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“昭和歌謡最後の女王”の覚悟ーー中森明菜の新曲「Rojo -Tierra-」を聴く

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【リアルサウンドより】

 昨年末の紅白歌合戦の最大の話題といえば、その後の騒動も含めてなんといってもサザン・オールスターズということになるが、中森明菜の出演も大きなトピックだった。ニュー・シングル「Rojo -Tierra-」のリリース(1/21発売)の発表に続き、4年5ヶ月ぶりに公の場で歌唱、新曲を披露。そして年が明けて9日には同じNHKで、LAでレコーディングを続ける中森に密着取材したドキュメンタリー『SONGSスペシャル 中森明菜 歌姫復活』も放映され、恒例のカヴァー・シリーズ『歌姫』の新作『歌姫4 -My Eggs Benedict-』のリリース(1/28発売)も発表されて、今回の復活劇が周到に計算され準備されたものであることを示していた。

 とはいえ彼女は良くも悪くも2015年の現在に於いても、J-POPではない「歌謡曲」の孤塁を守り続ける女王であり、いまだ芸能マスコミのスキャンダラスな好奇心の格好の対象でもある。中途半端な復帰はマイナスな印象にしかならない。仕掛けは華々しくてもその復活が歌手としての本当の復調を告げるものなのか。

 紅白での中森は極度に緊張していたように見えた。本来、歌はもちろんメイク、衣装、振り付け、さらには舞台装置も含めなどトータルなヴィジュアルのコーディネイトによって、楽曲に合わせた世界観を完璧に作り上げていくのが中森のやり方のはずだが、薄暗いレコーディング・スタジオで、振り付けもなく、衣装も平服で、なにより緊張の伝わるこわばったような声で歌う彼女は、まだ復調途上であることを伺わせた。とはいえ、80年代の全盛期の中森を捉えた映像集『中森明菜 in 夜のヒットスタジオ』や『ザ・ベストテン 中森明菜プレミアムBOX』を見ても、もともと中森はかなりのあがり症で、楽曲の初披露の時はTV越しでも緊張が伝わるようなピリピリした雰囲気を漂わせ、歌い終わったあとも手の震えが止まらないような、そんなある種の危うい初々しさが持ち味でもあった歌手である。ハラハラしながらも、あの明菜が帰ってきたという実感があったのは筆者だけではないだろう。そして歌い慣れた馴染みの大ヒットではなく、あえて初披露の新曲を歌ってみせる攻めの姿勢に、復帰に賭ける意思の強さを感じることができた。

 その新曲「Rojo -Tierra-」だが、アクセスの浅倉大介の作で、今様のEDM、それに「ミ・アモーレ」に始まる明菜得意のラテン〜アフロ風味を加えたようなエキゾティックでトライバルなダンス・トラック。イケイケなエレクトロ・ディスコだった前作シングル「Crazy Love」(2010年)同様、00年代以降の中森の基本路線と言えるだろう。以前と比べるとかなりキーが低くなり、突き抜けるような華やかさがなく、やや地味な印象も受けるが、低域から中域にかけての凄みのある粘りは女王の貫禄。シンセの重低音の押し出しもかなりのものだ。楽曲はちょっと90年代のTK全盛期を思わせる浅倉らしいもので、そのあからさまなEDM仕様は今となってはいささか古くさい印象もあるが、ねっとりした(あるいは、辛気くさい)バラードではなく、こういうアグレッシヴでアップテンポの楽曲を復帰第一弾に選んだのは正解だった。

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