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スタジオジブリはもう死に体!? 関係者も嘆く国民的アニメスタジオの危機

――「サイゾーpremium」から、今ホットな話題に関する記事をお届け!!

 1日、日本を代表するアニメ映画の巨匠宮崎駿監督(72)の引退が発表され、その波紋は日本メディアだけでなく海外メディアにも伝わっています。『風立ちぬ』が大ヒット中のなか、その引退を惜しむ声は後を絶ちません。「サイゾーpremium」では過去に幾度も宮崎駿作品やスタジオジブリのアニメ制作に関する記事をあげてきました。今回はその中から、『コクリコ坂から』(11)公開中に持ち上がったスタジオジブリに関する懸念を振り返ってみます。

■今回のピックアップ記事
『スタジオジブリはもう死に体!? 関係者も嘆く国民的アニメスタジオの危機』(2011年8月号特集『ブームの闇、暴きます。』より)

──宮崎駿監督の実子である宮崎吾朗氏が監督を務め、物議をかもした『ゲド戦記』から早5年。吾朗監督の新作『コクリコ坂から』が公開された。駿パパとのタッグで作り上げた本作は、またも酷評の嵐になるのか? それともスタジオジブリ新時代の到来を告げる嚆矢となるのだろうか!?

 日本アニメ界が世界に誇るアニメーション監督・宮崎駿。その愛息・宮崎吾朗が初監督作品『ゲド戦記』を発表した2006年からちょうど5年。待望の第2回監督作品『コクリコ坂から』が、今月16日より全国東宝系にて封切られた。

 いわゆるアニメファン向けの”アニメ”とは一線を画し、国民的アニメ映画の供給源として確固たる地位を築き上げているスタジオジブリ(以下、ジブリ)。吾朗氏が監督、脚本(丹羽圭子と共作)を一手に手掛け、鈴木敏夫プロデューサーが提案した「主人公・アレンによる父殺し」というセンセーショナルなアニメオリジナルのエピソードに話題が集中した問題作『ゲド戦記』に続く新作ということで、本記事が世に出ている頃にはすでに劇場に足を運んだ読者もいるだろう。

 話題作を継続的に発表し続けるジブリだが、かねてよりいくつかの問題点が指摘されている。

 85年より宮崎駿と盟友・高畑勲を中心として、アニメ制作を行ってきたジブリが、これまでに発表した長編アニメ映画は17作。そのうち、2人が監督した作品は12作に上る。

 高畑勲の作風は、『火垂るの墓』(88年)『おもひでぽろぽろ』(91年)に代表されるような、重く地味なものが多く、かと思えばファミリー向けに制作された『ホーホケキョ となりの山田くん』(99年)は記録的な客の不入りとなり、公開翌年の00年度2月期決算では21億円の特別損失を計上するという壊滅的な結果を生んでしまった。

 一方、宮崎駿監督は順調にヒット作を世に放ち続け、01年の『千と千尋の神隠し』で約304億円という空前の興行収入を記録したものの、以降『ハウルの動く城』(04年)では約196億円、『崖の上のポニョ』(08年)にいたっては約155億円と、その数字は右肩下がりだ。

 もちろんほかのアニメ映画と比べれば、大ヒットといえるものだが、これらの成功によって、将来的にもジブリの順風満帆な活動が約束されているわけではない。

「ジブリは、アニメスタジオには珍しくスタッフのほぼ全員を社員として雇用していますが、これは宮崎駿監督の要求するものを作れるクリエーターを確保しておき、作品のクオリティを保つため。その上、宮崎駿監督の作品は製作期間が約2年と、普通のアニメ映画と比べて圧倒的に長く、『ゲド戦記』や『借りぐらしのアリエッティ』といったほかのジブリ作品と比べても大体倍の期間です。当然、製作費も膨大なものになります。『千と千尋の神隠し』以降、すべての作品がヒットしているので、赤字にこそなってはいませんが、今までの作品で大儲けして資金をプールしているということは考えにくい。作品が大コケした場合、ジブリの存続も危ぶまれるような大ばくちを毎回打っているといった状態なんです」(元ジブリ関係者)

 さらに、宮崎駿は今年で70歳を迎えるなど、中心スタッフの高齢化に伴い、本誌でもたびたび取り上げてきた宮崎駿の後継者問題が、近年のジブリには常につきまとっている。

 こうした現状を打開すべく、ジブリは02年に『猫の恩返し』(監督・森田宏幸)、冒頭でも言及した『ゲド戦記』(監督・宮崎吾朗)、10年には、若い人材の登用と超大作の制作を基本路線とした「スタジオジブリ経営5カ年計画」のもと、『借りぐらしのアリエッティ』(監督・米林宏昌)を制作。30代、40代の若手監督を起用した作品をコンスタントに発表し、後継者育成には意欲的な姿勢を見せている。興行収入を見ると、『猫の恩返し』は約64.6億円、『ゲド戦記』は約76.5億円、『借りぐらしのアリエッティ』は約92.5億円と、いずれも申し分のない結果を残している。しかし、いまだに100億円単位の興行収入を叩きだし続ける宮崎駿作品と見比べると、どうしても見劣りしてしまう。

 一方で、『時をかける少女』(06年)『サマーウォーズ』(09年)で、一躍日本を代表するアニメ監督として名をはせた細田守監督の才能をいち早く見いだし、02年に『ハウルの動く城』監督として抜擢。しかし、制作に関するトラブルから、その才能を生かすこともなく放逐している。また、『マイマイ新子と千年の魔法』の監督を務め、国内外から高い評価を受けた片渕須直監督は、『魔女の宅急便』(89年)の監督に起用されながらも、宮崎駿の現場復帰によって、監督補に退くこととなった。このように、ジブリでは才気あふれる人材を擁しながら、その才能を十二分に発揮できる場を提供しているとは言い難いのが現状だ。

 かつて鈴木敏夫プロデューサーは「つくるべきものがなくなったら、会社を畳むだけ」(本誌06年11月号)と語っていたが、宮崎駿一強時代の終焉と同時にジブリは終わりを迎えてしまうのだろうか。

 これら一連のトピックに対しての見解を伺おうと、ジブリの名物プロデューサー鈴木敏夫氏に取材をオファーしたところ、スケジュールの都合が合わず断念。実に残念である。

■ジブリよりファン多し!? 隆盛するアニメスタジオ

 そんな世代交代の必要性が問われているのは、ジブリだけではない。

 現在、100以上存在するともいわれるアニメ制作スタジオの勢力図にも、近年変化が訪れつつある。

『けいおん!』や『涼宮ハルヒの憂鬱』をはじめとする大ヒット作を多数発表する「京都アニメーション」や、今年、アニメ誌のみならず一般メディアにも数多く取り上げられた話題作『魔法少女まどか☆マギカ』を制作した「シャフト」など、ゼロ年代のアニメブームを経て、アニメファンから高い支持を集めるアニメスタジオが新たに台頭し始めている。

 スタジオジブリの先行きが不透明な今、これら気鋭のスタジオが多くの人々に愛される作品を生み出し、国民的アニメスタジオとしてジブリの地位に取って代わることは今後ありうるのだろうか。

 はたまた宮崎吾朗が見事アニメーション監督として大成し、ジブリ新時代を到来させるのだろうか。

 サブカルチャーをはじめとする若者文化に精通する社会学者・宮台真司氏による『コクリコ坂から』評や、アニメ業界関係者のリアルな本音とともに、次世代のアニメ業界を担うスタジオ像について考えてみたい。
(構成/有田 俊)

■描かれるのは親への親愛!?
スタジオジブリ『コクリコ坂から』とは?
監督:宮崎吾朗 企画・脚本:宮崎駿 声の出演:長澤まさみ 岡田准一ほか 脚本:丹羽圭子 原作:高橋千鶴、佐山哲郎(角川書店刊)

1108_kokuriko.jpg(C)2011 高橋千鶴・佐山哲郎・ GNDHDDT

 宮崎吾朗監督による、5年ぶり、2作目の監督作品となる『コクリコ坂から』。原作は1980年に「なかよし」(講談社)にて連載されていた少女マンガ。舞台は、東京オリンピックの前年である1963年、横浜のとある高校では、古いけれど歴史と思い出の詰まった文化部室の建物、通称・カルチェラタンを取り壊すべきか、保存するべきかという紛争が起こっていた。カルチェラタン保存運動の中で、同校に通う少女・松崎海は風間俊という少年と出会い、運動の手助けをすることとなる。俊は建物を保存すべきだと生徒たちに訴え、海は建物の良さを知ってもらうために大掃除を開始。運動を通して徐々に惹かれ合っていく2人だったが、そんな2人の前に思わぬ障害が立ちふさがる。なんと2人は実の兄妹かもしれなかった……。途方に暮れる海と俊は、それでも現実に立ち向かう覚悟を決め、戦争と戦後の混乱期の中での親たちの生き方に思いをはせる。果たして2人がたどり着く未来とは──高校生の2人を中心に、親子二世代にわたる青春を描いている。

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最終更新:2013/09/04 07:30
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