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日本の歴史を大きく変えたアメージングトーク集!『日本人の誇りを呼び覚ます魂のスピーチ』

tamashiinosupichi.jpg『日本人の誇りを呼び覚ます魂のスピーチ』(廣済堂出版)

 日本人はスピーチが苦手だというイメージが強いが、本当にそうなのか? 『日本人の誇りを呼び覚ます魂のスピーチ』(廣済堂出版)はそんな思い込みに再考を促す、日本人による歴史的スピーチを集めたものだ。スピーチを「演説」と訳した福沢諭吉による日本初のスピーチに始まり、政治家、実業家、文化人、スポーツ選手ら24人の名言&名スピーチを収録。日本人が発した言葉によって、日本の歴史が動いた瞬間を収めている。

 現在に至る日本文化を語る上で、もっとも重要なスピーチとなったのはパナソニック(旧松下電器)の創業者・松下幸之助が1932年5月の第一回創業記念式で社員に向かって語った「水道哲学」だろう。

『水道の水は加工された価値のあるものであるが、道端の水道水を通行人が飲んでもとがめられることはない。それは、その量が豊富で安価だからである。松下電器の真の使命も、物資を水道のごとく安価無尽蔵に供給して、この世に楽土を建設することである』

 松下のこの水道哲学は、企業とは単に営利追求だけを目的にした集団ではないことを明朗に謳い上げ、他の多くの産業にも多大な影響を与えた。家電製品、自動車、インスタント食品、ゲーム機、衣料など、高品質かつ低価格であることを売りにした数々の日本ブランドが誕生していくことになる。“経営の神様”の口から産み落とされた、まさに言霊だった。

 本著に選ばれた24人の中で最も鋭い舌鋒を誇ったのは、軍部を敵に回して戦い抜いた孤高の政治家・斎藤隆夫だ。「反戦演説」と呼ばれる1940年2月に開かれた帝国議会での斎藤の質問演説には目を見張るものがある。原稿を手にすることのなかった斎藤は、この演説の中で「正義の戦争など存在しない」と看破してみせた。

『かの欧米のキリスト教国、これをご覧なさい。彼らは内にあっては十字架の前に頭を下げておりますけれども、ひとたび国際問題に直面致しますと、キリストの信条も慈善博愛も一切蹴散らかしてしまって、弱肉強食の修羅道に向かって猛進をする。これが即ち人類の歴史であり、奪うことの出来ない現実であるのであります。この現実を無視して、ただいたずらに聖戦の美名に隠れて、国民的犠牲を閑却し、曰く国際正義、曰く道義外交、曰く共存共栄、曰く世界の平和、かくのごとき雲を摑むような文字を並べ立てて、そうして千載一遇の機会を逸し、国家百年の大計を誤るようなことがありましたならば、現在の政治家は死してもその罪を滅ぼすことは出来ない』

 日中戦争が泥沼化していく当時の社会情勢の中で、この反戦演説は命懸けの行為だった。軍部の怒りを買い、斎藤は所属していた民政党を離脱。さらに同年3月には議員除名動機が提出され、斎藤は国会から締め出される。多くの議員はこの決議を棄権、もしくは欠席したが、除名に反対した議員はわずか7名だった。日本の議員制民主主義は軍部に屈服し、太平洋戦争へと突き進むことになる。

 戦後のスピーチで外せないのは、戦後50年の節目となる1995年8月15日に総理・村山富市が発した「村山談話」。日本とアジア諸国との関係を理解する上で、再読しておきたい発言である。

『我が国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大な損害と苦痛を与えました。私は、未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い追悼の念を捧げます』

 “杖(よ)るは信に如(し)くは莫(な)し”という『春秋左氏伝』からの引用で締めた村山談話は、日本政府が公式的な立場から初めてアジア各国に謝罪を表明したもので、その後の歴代内閣はこの見解を踏襲する形をとっている。バブル経済が弾け、政治も混沌を極めた1993年に瓢箪から駒で連立政権の総理に担ぎ上げられた社会党委員長の村山だが、「自民党政権では成し得なかった問題解決に、連立政権の良さを生かして突っ走ろうと考えた」という翁が挑んだ大勝負がこのスピーチだった。政治家としての功績は今なお賛否が分かれるが、『──魂のスピーチ』の著者であるジャーナリスト・弓狩匡純氏は本著の中で、「戦後初めて、我が国が過去の戦争に対する見解を公に言及した事実は、諸外国の理解を得るために一定の役割を果たした」と評価している。

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