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手塚治虫が嫉妬――妖怪漫画家・水木しげるさんの「壮絶人生」と「ポジティブ精神」に最敬礼

 戦火を生き延び、美術学校で学んだ後に紙芝居、貸本を経験して『墓場の鬼太郎』シリーズを刊行。人気作家への道筋を作り、現代漫画の源流の一つとなる「月刊漫画ガロ」(青林堂)の看板作家の一人として活躍した。一時低迷したものの、妖怪漫画の映像化や『ゲゲゲの鬼太郎』が人気を集めて地位を確立。90年代以降は大御所として多くの個性的な作品を送り出し、1991年に紫綬褒章を、2003年に旭日小綬章を受章して偉大な文化人の仲間入りを果たした。

 水木さんの才能を表すエピソードとして、『墓場の鬼太郎』を見た“漫画の神様”手塚治虫氏が嫉妬に狂ったというものがある。水木さんに面と向かって「あなたの漫画くらいのことは僕はいつでも描けるんですよ」と強がったという。神様に嫉妬されるという点で、そのすごさが分かるというものだ。手塚治虫氏などを筆頭に、人気漫画家は早世で知られている。水木さんは「2日寝てない、3日寝てない」と自慢する人気作家が60を過ぎて亡くなってしまうことに「どんなに忙しくても8時間寝る」と語ったらしい。

 自分のペースで、自分の好きな仕事を思い切りやっての長寿。誰もがうらやむような人生だが、その裏には戦争や極貧生活などの過酷な体験があり、普通なら潰れてしまってもおかしくない日々もあったはずだ。それでも、インタビューでも明るく楽しい受け答え、90歳でもジャンクフードを食べ続けたりと快活でいられたのは、水木さんが常に背伸びすることなく、ひたすらポジティブに生きてきた結果ではないか。

 2010年、妻である武良布枝さんが著した自伝『ゲゲゲの女房』(実業之日本社)がドラマ化されてヒットしたが、ストレスが溜まりやすいとされる現代人の多くに、水木さんの柔らかな生き方がかなり響いたということかもしれない。亡くなっても「天国で妖怪と楽しくやってるのかな」と想像させてくれるあたりもさすが。様々な意味で、多くのものを遺してくれた偉人だった。心からご冥福をお祈り申し上げたい。

 最後に、水木さんが『わらしべ偉人伝』(扶桑社 03年)で、インタビュアーと交わした伝説のやり取りを追記する。

インタビュアー「水木先生は今でも現役でいらっしゃる」
水木さん「もう10年以上ハレンチなことはしとりませんよ」

最終更新:2015/11/30 19:41
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