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King & Princeは「一即多・多即一」を歌い続ける──僧侶が仏教的視座で考える岩橋玄樹の脱退とアイドルの永遠性

文=稲田ズイキ(いなだ・ずいき)

 2021年3月29日、King & Princeの脱退とジャニーズ事務所の退所を発表した岩橋玄樹。ジャニーズではSMAP解散以降、グループの解散や脱退が後を絶たない。そこに残されたファンは、悲しみややり場のない虚脱感からどうやって抜け出せばいいのか。僧侶であり、文筆家の稲田ズイキ氏にアイドルの永遠性について説法をお願いした。

King & Princeは「一即多・多即一」を歌い続ける──僧侶が仏教的視座で考える岩橋玄樹の脱退とアイドルの永遠性の画像1
デビュー曲「シンデレラガール」の歌詞にも仏教的なメッセージが読み取れる

 メールボックスに、知らない人から一通のメールが届いていた。

件名:悲しみにくれるアイドルオタクを仏教で解きほぐす記事執筆のご相談

 見過ごすことができない件名だった。僧侶でありながらアイドルオタクの端くれである、自分としてはなおさらのこと。どうやら送り主は、サイゾーというメディアの編集者らしい。本文には、こう書かれてあった。

「私事になるのですが、King & Princeのファンでして、先日発表された岩橋玄樹くんの脱退にひどくショックを受けている最中です。V6のファンでもあるので、解散の傷が癒えぬうちに…という感じで、仏にも縋りたくなっている状況です(そして、同じような思いをしている人が本当に多いと思うのです)」

 手負いのジャニオタだった。近年、ジャニーズ関連の報道が絶えない。身も心もボロボロで、寺に駆け込むように僧侶の僕にメールした、というのがことの顛末だった。

 苦しい。苦しかった。僧侶としては、っていうか僧侶じゃなかったとしても。こんなに身に迫った依頼は断りようがない。とにかく一度お話聞かせてくださいと返事した。オンラインの通話を通して、Tさんはこのように語っていた。

「私の人生のすべては、アイドルを推すことだったんです。でも、もう、年なんですかね。疲れてしまったんです。もうアイドルを推すのもやめてしまおうかと思うくらい」

 深い、深い、絶望だった。あとは諦めの中に、悔しさもあったように感じた。

 Tさんの推し(担当)であるキンプリは6人グループとしてデビューしたが、岩橋さんは病気の治療のため2年前から芸能活動を休養し、ずっと5人で活動を続けていた。しかし、岩橋さんの病状が回復に向かうことはなかった。“6人のキンプリ”の復活を待ち望むファンの声も虚しく、岩橋さんはつい先月King & Prince並びにジャニーズ事務所を退所したのだそうだ。

 同じアイドルオタクとして、推しが“いなくなる”こと、そして、その“最期”を迎えるための場がなかったこと、そのやり場の無くなった想いが彷徨う苦しみは、自分のことのようにわかる。僕も小4でモーニング娘。の加護亜依さんにガチ恋したものの、度重なるスキャンダルに揉まれ、お別れも言えないまま目の前から居なくなってしまった経験があるのだ。あの痛みを思い出した。

 Tさんの痛みに共鳴する一アイドルオタク、そして一人の僧侶として、この原稿をお返事代わりに執筆させていただこうと思う。

アイドルは諸行無常である

King & Princeは「一即多・多即一」を歌い続ける──僧侶が仏教的視座で考える岩橋玄樹の脱退とアイドルの永遠性の画像2
(写真はイメージ)

 僕自身、アイドルを推すという行為を通して、いつも感じている言葉がある。それが「諸行無常」という仏教の言葉だ。聞いたことがある人もたくさんいるかもしれない。

 その意味は単純明快で、すべてのものは常ではない、つまり「すべては変わりゆく」ということ。数多くあるブッダの教えの中でも、4つの奥義(四法印)の一つであり、この言葉に仏教のすべてがあるといっても言い過ぎではないくらい。

 そもそも仏教とは、2500年前に「なんでこんなにしんどいの?」と悩んだ一人の人間(釈迦)が、長い苦しみの果てに言語化した一つの哲学みたいなものだ。

 彼の結論は、すべての苦しみは、変化していく世界に対し、私たちは変化するという事実を忘れ、それが変わらず「あり続ける」と思い込み、執着することによって生まれるというものである。おしゃれに言うなら、苦しみの正体とは、速すぎる世界に僕らが着いていけないことだ。なんだ、いつもオタクが噛み締めていることじゃないか。

 アイドルを推すことは喜びに満ちあふれている。だけど、それだけではない。ジャニーズであろうが、ハロプロであろうが、アイドルは突然いなくなってしまう。卒業、脱退、スキャンダル、あらゆる無常が待ち構えている。アイドルは決して永遠じゃない。

 それなのに、私たちは忘れてしまう。毎年シングル曲を3枚は出してくれるものだと、毎週テレビに出てくれるものだと、これからもずっと一緒に人生を歩んでいくものなのだと。いつしか永遠なのだと思い込んでしまう。

 だから、忘れちゃいけないのは、「推す」には、はじめから別れが約束されているということだ。私たちオタクが立っているのは初めから崖っぷちで、向こう岸にいるあの人へ、長い時間をかけて「さようなら」と「ありがとう」を叫び続けていることを忘れてはいけない。

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