巻き起こしています。

 本作を語る上で、ロトスコープという手法について触れないわけにはいけません。冒頭で触れたように、ロトスコープはモデルの動きをトレースした作画をアニメーションさせる手法で、その制作の手間は通常のアニメの比ではありません。全編ロトスコープで制作されたアニメはディズニー映画『白雪姫』(1937年)や『ガリバー旅行記』(39年)、キアヌ・リーブス主演の『スキャナー・ダークリー』(06年)などが挙げられますが、その多くは特撮映画のVFX表現やアニメ『坂道のアポロン』の楽器演奏シーンなどのように、一部で使用されるのみにとどまっています。ただその分、キャラクターを演じる役者の微妙な表情や何気ない仕種、息遣いまでもが生々しくアニメーションに再現されるのです。

 そんな『惡の華』がいかにして作られているのか。この疑問に応えるかのように、4月30日よりニコニコ動画にて第3話の実写パートが公開されています(http://live.nicovideo.jp/watch/lv136003444)。この動画を見ると、本物の映画同様にセットが作られて、その中で役者が迫真の演技を繰り広げていることに、まず誰もが驚くことだと思います。

 アニメの素材として使用される、というレベルではないあまりのガチっぷりに「もうこのまま実写ドラマにしちゃえばいいじゃない」というコメントが流れていました。確かに自分もそう感じたのですが、しかし、何かが物足りない。すでにアニメ『惡の華』の世界を覗いてしまった自分としては、この実写映像は『惡の華』の映像化作品としては安定しすぎている、と感じてしまったのです。

 シリアスなドラマでは等身が高めキャラデザになるし、ほのぼのした作風なら柔らかそうで丸いタッチのキャラデザになる……といった具合に、作画やキャラクターデザインが演出に直結しがちなのがアニメというジャンルです(これは相当乱暴な解釈ですが)。

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