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テレビウォッチャー・てれびのスキマの「テレビ裏ガイド」第32回

宮藤官九郎の売名行為!?『あまちゃん』は震災をどう描いたのか

ama0913.jpg『あまちゃん』公式サイトより

「テレビはつまらない」という妄信を一刀両断! テレビウォッチャー・てれびのスキマが、今見るべき本当に面白いテレビ番組をご紹介。

 『あまちゃん』(NHK総合)は、2008年から始まる東北を舞台にした長編ドラマである。だから、2011年に起きた東日本大震災を描くことになるのは、放送開始当初から話題になっていた。脚本を担当する宮藤官九郎は「(震災を)やらないのも嘘、それだけをやるのも嘘」(MSN産経ニュース)と語っていたし、放送開始前の今年3月11日に書かれたブログでは「『あまちゃん』は震災を描くドラマではありません。お茶の間の皆さんが愛着を持って見守って来たキャラクター達が、その時を経て何を感じ、どう変わるかは、ちゃんと描くことになると思います」と書いている。

 その言葉どおり、『あまちゃん』における「震災」は数あるエピソードのひとつにすぎない。しかし、重要な分岐点のひとつであることも事実だ。果たして、『あまちゃん』は震災をどう描いたのか。

 132話(8/31放送)では、3月12日に東京で開催される天野アキ(能年玲奈)念願のライブに向けたリハーサル風景が描かれていた。北三陸の人たちも楽しそうだ。「最近地震が多い」ということ以外、何も変わらない。アキのライブを見るため、ついに上京することになったユイ(橋本愛)はみんなに温かく見送られ、大吉(杉本哲太)と共に北三陸鉄道に乗り込んだ。物語上の母娘の確執や、春子(小泉今日子)と鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)と太巻(古田新太)のいざこざなど、整理すべき問題も片付けられていた。それは、そういった問題解決の理由や動機に「震災」を使いたくないという、作り手の意思の表れだろう。

 そして、あの日がやってくる。

 133話(9/2放送)は緊急地震速報で携帯電話が激しく振動するシーンから始まった。“みんな助かってくれ”。そう強く願いながら画面に見入ったのは、もちろんこれまで愛してきた登場人物たちへの思い入れもあるが、まだ脳裏にこびりついている僕たち自身の震災の記憶を呼び起こされたからだろう。

 いつものように軽快なOP曲が流れだす。この明るいテーマ曲を流さない、という選択肢もあったかもしれない。むしろ、そのほうが演出としては定石だ。この状況に明るい曲はそぐわない、と感じる視聴者も多いだろう。だが、この日もいつもと同じだった。音楽を担当した大友良英は言う。

「最初から震災が来るというのを想定して作った曲。演出の井上剛さんはじめ、みんなが『これずっとかけ続けるから』って、最初からかなり強い意志でおっしゃっていて。何が起ころうと変わらない日常があるわけですし、聴こえ方が違うと思うんですよね。震災の時に限らずなんですけど、アキちゃんが笑ってる時、泣いている時、それぞれ聴こえてくるところが違う。今日は今日で違う聴こえ方がしてくると思うんですよね」(『スタジオパークからこんにちは』)

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