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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.362

40歳を過ぎても現役にこだわる辰吉の孤高の闘い!『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』

joe_no_ashita012009年にタイで試合を行なって以降は実戦から遠ざかっている辰吉丈一郎。それでも毎日の走り込みとトレーニングは欠かさない。

 誰もが不可能だと思っていたことを可能に変えてしまうヤツ。ヒーローという言葉をそう定義づけるなら、辰吉丈一郎ほどヒーローに相応しい男はいない。“浪速のジョー”ことプロボクサー・辰吉丈一郎には常に驚かせられ続けた。1991年、プロデビューからわずか8戦目でWBC世界バンダム級王座に輝いた。これは当時の国内最短記録だった。『あしたのジョー』の主人公・矢吹丈さながらのやんちゃキャラで、たちまち人気者になった。ボクサーとして致命傷とされた網膜剥離を患った際には、JBCから引退勧告されながらも特例を認めさせ、引退を賭けて薬師寺保栄との王座統一戦に臨んだ。94年に行なわれたこの試合は視聴率53.4%(関東地区)を記録。現WBC王者の山中慎介はこの試合をテレビで観戦し、ボクシングを始めている。その後、JBCは網膜剥離を完治した上での復帰を認めることになった。さらに世間を驚かせたのが、97年のシリモンコンとの一戦だ。タイの新鋭王者を相手に、27歳になった辰吉は7回TKO勝利を挙げて3度目の王座に返り咲いた。だが、まだ辰吉丈一郎伝説は終わりを迎えてはいない。40歳を過ぎた今も、辰吉は現役であることにこだわり、ハードなトレーニングを続けているのだ。

 天才と狂気との紙一重の存在である辰吉を、20年間にわたってフィルム撮影し続けているのは阪本順治監督だ。ボクシング映画『どついたるねん』(89)で衝撃的デビューを果たした阪本監督は、辰吉を主人公にした『BOXER JOE』(95)というドキュメンタリードラマも残している。『BOXER JOE』の完成後も阪本監督と辰吉との交流は続いていた。辰吉がリングを降りる瞬間まで見つめていきたいと、笠松則通カメラマンら最低限のスタッフで海外遠征も含めて追い続けた。それがドキュメンタリー映画『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』である。

 薬師寺との一戦に敗れた翌95年から撮影は始まった。1Rで左の拳を骨折しながらも最後まで薬師寺と戦い続けた熱戦は日本中を感動の渦に巻き込んだが、判定負けを喫したために国内でのリング復帰は叶わず、海外でのカムバックを模索していた時期だった。阪本監督は辰吉がキラキラと輝いていた時期よりも、王座を追われてしんどいときにカメラをより回している。男手ひとつで辰吉を育てた父・粂二さんが亡くなったとき、長年世話になった大阪帝拳を出て個人でトレーニングを積むようになったとき。リング上でスポットライトを浴びる辰吉とは異なる素顔を、阪本監督はフィルムに焼き付けていく。

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