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【バック・トゥ・ザ・80'S】Vol.14

文房具の限界に挑んだ、偉大なる恐竜「多面式筆箱」今昔物語

ssf01.jpg誰もが憧れた多面式筆箱。

アナログとデジタルの過渡期であった1980年代。WiiもPS3もなかったけれど、ジャンクでチープなおもちゃがあふれていた。足りない技術を想像力で補い、夢中になって集めた「キン消し」「ミニ四駆」「ビックリマンシール」……。懐かしいおもちゃたちの現在の姿を探る! 

 かつて小学生だった僕たちにとって最も身近な実用品であり、一番長く時間を共にしていたグッズ。それこそが文房具であり、その筆頭を挙げるなら、やはり「筆箱」だろう。そして、この筆箱界の頂点に君臨していたのが、サンスター文具から発売されていた多面式筆箱である(断言)。

 ガッシリとした重厚なフォルム。ボタンを押せば筆箱のあちこちから収納スペースが飛び出し、鉛筆がサンダーバードの出撃シークエンスよろしく起き上がる。そしてバカッと観音開きしたかと思うと、ありとあらゆる面のフタが開く。さながらノリは、変形ロボットか秘密基地である。

 『ガンダム』やら『マクロス』やら『ダンクーガ』やら、合体&変形ロボットアニメが大好きだった僕たちは(っていうか筆者は)、実用性はともかくとして、小学生男子特有の「変形モノに対する盲目的な憧れ」を刺激しまくる多面式筆箱に胸をときめかせたものだ。今回は、そんな多面式筆箱の時代をプレイバックしよう。

■恐竜的進化を遂げた、多面式筆箱の歴史

 サンスター文具といえば、1967(昭和42)年に「象がふんでもこわれない!」というキャッチフレーズも懐かしい「アーム筆入」を発売した、文房具業界最大手メーカーの一つである。同社はアーム筆入発売前の昭和40年頃、磁石によってフタを開け閉めする「マチック筆入」を発売。当初は片面のフタが開くだけのシンプルな構造だったが、やがて両面が開くタイプが出現し、これが後に恐竜的進化を遂げる多面式筆箱の始祖となる。

ssf02.jpgフルバースト状態! 今見ても惚れ惚れするボリューム感。

 この頃から日課表欄や万年カレンダーがフタの裏側に設けられたり、鉛筆をホールドできる機構があったりと、すでに多面式筆箱特有の「多機能ぶり」の片鱗が見え隠れしているが、77(昭和52)年頃になると、消しゴムの収納スペースを追加した「三面」、両面筆箱を可動パーツで接続し収納容量を増やした「四面」が出現。本格的な進化がスタートする。

「当時、次々と新しい機能を搭載した筆箱が出てきたのは、やっぱり他社との競争があったからでしょうね」

 そう語るのは、サンスター文具・営業本部の山本雄三氏だ。

「競争が過熱すると、四面、五面と多面式筆箱も進化していきました。一番画期的だったのが、五面の多面式筆箱です。学校ではコンパクトな筆箱なのに、ランドセルに入れるときはバカッと開いて教科書と同じB5サイズになるんです。薄くて収納しやすくなります」

 ノリはまさしくトランスフォーマー。その後も企業間で激しい開発競争が続いた多面式筆箱は、可動部分にも収納スペースを搭載し薄い形状に変形する先述の「五面」、さらに細かい収納スペースを搭載した「六面」「七面」……と多面化が進行。

 この頃になると、メインの筆箱機能の充実に加えて鉛筆削り、のり、ルーペなどを内蔵したり、鉛筆ホルダーがロケット発射台のようにグググ……っと起き上がったり(しかも、ゆっくりと上昇するダンパー機能つき!)というガラパゴスな様相を呈し始める。

ssf03.jpg最終形態の分離合体する九面筆箱。ノリはまさにコンバトラーV
ssf04.jpg

 80年代後半、最終的に九面に到達した多面式筆箱は、何を思ったのか分離合体機能を搭載。その名も「ジョイント9」! もうここまでくると、文房具ではなく立派なホビーアイテムである。最初は1500円程度だった多面式筆箱の金額も、その集大成ともいえるジョイント9で2500円にまで高騰してしまった。

「当時の男子は、F1とか機関車といったメカものが好きで、その絵を使うとなると、それに合わせて本体もメカっぽくするしかなかったんです。これも売れましたね」

 言葉通り、多面式筆箱が恐竜的進化を遂げた黄金期の80年代。なんと、年間100万個もの多面式筆箱が売れていたそうだ。

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