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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.313

普通じゃないからこそ、世界はこんなにも美しい! 天才学者の数奇な生涯『イミテーション・ゲーム』

imitationgame01.jpg“コンピューターの父”アラン・チューリングの伝記映画『イミテーション・ゲーム』。戦時中の暗号解読がコンピューター開発に繋がった。

 数式の力を使って、死んだ人間を甦らせたい。ホラー映画の話ではない。アラン・チューリング(1912~1954)は実在した英国人数学者だ。23歳にして数式を解く人間の頭脳の論理を模した仮想上の機械「チューリング・マシン」を考案し、このアイデアは現代に至るコンピューターの礎となっている。ベネディクト・カンバーバッチ主演の『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』はアラン・チューリングの数奇な生涯を追い、彼が人工知能の研究に尋常ならざる情熱を注いだ秘密に迫っている。

 『イミテーション・ゲーム』では3つの時間が並行して流れる。ひとつはチューリングの少年時代、もうひとつはマンチェスター大学の教授として過ごした晩年。そしていちばんのハイライトシーンとして描かれるのが、チューリングが英国政府の要請を受けて、ドイツ軍の暗号エニグマの解読に挑む第二次世界大戦中のエピソードである。ドイツ軍が誇るエニグマは、解読は絶対不可能とされていた難解な暗号だった。ケンブリッジ大学の特別研究員だったアラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はチェスの英国チャンピオンのヒュー・アレグサンダー(マシュー・グード)らと共に、エニグマ解読のための極秘チームに参加することになる。ところが共同作業を嫌うチューリングは、ひとりで暗号解読マシンの製作にのめり込んでいく。無数のローターにコードが血管のように張り巡らされた巨大な暗号解読マシンこそ、世界初となるコンピューターのプロトタイプだった。

 チューリングは少年の頃から変わり者で、それゆえに学校ではイジメの標的となっていた。そんなチューリングに優しかったのは1歳年上のクリストファーだった。校内トップの成績を誇るクリストファーと一緒に難しい数式を解き明かす瞬間は、少年時代のチューリングにとって無上の喜びに感じられた。明るい未来が約束されていたクリストファーだったが、無情にも18歳にして病気で亡くなってしまう。唯一の親友を失い、孤独な日々を過ごすチューリングは、みずからが考え出した人工知能の概念を応用したエニグマ解読マシンの開発に生き甲斐を見出す。劇中のチューリングは、このエニグマ解読マシンに「クリストファー」という名前を付ける。チューリングにとっては敵国ドイツ軍の暗号を解くこと以上に、夭折した親友を人工知能という形でこの世に甦らせることのほうが重大だった。だが、生まれたての頭脳である「クリストファー」には、まだエニグマを解読するプログラムが備わっていない。予算と時間ばかり費やすチューリングの研究は失敗かと思われた矢先に、ひとりの幸運の女神が現われる。

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