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構成作家・相沢直の“スナオなドラマ考”

『下町ロケット』は原作から何を足し、何を引いたか……スピード感を得た“21世紀の『水戸黄門』”像

shitamachi1120.jpg日曜劇場『下町ロケット』|TBSテレビ

 2015年10月クールの連続ドラマの中で最も注目を浴びている作品といえば、やはり『下町ロケット』(TBS系)になるだろう。原作はご存じ、池井戸潤。『半沢直樹』(同)の大ヒットは記憶に新しいが、ここ最近の地上波だけでも『七つの会議』(NHK総合)、『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)、『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)、『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)、『民王』(テレビ朝日系)と、ドラマ化が続く。現在の日本のテレビドラマ界は、池井戸なしでは成立し得ないのではないか、と思えるほどだ。

『半沢直樹』の大ヒットを経験していることもあり、TBSとしても気合十分。かつ『下町ロケット』は、過去にWOWOWでドラマ化されているという経緯もあり、負けるわけにはいかないところだ。そして事実、期待通りのヒット作品となる。初回の視聴率こそ16.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だったが、右肩上がりで数字を伸ばし、ロケット編の最終回となる第5話では20.2%という高視聴率を記録。これはプライムタイムのドラマとしては2015年度最高の記録であり、第二の『半沢直樹』になるかどうか、期待が集まる。

『下町ロケット』に限らず、小説原作をテレビドラマにする際はある程度の脚色が必要となる。それではこの作品では、原作にどのような脚色が加えられているのか。そして、テレビドラマとしての『下町ロケット』は、その脚色においてどのような成功を収めているのか。第1話から第5話までの「ロケット篇」を振り返り、検証してみたい。

<原作を削るのではなく、原作に足すという手法>

 ドラマ『下町ロケット』では、原作で重要だった要素はほぼそのまま生かされている。基本的には原作の主要な登場人物はすべてドラマでも活躍するし、あの場面が削られてしまった、というケースはほとんどない。強いて言うならば、前半で資金繰りに苦しむ場面は小説からドラマになる際にはかなり短めに処理されているが、小説のように登場人物の内面を描くことができないという映像の特性を考えれば、もっともな演出だといえるだろう。

 逆に、原作にはなかったが、ドラマにする上で足されている要素はいくつかある。登場人物でいうと、主人公の佃航平(阿部寛)の娘、利菜(土屋太鳳)は原作にも登場するのだが、登場回数は増え、かなり大きな役回りを演じている。これは『下町ロケット』がテレビ作品であり、幅広い層に向ける必要があるからだろう。親子のやりとりをしっかり見せることによって、ただの企業ものではない、家族ドラマとしての側面を描くことに成功している。

 また、原作からの最も大きな改変といえるのが、第2話の裁判シーン。航平が証人喚問で呼ばれて法廷に立ち、技術者としてのプライドを述べる重要な場面だが、実はこの場面は、原作には存在していない。この派手な場面を作ることによって、第2話の視聴率は17.8%と、第1話を越えることに成功。連続ドラマにおいて重要な第2話にこの派手なエピソードを付け加えることによって、視聴者を増やす動機付けにつながったといえるだろう。

<日本のテレビドラマではあまりない情報量の多さ>

『下町ロケット』をテレビドラマにするにあたってTBSが取った戦略は、「ロケット篇」だけで全話を構成するのではなく、続編の『下町ロケット2』を含めて全話に詰め込むというものだった。この手法により、またすでに述べたようにテレビドラマのオリジナルの要素まで加えていることもあり、この作品は一般的な日本のテレビドラマと比べてかなり情報量が多い。テンポも早く、全体を通してのカットのつなぎやセリフの間も非常に早い。これにより、視聴者が一切飽きることなく、一話を最後まで見てしまうという習慣付けに成功している。

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